第13話 ベル商会の理念
翌日。
リアネはソフィアを連れ、
ベル商会本店を案内していた。
「去年もご案内しましたけど」
「改めてご紹介しますね」
ソフィアは穏やかに微笑む。
「よろしくお願いいたします」
二人は店内を歩く。
香辛料。
茶葉。
織物。
陶器。
世界各国から集められた品々が、美しく並べられている。
店員たちは笑顔で客を迎え、
店内は活気に満ちていた。
ソフィアは感心したように周囲を見渡す。
「去年も感じましたが」
「本当に素敵なお店ですね」
リアネは少し照れくさそうに笑った。
「ありがとうございます」
「ベル商会には、代々受け継がれてきた理念があるんです」
リアネは壁へ掲げられた額を指差す。
そこには力強い文字で、
『商いで人を幸せにする』
と記されていた。
「これがベル商会の理念です」
「私たちは商品を売ることが目的じゃありません」
「商いを通して、お客様に幸せになっていただくことが目的なんです」
ソフィアはその言葉を静かに繰り返した。
「商いで……人を幸せにする」
しばらく考え込んだ後、
優しく微笑む。
「とても素晴らしい理念ですね」
「教会は祈りや慈善活動を通して人々を支えています」
「ベル商会は商いを通して人々を支えている」
「形は違っても」
「目指しているものは同じなのですね」
リアネは嬉しそうに頷いた。
「はい!」
「お父さんはいつも言ってるんです」
「儲けることだけを考えた商売は長続きしない」
「相手が幸せになって初めて、本当の商いなんだって」
ソフィアは目を細める。
「素敵なお父様ですね」
「はい!」
「私の自慢のお父さんです!」
その満面の笑顔を見て、
ソフィアも自然と笑みを浮かべた。
二人はその後も店内を巡り、
ベル商会の仕事や商品について語り合いながら、穏やかな時間を過ごした。
リアネは胸を撫で下ろす。
(よし)
(今のところ正体はバレてない)
(まあ、自分から正体をバラさなければ問題ないよね)
(数週間の辛抱、辛抱)
そう気楽に考えていた。
この時のリアネはまだ知らない。
自分が思っている以上に、
うっかり口を滑らせる性格だということを。




