第12話 改めてまして
翌朝。
ベル商会。
リアネはソフィアと改めて向かい合っていた。
ソフィアは優雅に一礼する。
「改めまして」
「ナルシス王国ルミエール大聖堂所属」
「大聖女ソフィア・アルテミスです」
「本日より数週間、お世話になります」
リアネも慌てて頭を下げた。
「ベル商会のリアネ・ベルです」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
ソフィアは優しく微笑む。
「昨日も感じましたが」
「リアネ様は、本当に初代大聖女エリアネ様を敬愛されているのですね」
「はい!」
反射的に返事をする。
しかし、その直後。
(いや)
(もう冷めちゃったよー)
(本人ここにいるもん)
(しかも)
(ただの飲んだくれだよー)
心の中だけで盛大に突っ込む。
ソフィアはどこか憧れるような眼差しで続けた。
「私も」
「エリアネ様を心から尊敬しております」
「少しでもエリアネ様に近づけるよう、これからも精進して参ります」
(眩しい……)
(眩しすぎるよー)
(ソフィア様)
(あなた、もう十分立派だから!)
(むしろ私なんか、とっくに超えてるよ!)
(だから私は)
(ただの飲んだくれなんだって!)
リアネは必死に笑顔を保った。
「そ、それじゃ!」
「今日は王都をご案内しますね!」
「よろしくお願いいたします」
二人はベル商会を後にした。
王都リリアは、
エリアネ大祭を目前に控え、
街全体が祭り一色に染まっていた。
大通りには露店が立ち並び。
色鮮やかな旗が風に揺れる。
巡礼者。
商人。
観光客。
それに、
長い耳を持つエルフ。
がっしりとした体格のドワーフ。
人の姿へ変身した竜族の姿も、あちこちで見受けられる。
普段は不可侵・不干渉を貫く四種族も、
エリアネ大祭の期間だけは一堂に会する。
世界中から集まった人々の笑顔で、
街は活気と笑顔に満ち溢れていた。
ソフィアは街並みを見渡し、
優しく微笑む。
「去年もお邪魔しましたが」
「いつ見ても素敵な街ですね」
リアネは嬉しそうに頷く。
「ありがとうございます!」
「エリアネ大祭が近いので、みんな張り切っているんです」
「なるほど」
「四種族が笑顔で交流する光景は、何度見ても心が温かくなりますね」
リアネはその言葉に思わず足を止める。
(それ……)
(私がやりたかったこと、そのままなんだよね)
三千年前。
ただ友達を作りたくて旅をした。
その結果が、
今もこうして受け継がれている。
少しだけ胸が温かくなった。
しかし。
(……って違う違う!)
(感動してる場合じゃない!)
(お願いだから)
(私の正体だけは気付かないでね)
(ほんとにお願いだから!)
リアネは笑顔の裏で、
終始ひやひやしっぱなしだった。




