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ヘッドホン少女との邂逅。

「――俺、図書委員だから先に帰ってくれ」

 二人にそれだけ言って、教室を後にする。

「今時、放課後に図書室使う奴なんて珍しいだろ」

「そこは仕事ですから」

「そうだな。仕事がなければ本が読みほうだ……」

 ピタッ、と止まり振り返る。

「……ストーカー?」

「違います! 私も図書委員なんです!」

「休んでる間に勝手に決まってたんだってー」

「ならお前はなんだよ」

「どうせなら二人を待とうと思って。寂しいし」

……別に咎める理由も無いので、ほおっておこう。

 図書室に入って、カウンターの向こうに座る。

 利用者も少ないので、大抵はここで本を読んでいるだけで終わる。

 新波さんは、じっとしているのが落ち着かないようだ。

 本を整頓しに行って、その横に心美がついていった。

「あ……」

 ページを捲っていると誰かの影が被ったので、立ち上がる。

「君は」

 特徴的なヘッドホン。すぐに誰だかわかった。

 邂逅に言葉に詰まる。あちらも同じようで困っている。

 一応、先輩として先に口を開いた。

「本、借りに来たのか?」

「え、あ、はい。そのちょっと探してて……」

「タイトルわかる? 調べるぞ?」

「え、あ、あの! 借りたい本が決まってる訳じゃなくて……」

恥ずかしそうに視線を外す。

「読みたいジャンルがあるのか?」

「え、えっと……恋愛とか、あと音楽が絡むと……」

「恋愛と音楽……ちょっと待ってろ」

 カウンターから出て、見当を付けて歩き出す。

 その後ろをちょこちょことついてくる。

「……と、図書委員だったんだ」

 探してる間の沈黙に耐えきれなかったのか、無難な話題が出てくる。

「本読むのは好きだからな」

「へ、へー……どんなの読むの?」

「面白いもの」

 と、しまった。これだと困惑させるだけだ。

 彼女なりに、読みたい本の手掛かりにしているのかもしれない。

「物語に没入できる奴。現実を忘れられるからな」

「そ、そうなんだ」

「悪い。これじゃあますます意味わからないよな」

 わかりやすく推理小説とか話した方がよかった。

 本の背表紙をなぞりながら、気になっていたことを尋ねる。

「君こそ、放送委員だったんだな」

「え……な、何で知って⁉」

 見なくても、目を大きくしてるのが伝わってきた。

「だって、昼間の放送、君だろ?」

「そうだけど……」

「綺麗な声だった。よく耳に入ってくる」

「……そんなことない。褒められるようなことじゃ……」

 照れくさそう、と言うよりも自嘲気味に聞こえる。

「強みだぞ。声が通ると話を聞いて貰えるからな」

 例えば、喧騒の中でも人に指示を通しやすくなる、とか。

 自分の意思や意図が、音としてしっかり耳に届くのは立派な武器だ。

「……そう、かな?」

「なんかコツとかあるか?」

「コツ……コツってほどじゃないけど、喉を開くといいよ」

「喉を開く?」

 聞きなれない言葉に首を捻ると、一呼吸いれた。

 最初に「あー」と声を出し、一つ間を置いて同じ音を出す。

「すごいな。同じ大きさなのに、響きが全然違うな」

 一回目は耳に届いて、二回目は振動が胸に届くような声。

「良く知ってるな」

「あたし、小さい頃は合唱団だったから」

「なるほど……俺なんて、話すこと全部が胡散臭いって言われるから羨ましいよ」

 詐欺っぽい。悪徳な勧誘やってそう。とか散々な言われようをする。

「そんなこと! ……あたしは、そんなことないと思う」

 一瞬だけ声が大きくなったが、すぐに尻すぼみになる。

「はは、ありがとう――ほい、これ」

 図書室から五冊程度、選び取る。

「君は……って、君は君はってのは失礼だな。名前を聞いてもいいか?」

「……二階堂 楚御詩」

「そっか、二階堂さん」

「さんはいい。あたし、後輩だから」

「そうか? なら二階堂。俺は――」

「三上成人先輩。先生から聞いた」

 そっか、わざわざ俺を探してたんだもんな。

「よろしく、二階堂」

「……うん。よろしく、せーじん先輩」

「あー、うん。まぁいいか」

 冗談めかしに破顔され何も言えない。

「三上く――あ、今朝の」

 新波さんがひょこり顔を出す。

 ビクッとして、俺の影に隠れるようにして警戒する。

「この子、二階堂楚御詩さん」

「あ、私は新波綾那です。二階堂さん、よろしくお願いします」

「え、あの……ども、新波先輩」

 だが、丁寧な対応にビックリしたのか、タジタジと言う感じだ。

「そして、ボクは前川心美!」

「あ、ラーメンの人」

「覚えられかたが酷い、ショックだよみそっち……」

「あ、いや、ごめん前川先輩……あたし、お世話になったのに……」

「なーんてね! ボクにも可愛い後輩ができちゃった!」

 テンションの起伏に、二階堂がリアクションに困っていた。

「それで新波さん。何か用か?」

「うん。先生が図書室をもう閉めるみたいだから」

 気が付けば人は俺たちだけ。本の貸し出しを終えて図書室を出た。

 二人はともかく、二階堂はどうするか尋ねようとした、その時だった。

「あの! 新波さん!」

 出てくるのを見計らったように、男子生徒が話しかけてくる。

「ごめん、今から二人でちょっといいかな?」

 どことなく落ち着かないその様子に、新波さんは困った顔でこちらを見る。

取り敢えず「先行ってる」そう伝えると、二人でどこかに消えていった。


評価してくれると、モチベが爆上がりします。

追記 次回更新は金、土、日になります。

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