学校の宇宙人について。
「うへぇー、だりぃ」
「朝のHR前に辛気臭い顔しないでくれ」
新波さんが学校に来てから一週間。
最初は好奇の視線もあったが、一日で収まった。
「せーじんはいいよね! 成績が良いから!」
「馬鹿言うな。俺は学校嫌いだ」
「そのスタンスなのが不思議なぐらい良いですよね」
「新波さん、かなり失礼な反応したからな」
試しに去年の順位を教えたら「うそぉ⁉」と言われた。
「成人君」
まだHRまで時間があると言うのに、西澤先生がやってきた。
「……何です? 俺ちゃんと仕事しましたよ?」
「それは感謝していますが……綾那さん、調子はどうですか?」
「はい、二人のおかげでなんとか」
どことなくぎこちない返事だったが、先生は微笑みで返した。
結局、新波さんが不登校になった理由はわからずじまいだった。
ただ、本人が言うつもりがないなら、俺たちも追及はしないが。
「さて、本題です……成人君たちは宇宙人の噂を知っていますか?」
「宇宙人?」
「あー、心美が言ってた奴。この学校、宇宙人出るらしい」
「……学園触手モノ」
真面目な顔で何言ってんだこの人。
「それが、どうしたんです?」
「……最近、面白半分で夜中に忍び込もうとする子が出てきました」
困ったように先生が、頬に手を当てる。
思ったより噂が大きくなったために、先生が動き出したようだ。
「でも、それだとボクたち関係ないよね?」
「実は、せーじんと言う人物を探していることが、ことの発端のようです」
「それって……」
新波さんが俺と心美を交互に見る。
「心当たりは?」
「……ありますね。心当たりしかありません」
予想的中、と言った様子で胸を撫で下ろしていた。
だが、こちらとしては理解が追い付いていない。
せーじん……せえじん……星人?
「あ」
「わかったのかワトソン君?」
「ああ、犯人はお前だ」
どうやら、せーじんと言う呼び名が一人歩きして形を変えたらしい。
三人で合点がいっていると、先生が廊下に向かって手招きをする。
「君は……」
顔を伏しているが、この特徴的なヘッドホンには見覚えがある。
妙な威圧感と共に俺の前にやって来た。
下を向き、無言のまま視線が往復している。
「……これ!」
すごい勢いで何かの包みを突き出される。思わずのけ反ってしまった。
「その……この前はありがと」
「お、おう……?」
「……じゃ!」
ヘッドホン少女は逃げるように教室を後にした。
自動的に、取り残された呆けた俺に注目が集まる。
「……少年老い易く学成り難し、ですね。先生の家訓です」
「にっしーはもう青春ってとし――あ、ごめんなさい嘘です」
「三上君って、割とモテたりするの?」
「そんなことはないが……」
取り敢えず包みを開くと、中には手作りらしきクッキーが入っていた。
一つ摘まむと、甘さ控えめのサクサク食感。
「ていうか君だけズルくない? ボクも頑張ったよ?」
「そうは言われてもな」
「うーん……」
文句を言われると思ったが、意味深に唸る。
「今のボクは、君への嫉妬と春を喜ぶ複雑な乙女心が揺れてる」
……勝手にブランコでも漕いでてくれ。
「ところで、なんでせーじんって呼ぶんですか?」
「え? だって、夜勤明けのサラリーマンみたいな顔だから」
あの後は特に何もなく、俺たちは昼休みを迎えた。
気が付けば三人で飯を食うのも当たり前になっている。
『続いての曲は――』
「あ、この曲知ってます」
「そうなのか? 俺は初めて聞いた」
「最近流行ってるみたいですよ?」
「せーじんは疎いからね。ボクもリクエストしてみようかな?」
校内アナウンスに耳を傾けていると、そう口にする。
「リクエストなんてできるんですか?」
「うん。放送委員に頼めばできるよ」
「そうなんですね……」
「言っとくけど、曲の精査はされるからね?」
「わ、私まだ何も言ってませんよ⁉」
「タイトルコールする放送委員の身にもなってね?」
「だからまだ何も言ってませんってばぁ⁉」
必死に取り繕うと、却って図星に見えるな。
変なスイッチが入ったようで、ぶつぶつとまた唱えている。
「で、さっきからだんまりだけどどしたん?」
二人が不思議そうな顔をする。
「いや、いいや」
新波さんはまだしも、心美にもピンと来てないらしい。
弁当に意識を戻そうとするが、やはり妙な視線が気になる。
辺りを見回すも正体は掴めない。得体の知れない君の悪さが残った。
評価してくれると、作者のモチベが爆上がりします。




