表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/32

はみ出し者。

「――やれやれ」

 輪になって踊る人たちを眺めながら、一安心する。

 その中にはなぎ君も混ざっている。

「ありがとう」

 二階堂から紙コップを手渡される。

「先輩が歌ってくれなかったら、あたし何もできなかった」

「二階堂の歌を聞いた後だと、恥ずかしくて堪らないがな」

「そんなことないって。歌詞、よく覚えてるね?」

「――昔、祭りの帰り道で口ずさんだんだ」

 恥ずかしがって、音頭に混ざれなかった俺を母さんは手を引いてくれた。

 母の見本を見ながら、必死に踊っていた。

「祭りの熱が冷めなくて。何度も一緒に歌ったんだ」

 それこそ、疲れて眠るまでずっと。

「……羨ましいな」

「羨ましい?」

「お母さんたちのこと、そんなに好きなんだ」

 そう言われて、気恥ずかしくなって頬を掻く。

 この年になって親が好きとは、あんまり口にできない。

 ただ、否定もできない。今思うことは一つだけ。

「……会いたいな」

「え?」

「――凪!」

 突如として、悲鳴に近い声が響いた。

 女性はなぎ君を見るや否や、強く抱きしめていた。

「おーい! せーじんたち!」

 後から心美たちがやってきた。

「見つかったみたいだな」

「はい。皆さんが楽しく踊る中、一人だけ慌てていたので」

 どうやら、意図せずして心美たちの助けになっていたらしい。

 二階堂の肩を軽く叩くと、照れくさそうに笑っていた。

「さっきの歌、みそっちだよね?」

「そ、そうだけど……」

「とっても素敵でした。思わず足を止めちゃいましたから」

「うんうん。プロ顔負けってヤツだね」

「や、やめてってば……そんなことないから」

「いや、すごいと思うぞ」

 元から良い声だと知っていたから、尚更だ。

「声だけで人を動かすのはそう簡単じゃない」

 事実として、俺の声では誰も動くことはなかった。

「二階堂の歌は人に届く。もっと誇っていい」

「そうですよ。謙遜はむしろ嫌味です」

「だよね! 今度カラオケ行こ! 歌ってほしいアニソンあるから」

「あ、あんまり褒めないで! 何か恥ずかしいから……!」

 二階堂は卑下する訳じゃないが、自分を過少評価している所がある。

 まるで、『自分の力じゃない』そんな風に。

 だから、正面から褒めるのが一番だ。

「あ」

 全員で褒めつくしていると、顔の色がカラフルに輝く。

 空を見上げると、大輪の花が音ともに花開く。

「楽しい時間はあっという間ですね」

 気が付けば、祭りも終わりが近づいている。

「……あたし、明日帰るよ」

「そうか」

「えー! 帰っちゃうの? もっとお泊り会したかった!」

「趣旨が変わってるだろ」

「いいんですか?」

「これ以上、みんなに迷惑をかけられないし」

 一瞬、口を結んだ後に「それに」と続ける。

「いつまでも、逃げてる訳にもいかない」

 堂々と花火を見つめる姿。

 その姿を一つ上の先輩として優しく見守った。

 祭りも終わりが近づいている。

 熱の余韻を冷ますように、寂しさが訪れるように。

 夏の夜の風が終わり知らせてくる。

「……なんかいいよね、こういうの」

「ああ。そうだな」

「そうですね、この感じは」

「今のボクたち、すっごく」

「青春っぽいね!」「ラブコメっぽい」「ギャルゲみたいだ」「エロゲっぽいですね」

「「「「え?」」」」

 異口こもごもの言葉が出てくる。

「えー……ここはみんなで合わせようよ」

「うごご……」

「せーじん先輩⁉ どうしたの⁉」

「発想が、発想が新波さんとほぼ同じ……うごごご」

「大丈夫だよせーじん! あやなっち程、重症じゃない!」

「あのお二人とも? とても失礼なこと言ってますからね?」

 いい雰囲気も台無し。

 それも仕方がないことである。

 何せはみ出し者の集まり。それがオルタナティ部なのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ