気づいたらドラゴンの上の街にいたんだが、どう考えてもおかしい
気づいたら、知らない街にいた。
しかもその街――
どう見ても、地面じゃない。
揺れてる。
呼吸してる。
明らかに“生きてる”。
……いや待て。
俺、どうやってここ来た?
そして、なぜか隣には
六人の美少女がいる。
どう考えても、おかしい。
――迷っていた。
ヒゴロは、見知らぬ街の中に立っていた。
「……いや、待て」
石畳。建物。通りを行き交う人々。
一見すれば、普通の街だ。
だが。
視界の端で、何かが動いた。
ゆっくりと。
巨大な、鱗のようなものが。
「……は?」
足元が、わずかに揺れる。
風ではない。
地面そのものが、呼吸するように動いている。
見上げる。
遠くに、湾曲した“地平線”。
ありえない角度で、街が続いている。
「……これ」
理解が、追いつかない。
「街じゃねぇ……」
喉が、乾く。
「……生きてる?」
そのとき。
「やっぱり、気づくよね」
声がした。
振り向くと、そこには六人の少女が立っていた。
◇ ◇ ◇
「ねえ、あなたも……人魚の歌、好きだった?」
一人の少女が、そう聞いた。
柔らかい声。
どこか確信を持ったような口調。
「……ああ」
ヒゴロは、小さく頷く。
その瞬間――
『ほら来た!!怪しいだろ!!』
『あーもううるせぇな……』
頭の中で、声がぶつかる。
『こんな都合よく話しかけてくるか普通!?罠だ罠!!』
『別にいいだろ、話すくらい』
『良くない!!こういうのが一番危ないんだよ!!』
『ほっとけよ。本人がいいなら』
まるで兄弟喧嘩みたいに、騒がしい。
「……?」
少女が首をかしげる。
「あ、いや……なんでもない」
ヒゴロは適当にごまかした。
「そっか。よかった」
少女は、少しだけ笑った。
「私、ベアトリス」
「シャーロット」
「クロエです」
「コーデリアよ」
「デイジー!」
「エマです」
次々に名前が告げられる。
流れるように。
自然に。
まるで、最初から知り合いだったみたいに。
「……ヒゴロ」
短く名乗る。
それだけで、十分だった。
◇ ◇ ◇
彼女たちは、幼なじみらしい。
六人で行動するのが当たり前で、
その輪の中に、なぜかヒゴロが混ざっている。
理由は――特にない。
ただ、そうなっている。
「ねえ、あっち行こうよ」
「面白そうなのあるかも」
流れに乗るように、歩く。
サーカスの中は、奇妙なものばかりだった。
見たことのない生き物。
不思議な道具。
歪んだ鏡。
どこか現実感が薄い。
「……なんか、夢みたいだな」
ぽつりと呟く。
『ほらな!!夢だろこれ!!』
『いや現実でも別にいいだろ』
『よくねぇよ!!』
うるさい。
でも――
嫌じゃない。
◇ ◇ ◇
「ねえ、あれ」
誰かが指差した。
その先に、いた。
巨大な影。
圧倒的な存在感。
「……ドラゴン?」
地面のように広がる背。
その上に――
街がある。
「エガトンっていうらしいよ」
「このサーカスの目玉なんだって」
軽い説明。
でも、スケールがおかしい。
「乗れるみたい」
「行ってみる?」
誰も反対しない。
ヒゴロも、特に何も言わない。
気づけば――
登っていた。
◇ ◇ ◇
ドラゴンの背の上の街。
それは、普通に機能していた。
店があり、人がいて、道がある。
ただ一つ違うのは――
全部が、生き物の上にあるということ。
「……すげぇな」
感想が、薄い。
現実感がないからかもしれない。
それでも――
歩く。
話す。
笑う。
六人の少女たちと。
時間が、流れていく。
何も起きない。
でも、それでいい気がする。
◇ ◇ ◇
「……あれ?」
気づいたときには、暗くなっていた。
「もう夜……?」
「え、そんなに時間経った?」
空が赤から紫に変わっている。
「……出口、どこ?」
誰かが言う。
全員、止まる。
見回す。
分からない。
「……迷った?」
沈黙。
その瞬間――
ゾワリ、と空気が変わった。
黒い“何か”が、降りてくる。
巨大な、手。
形だけが手で、中身は闇。
「……は?」
理解する前に、
それはヒゴロたちを掴んだ。
「ちょ――」
声が、途切れる。
視界が歪む。
引きずり出される。
街ごとではない。
自分たちだけを――
“外”へ。
◇ ◇ ◇
次の瞬間。
ヒゴロたちは、サーカスの外に立っていた。
まるで――
最初から、そこにいたみたいに。
第2話、読んでいただきありがとうございます。
今回は「ちょっとズレてる日常」から
一気に“何かがおかしい”方向に寄せてみました。
ドラゴンの街、六人の少女、
そして最後の“黒い手”。
ヒゴロはまだ何も理解していませんが、
少しずつ、確実にズレ始めています。
もし「なんか気になる」と思っていただけたら、
ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。
次話、もう少しだけ“違和感”が濃くなります。




