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フライパンに選ばれて異世界転移したのに、俺だけ何も持ってない件――それでもなぜか女の子たちに好かれる理由が分からない  作者: アラベ幻灯


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4/4

ランダムで連れてこられたパーティーで、俺だけ現実がバグり始めた

気づいたら、また知らない場所にいた。


今度は――

透明な城の中。


しかも、百階建てのクリスマスツリーみたいなやつ。


連れてきた本人はエルフで、

ひたすら謝ってるし、

理由は「ランダムです」らしい。


……いや、意味が分からない。


でもまあ、いいか。


六人の美少女もいるし。

――すみませんすみませんすみませんすみません!!


 開口一番、それだった。


 目の前にいるのは、細身のエルフ。


 長い耳、整った顔立ち――なのに。


 めちゃくちゃ慌てている。


「本当に申し訳ない!!無断で連れてきてしまって!!でも時間がなくて!!いや本当にすみません!!」


「……えっと」


 ヒゴロは、言葉を失った。


 横を見る。


 六人の少女たちも、さすがに少し引いている。


『ほらな!!やっぱり怪しい!!』


『まあまあ、話くらい聞こうぜ』


 頭の中で、いつもの声が騒ぐ。


 エルフは、深呼吸を一つしてから、改めて頭を下げた。


「私はアルファターと申します。王命により――」


 そこで、後ろを指さす。


 ヒゴロは、つられて振り向いた。





 ◇ ◇ ◇





 それは、異様な光景だった。


 透明な塔。


 いや、塔というより――


 クリスマスツリー。


 巨大な。


 百階建ての。


 完全に透き通った建造物が、夜空に向かって伸びている。


 中には光。


 人影。


 音楽。


「……なんだあれ」


「城です!!」


 アルファターが即答した。


「王エミリオスカー様の百歳の誕生日パーティーのために建造した、透明式祝祭用高層城です!!」


「……長いな」


「そしてそのリハーサルのために!!」


 ぐいっと距離を詰めてくる。


「皆様には“試験的な招待客”としてご協力いただきたいのです!!」


 沈黙。


「……つまり?」


「ランダムで連れてきました!!」


「……なるほど」


 なるほどじゃない。


『ランダムって言ったぞ今!!』


『まあ面白そうじゃん』


 いつものやつらがうるさい。


 でも――


 別に、断る理由もない。


「……いいんじゃないか?」


 ヒゴロがそう言うと、


 六人の少女たちは顔を見合わせて、


 小さく頷いた。


「じゃあ、行こうか」


 自然に、決まった。





 ◇ ◇ ◇





 城の中は、まるで別世界だった。


 光が反射する床。


 透き通った壁。


 宙に浮かぶ装飾。


 音楽が流れ、人が笑う。


「すご……」


 誰かが呟く。


 ヒゴロも、同じ気持ちだった。


 現実感が、薄い。


 でも――


 嫌じゃない。


「ヒゴロ、あれ見て」


「こっちも面白そうだよ」


 自然に、声がかかる。


 六人の少女たちが、周りにいる。


 それだけで――


 少しだけ、現実っぽくなる。


「……」


 ヒゴロは、少し考えて。


 ほんの少しだけ、距離を詰めた。


 隣に立つ。


 軽く話す。


 視線を合わせる。


 ――ほんの、少しだけ。


 “それっぽいこと”をする。


 結果。


「そうなんだ」


「へぇ、意外」


「ちょっと面白いかも」


 普通に、返ってきた。


 拒絶も、嘲笑もない。


 でも――


 特別な反応もない。


「……」


『ほら見ろ!!おかしい!!』


 いつの間にか、


 墓荒らしはメガネをかけて、本を読んでいた。


『統計的にありえん!!この状況は異常だ!!』


『いや〜いいじゃん別に』


 モグラは、なぜかラスタ風の格好で、


 どこから持ってきたのか分からない飲み物を飲んでいる。


『流れに身を任せようぜ〜』


『よくない!!絶対に何かある!!』


 うるさい。


 でも――


 ヒゴロは、やめなかった。


 少しだけ、距離を縮める。


 少しだけ、踏み込む。


 それでも――


 壊れない。


 関係は、そのまま続く。


「……なんでだ?」


 小さく、呟く。





 ◇ ◇ ◇





 そのときだった。





 ――視界が、途切れた。





 気づくと、ヒゴロは寝ていた。


 知らない部屋。


 硬い床。


「……は?」


 体を起こそうとして――


 止まる。


「……え?」


 下半身が、ない。


 正確には、


 “感覚がない”。


 動かない。


 見えない。


 あるはずのものが、ない。


「……なに、これ」


 息が荒くなる。


 心臓が、速くなる。


 理解が、追いつかない。


「……夢?」


 そう思った瞬間――





 戻った。





 音楽。


 光。


 声。


 透明な城。


 六人の少女たち。


「……あ?」


 さっきと、同じ場所。


 同じ時間。


 何も変わっていない。


 なのに。


「……なんだ、今の」


 手を見る。


 ちゃんとある。


 足も、ある。


 動く。


 問題ない。


 でも――


 おかしい。


 さっきの感覚が、消えない。


「……」


 頭の奥で、


 何かがチカチカする。


 ノイズみたいに。


 映像が、ズレる。


 音が、遅れる。


 思考が、噛み合わない。


「……壊れてる?」


 ぽつりと、呟く。


 まるで――


 テレビみたいに。


 古くて、調子の悪い。


 そんな感覚が、


 ずっと、頭の中で鳴り続けていた。

第3話、読んでいただきありがとうございます。


今回は少しコメディ寄りかと思いきや、

最後で一気に“ズレ”を入れてみました。


ヒゴロが見たものは何だったのか。

ただの錯覚なのか、

それとも――


そして、何も気づいていない六人の少女たち。


もし「なんか変だな」と思っていただけたら成功です。


ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。


次話、違和感はもう少しだけはっきりします。

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