ランダムで連れてこられたパーティーで、俺だけ現実がバグり始めた
気づいたら、また知らない場所にいた。
今度は――
透明な城の中。
しかも、百階建てのクリスマスツリーみたいなやつ。
連れてきた本人はエルフで、
ひたすら謝ってるし、
理由は「ランダムです」らしい。
……いや、意味が分からない。
でもまあ、いいか。
六人の美少女もいるし。
――すみませんすみませんすみませんすみません!!
開口一番、それだった。
目の前にいるのは、細身のエルフ。
長い耳、整った顔立ち――なのに。
めちゃくちゃ慌てている。
「本当に申し訳ない!!無断で連れてきてしまって!!でも時間がなくて!!いや本当にすみません!!」
「……えっと」
ヒゴロは、言葉を失った。
横を見る。
六人の少女たちも、さすがに少し引いている。
『ほらな!!やっぱり怪しい!!』
『まあまあ、話くらい聞こうぜ』
頭の中で、いつもの声が騒ぐ。
エルフは、深呼吸を一つしてから、改めて頭を下げた。
「私はアルファターと申します。王命により――」
そこで、後ろを指さす。
ヒゴロは、つられて振り向いた。
◇ ◇ ◇
それは、異様な光景だった。
透明な塔。
いや、塔というより――
クリスマスツリー。
巨大な。
百階建ての。
完全に透き通った建造物が、夜空に向かって伸びている。
中には光。
人影。
音楽。
「……なんだあれ」
「城です!!」
アルファターが即答した。
「王エミリオスカー様の百歳の誕生日パーティーのために建造した、透明式祝祭用高層城です!!」
「……長いな」
「そしてそのリハーサルのために!!」
ぐいっと距離を詰めてくる。
「皆様には“試験的な招待客”としてご協力いただきたいのです!!」
沈黙。
「……つまり?」
「ランダムで連れてきました!!」
「……なるほど」
なるほどじゃない。
『ランダムって言ったぞ今!!』
『まあ面白そうじゃん』
いつものやつらがうるさい。
でも――
別に、断る理由もない。
「……いいんじゃないか?」
ヒゴロがそう言うと、
六人の少女たちは顔を見合わせて、
小さく頷いた。
「じゃあ、行こうか」
自然に、決まった。
◇ ◇ ◇
城の中は、まるで別世界だった。
光が反射する床。
透き通った壁。
宙に浮かぶ装飾。
音楽が流れ、人が笑う。
「すご……」
誰かが呟く。
ヒゴロも、同じ気持ちだった。
現実感が、薄い。
でも――
嫌じゃない。
「ヒゴロ、あれ見て」
「こっちも面白そうだよ」
自然に、声がかかる。
六人の少女たちが、周りにいる。
それだけで――
少しだけ、現実っぽくなる。
「……」
ヒゴロは、少し考えて。
ほんの少しだけ、距離を詰めた。
隣に立つ。
軽く話す。
視線を合わせる。
――ほんの、少しだけ。
“それっぽいこと”をする。
結果。
「そうなんだ」
「へぇ、意外」
「ちょっと面白いかも」
普通に、返ってきた。
拒絶も、嘲笑もない。
でも――
特別な反応もない。
「……」
『ほら見ろ!!おかしい!!』
いつの間にか、
墓荒らしはメガネをかけて、本を読んでいた。
『統計的にありえん!!この状況は異常だ!!』
『いや〜いいじゃん別に』
モグラは、なぜかラスタ風の格好で、
どこから持ってきたのか分からない飲み物を飲んでいる。
『流れに身を任せようぜ〜』
『よくない!!絶対に何かある!!』
うるさい。
でも――
ヒゴロは、やめなかった。
少しだけ、距離を縮める。
少しだけ、踏み込む。
それでも――
壊れない。
関係は、そのまま続く。
「……なんでだ?」
小さく、呟く。
◇ ◇ ◇
そのときだった。
――視界が、途切れた。
気づくと、ヒゴロは寝ていた。
知らない部屋。
硬い床。
「……は?」
体を起こそうとして――
止まる。
「……え?」
下半身が、ない。
正確には、
“感覚がない”。
動かない。
見えない。
あるはずのものが、ない。
「……なに、これ」
息が荒くなる。
心臓が、速くなる。
理解が、追いつかない。
「……夢?」
そう思った瞬間――
戻った。
音楽。
光。
声。
透明な城。
六人の少女たち。
「……あ?」
さっきと、同じ場所。
同じ時間。
何も変わっていない。
なのに。
「……なんだ、今の」
手を見る。
ちゃんとある。
足も、ある。
動く。
問題ない。
でも――
おかしい。
さっきの感覚が、消えない。
「……」
頭の奥で、
何かがチカチカする。
ノイズみたいに。
映像が、ズレる。
音が、遅れる。
思考が、噛み合わない。
「……壊れてる?」
ぽつりと、呟く。
まるで――
テレビみたいに。
古くて、調子の悪い。
そんな感覚が、
ずっと、頭の中で鳴り続けていた。
第3話、読んでいただきありがとうございます。
今回は少しコメディ寄りかと思いきや、
最後で一気に“ズレ”を入れてみました。
ヒゴロが見たものは何だったのか。
ただの錯覚なのか、
それとも――
そして、何も気づいていない六人の少女たち。
もし「なんか変だな」と思っていただけたら成功です。
ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。
次話、違和感はもう少しだけはっきりします。




