第44話 華やかな装いの試作
数日後。
作業室の机に、布とレースが積まれている。
中央には、描き上げた設計図。
フェリシアは糸を指にかけ、そのまま針を入れた。
「まずは形を出します」
「はい」
クラリスは布を押さえる。
最初に手を付けたのは上半身だった。
「ここは絞ります」
縫い進めるごとに、生地が体の線に沿っていく。
クラリスが覗き込む。
「締めるのですね」
「ええ。立ったときの形を優先します」
無駄なゆとりを削る。
輪郭がはっきりする。
クラリスは小さく息を吐いた。
「印象が変わりますね」
「ここで整えておかないと、下に負けます」
間を置かず、次に移る。
スカートの布を広げる。
量が違う。
「多いですね……」
「足りないよりはいいです」
即答。
その上に、別の布を重ねる。
「フリルを付けます」
針が止まらない。
一段目。
そのまま二段目へ入る。
クラリスの手が止まる。
「まだ増やすのですか」
「ええ」
さらに重ねる。
三段目。
布の重なりが厚みを持ち始める。
クラリスは視線を上げた。
「……やりすぎではありませんか」
率直だった。
フェリシアは手を止めない。
「このくらいで、ようやく変わります」
「中途半端が一番弱い」
言い切る。
フリルが一周する。
そこで初めて針が止まった。
フェリシアは全体を一度見る。
「次は縁です」
レースを手に取る。
細く、軽いもの。
「重くしすぎないために、ここで抜きます」
裾に沿わせる。
白が入る。
一気に輪郭が浮く。
クラリスの視線が変わる。
「……軽く見えます」
「実際は重いです」
淡々と返す。
「でも、それでいい」
レースを続けて留める。
装飾が増えているのに、全体はまとまっていく。
やがて、フェリシアは針を置いた。
トルソーに掛ける。
大きく張り出したスカート。
重なったフリル。
縁をなぞるレース。
一目で、これまでと違うと分かる。
クラリスは一歩下がる。
「……目立ちますね」
評価というより、確認だった。
フェリシアは頷く。
「そのための形です」
クラリスは少し考える。
「着る方を選びませんか」
「選びます」
否定しない。
「だから、ミレーユ様に頼まれています」
クラリスは納得する。
視線をドレスに戻す。
(確かに——)
誰が着てもいい服ではない。
だが、合う人が着れば。
「主役になりますね」
フェリシアは小さく笑う。
「そのつもりです」
試作は完成した。
だがこれは、完成形ではない。
「もう少し詰めます」
フェリシアはそう言って、再びドレスに手を伸ばした。




