第2話「報酬をめぐる攻防」
ギルドに戻ると、受付嬢のエルザが討伐証明を確認し、にっこりと微笑んだ。
「お疲れ様です。討伐確認できました。報酬の銀貨5枚をどうぞ」
「よっしゃあ! これで今日はご馳走だな!」
レオが銀貨を受け取り、上機嫌でポケットにしまおうとした、その時。
「あ、それと」
エルザが妙に楽しそうな笑みを浮かべ、追加で一枚の紙を差し出した。
「暴走イノシシ、実は隣町からも討伐依頼が出ていまして。同一個体の可能性が高いので、そちらの報酬も合わせてお渡しできます」
「マジか!」
レオの目が輝く。しかしエルザは続けた。
「ただし――規定により、隣町の依頼達成報告は、隣町のギルドで直接手続きする必要がありまして」
「……つまり?」
「歩いて三日です」
場が一瞬、静まり返った。
「三日って、往復六日ってことか!?」
「はい。ちなみに報酬は銅貨20枚です」
「割に合わなさすぎる!!」
レオが天を仰いで叫んだ。ミレイが冷静に計算する。
「往復六日で銅貨20枚……宿代とか食費引いたら、赤字だね、これ」
「行く意味ある?」
「ない」
ガレスまでもが即答する。三人の意見が珍しく一致した瞬間だった。
「よし、今回は見送ろう!」
「うん、賢明な判断」
ミレイがレオの肩を叩き、珍しく二人の意見が完全に一致する。だが、そこでレオはふと真面目な顔になった。
「……いや、待て」
「え、なに」
「俺たちは今、Fランクだ。でも、隣町まで依頼をこなしに行けば、その道中で他の依頼も拾えるかもしれない。つまり――」
レオは指を一本立て、得意げに言った。
「これは、修行の旅だ!」
「急に厨二病拗らせないでよ」
「聞け、ミレイ。俺たちは、いつまでもFランクのままでいいのか? 俺は、もっと上を目指したい。もっと強くなって、もっとデカい依頼をこなして、もっと美味い飯を食いたいんだ!」
「食い意地じゃん、結局」
「食い意地は正義だ!」
力強く言い切るレオに、ミレイは思わず吹き出した。
「……まあ、いいけど。ガレスは?」
ガレスはしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。
「悪くない」
「決まりだな! よし、明日から隣町への修行の旅、出発だ!」
レオが拳を突き上げると、ギルド内にいた他の冒険者たちが「またあいつらか」という目でこちらを見ていた。だがレオは気にする様子もなく、満面の笑みを浮かべている。
エルザが小さく笑いながら、カウンターの奥で呟いた。
「あの三人、見ていて飽きないのよねぇ……」




