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もんすたぁ☆すちゅーでんと  作者: 浅野エミイ


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7-2 採寸

 登校日が終わって始業式。

 全校集会が終了すると、クラス内は賑やかだった。なんでも秋雨が文化祭のときに着るモンスターカフェの衣装のデザインができたみたいだった。


「どんな感じなんだ?」


 ロングホームルーム内で、デザイン衣装が発表された。モンスターカフェは、ヴァンパイアや狼女はもちろんだが、ミイラやフランケンシュタイン、ゾンビなどの変装もやるらしい。


 ヴァンパイアや狼女、ミイラか……。これらは本職、というか、本物が学校内にいる。普通に一般生徒に溶け込んでいるのだが、どんな衣装になるのだろう。


「……どれどれ」


 モンスター本人たちが、秋雨の考えた衣装に目を向ける。

 ヴァンパイアはマントが目印だ。ブラウスに黒くて短いジャンパースカート。太ももまでのブーツ。ヴァンパイアだから露出が多いか? と思ったが、ゴシック調だった。


「えーっ! かわいいじゃん」


 ヴァンパイアである外森のお墨付きだ。外森は笑顔で秋雨の背中をバシバシ叩く。


「よかった、気に入ってもらって」


 秋雨が笑みを浮かべる。俺はそんな様子を見て、言った。 


「うちのクラスのヴァンパイア、絶対こんな服着ないもんな」


「は? センセイ、ケンカ売ってる?」


 しまった、余計なひと言だった。俺はへらへらと謝る。


「いや……普段ゴスロリなんて着てないだろ」

「ゴスロリ服、高いんだよ……」


 ヴァンパイアの財布事情を目の当たりにした俺は、ついその本音に笑ってしまった。


「狼女の衣装はどんなの?」


 乾も秋雨のデザイン画をのぞき込む。狼女は耳がカチューシャで尻尾はホットパンツに付いている。上はセーラー服だ。


「結構露出、あるね」


 乾が照れ笑いを浮かべる。しかし、これらの衣装は本職のヴァンパイアや狼女が着るのか? 秋雨は、ぽつりと話した。


「これらのデザイン衣装は、本当のヴァンパイアや狼女にインスピレーションをもらったから……」

「ボクたちじゃん! 宇月、愛してる!」

「わっ!」


 乾に飛びかかられた秋雨。乾は秋雨なの抱きついた。外森も秋雨の頭をなでる。


「ほんっとかわいすぎでしょ、宇月……」

「えっ、えっ!?」


 ふたりから可愛がられる秋雨を見て、「これが百合萌えか……」などと教師失格なことを考えてしまう。まぁ、仲良きことは美しき

哉。


「それで、デザインはともかく、あとは服作りだよな」


 俺が言うと、外森が挙手した。


「はいっ、今から採寸するよー。ホール接客の係は、服を作るからね」


 クラスの3分の1がさっそく採寸を始める。俺が見ていることも気にせず、服の上から採寸していく生徒たち。いくら俺がいても気にしないとしても、俺は居たたまれなくなる。女子が採寸しているのを見ているのも変態っぽい。しかし、俺は男として見られていないから、目の前で採寸しているのだろうか。

 教壇で顔を手で覆っていたら、秋雨に声をかけられた。


「先生、採寸終わったら呼びに行くんで……」

「お、おう、助かる。職員室にいるよ」


 秋雨に逃がしてもらうと、俺は一旦職員室へ戻ることにした。


「……ふう」


 思わずため息を落とす。すると隣の席の真田先生が俺に気づいた。


「波久礼先生。文化祭の出し物、モンスターカフェでしたっけ?」

「真田先生のクラスな何をするんですか?」

「うちはクラブですね」

「……クラブ? 部活動ですか?」


 俺が素っ頓狂なことを言うと、真田先生ら笑った。


「違いますよ。DJとかが音楽流す『クラブ』です」

「情操教育的によくないのでは……」

「まぁ学生のまねっこ遊びですから」


 2-Bはクラブね。だけど親御さんからクレームとかなかったんだろうか。俺が余計な心配をして真田先生の顔を見ていたら、話を変えられた。


「モンスターカフェって、どんなキャラがいるんですか?」

「狼女やヴァンパイア、ミイラとかですよ」

「あっ、波久礼先生、麦茶です」


 真田先生との話の間に、白石先生が入ってきた。俺は礼を言うと、麦茶をごくりと飲む。白石先生に、真田先生が説明する。


「いやあ、波久礼先生のクラスは、モンスターカフェらしいんですよ。しかもミイラも出るって」

「あら、私が紛れても大丈夫ですか?」


 白石先生もジョークを言う。俺は「いやいや」と笑いながら答えた。


「でも、サキュバスはいないんですか?」

「当たり前でしょ。モンスターカフェって未成年がやるんですよ?」

「僕の出番はなしですか……」

「男のサキュバスが女子の精気を吸ったら、完全にアウトですよ」


 普段俺を狙っている真田先生は、首を左右に振った。


「僕は女子の精気なんて吸いませんよ」

「女子目当てで来た男子学生の精気を吸われても困りますよ」

「……じゃ、波久礼先生が代わりに……」

「ダメです」


 やっぱり真田先生はどういう訳が俺狙いということは変わらないらしい。同性のサキュバスなんていい迷惑でしかない。


「でも、女子高生サキュバスなんて、大人に迷惑ですよね」


 真田先生がつぶやく。俺たち教師を狙うとか、こちらの仕事の邪魔だ。


「おふたりとも、この学校にうちのクラス2人以外にモンスターっているんですか?」


 俺が知らないだけで、まだまだ隠れモンスターはいるかもしれない。教師という仕事柄、知っておいたほうがよいと思い、聞いてみた。

 ふたりは肩をすくめた。


「僕は外森と乾以外は知りませんね」

「私もです」


 そうか……。モンスターはモンスターに聞けばわかるかと思ったが、うまく擬態されていたらわからないのか。


「ところで、どんなコスチュームなんですか?」


 白石先生に聞かれた俺は、先ほど見た秋雨のデザインを思い浮かべた。


「ヴァンパイアはゴスロリ、狼女はホットパンツでしたよ」

「ミイラは?」


 あ。白石先生はミイラだもんな。どんな衣装か気になるか。


「ミイラは確か眼帯をして、普通の制服の下に包帯を巻く感じでしたよ」


 まぁ、ミイラだもんな。包帯はマストだ。白石先生は少し肩を落とした。


「ミイラもかわいい感じにしてもらえたら嬉しかったんですけどね……」

「白石先生は素がかわいいからいいじゃないっすか」

「えっ! えへへ……」

「波久礼先生、口説かないでくださいよ」


 言うと白石先生は照れたように笑い、真田先生からはじろりとにらまれる。

 そんなところに、秋雨が俺を呼びに来た。


「先生、採寸終わりました!」

「ああ、今行く」


 俺は先生方に挨拶すると、教室へ戻ることにした。 

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