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もんすたぁ☆すちゅーでんと  作者: 浅野エミイ


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5-5 ドライブ

「真田先生は、白石先生から精気を吸えなかったから気づいていたんですか?」

「だ~か~ら! モンハラですって!」

「いやいや……」

 

 車の中でわいわい騒ぐ俺たち。モンハラって言われてもなぁ。気になることを聞いているだけなんだが。それに、サキュバスやミイラの生態を知らなかったら、そっちのほうがやりにくいだろう。


「……確かに僕は、白石先生から精気がなかったから気づきましたけど……」

「えっ、真田先生も失礼ですよ?」


 白石先生が口に手を当てて真田先生に文句を言う。真田先生はまっすぐ前を見ている。運転しているので、うっかり事故ったら危ない。


「……真田先生はどのモンスターなんですか?」

「僕はサキュバスです」

「あぁ、だから波久礼先生を狙ってたんですね?」


 ぽんと手を叩くと、前を見ている真田先生はにやりと笑う。バックミラー越しに、白石先生は真田先生の笑顔を見た。


「でも、波久礼先生、精気を吸わせてくれないんですよねぇ~」


 ははっと乾いた笑い声を出す。そりゃあそうだ。同性のサキュバスに精気を吸われてたまるか。俺は窓から夜景を眺める。道路のライトが残像を残しながら、流れていく。


「……波久礼先生は、真田先生が女性のサキュバスだったら、精気を吸わせてたんですか?」


 白石先生に聞かれた俺は、答えに窮した。真田先生が女だったらーー? でもサキュバスに精気を吸われたらどうなるかなんて、わからないからな。


「ほんっとに、波久礼先生いい香りなんですよねぇ」

「よしてください、真田先生」

「あくまで堅物なんだな……。ってか、もし白石先生がサキュバスだったら、波久礼先生吸わせてたでしょ?」

「……あのなぁ、白石先生は関係ないだろ」

「まあまあ」


 白石先生も苦笑いする。白石先生はミイラだけど、美人ではあるからな。真田先生もイケメンではある。それは否定しない。だけどもどんなイケメンでも、同性のサキュバスという事実は変わらない。美形だから精気を吸われていいって訳ではないからな。


「ってか、波久礼先生はモンスターじゃないんですか?」

「えっ? 俺?」

「そうですね。よく考えたら、モンスターの教師が多いのに、その中に普通の人間がいるって珍しいですよね」


 真田先生が運転しながらつぶやくと、後部座席の白石先生が前に向けて言った。

 だけどそれは俺のほうがわからない。普通の女子高なのに、モンスターだらけなんて。教師もモンスターだし、生徒もだ。ミイラにサキュバス、狼女にヴァンパイア。はっきり言って、普通じゃない。人間の生徒は秋雨くらいだと言うのもよくわからない。


 車がどんどんライトを追い越して行く。しばらくすると、真田先生は俺たちに聞いた。


「コンビニ寄ってもいいですか? コーヒー飲みたくて」

「運転、変わるか?」


 俺が気遣うと、真田先生は首を振る。


「いえいえ、大丈夫です! ちょっと夏バテしたみたいなだけなんで」

「本当か? 事故ったら俺たちも危ないからな」

「……それなら、少し精気をいただいてもいいですか?」

「うっ……そう来るか」


 夏バテと遊園地疲れがあるから、運転はきついだろうとはわかるのだが、それとこれとは違うだろう。コンビニに到着すると、俺たち3人は降りて伸びをする。


「ふぁー……さすがにきついっすね、遊園地後にドライブは」

「それよりコーヒーですよね」

「あぁ」


 白石先生に促されて、コンビニの中へ入る。……少し腹が減ったな。俺はおにぎりコーナーへと移動する。


「あれ、先生。お腹空いてるんですか?」

「まあな。……そうだ。真田先生も食べたらどうですか? 精気ではないですけど」

「あっ、私も食べます!」


 白石先生も真田先生の後ろから声をかける。俺はツナマヨと鮭、明太子を選ぶ。白石先生も、梅ちりめんと昆布だ。


「……」


 真田先生も無言でおにぎりコーナーを見つめる。


「僕はカレーピラフですかね」


 変わり種を選ぶと、冷凍庫にあったコーヒーのカップとともにレジに持って行く。会計が終わると、コーヒーを注いで、車に戻る。


「はぁ、俺、腹減ってたんだな……」

「遊園地は食事代も高いから屋台くらいでしか食べられなかったですもんね」


 白石先生もおにぎりにかぶり付く。真田先生はアイスコーヒーに口づける。ひと息入れると、俺たちもおにぎりを手にした。


「……白石先生も真田先生も、モンスターでも普通に食事するんですね」


 ずっと気になっていたことを再びたずねる。また、モンハラなんて言われるだろうか? ちらりと真田先生の顔を見ると、ふと視線が合った。


「僕はサキュバスですけど、最悪食事でも精気の代わりにはなるんですよね」


 精気のほうがいいんですけど、と付け足す。メシで事足りるなら、俺を狙わなくていいだろ……。内心ツッコんで、白石先生にもたずねる。


「ミイラは? その……ミイラは言うなれば死体ですけど……」

「あっ、もしかして『これが本当の腐女子!』なんて思ってません?」

「ぷっ、いやいや……」

「笑ってるじゃないですかぁ~!」


 白石先生はポカポカと俺を軽く殴る。白石先生が腐女子かどうかは知らんが、ミイラが食事って、何だか腑に落ちない。


「……消化器官や内臓は、人間と同じなんです。ただ、包帯していないところが透明になっちゃうだけで……」

「サキュバスもミイラも、食事自身は大丈夫なんですね。なるほど」


 そう言って、おにぎりにかぶり付く。真田先生が食べ終えると、再び車に乗り込む。


「……腹がふくれると眠くなるな」

「気をつけてくださいよ。波久礼先生が寝ちゃった、僕も釣られて眠くなっちゃいますから」

「……白石先生は?」

「っ! ……お、起きてますよ!」


 ……うたた寝してたな? そんな白石先生に俺は苦言を呈した。


「白石先生、一応女性なんですから、自衛してくださいよ」

「いやぁ……。波久礼先生も真田先生も信頼してますから……」

「だからって寝ないでください。僕も眠くなちゃうんで」


 少しきつい言葉をかけてしまうが、それだけ眠いということだ。


 高速を降りて、下道を走りコンビニで休憩したあとは、のんびりと産業道路を進む。


「……でも、夏休みなんですね。学生と遊園地だなんて」

「今日は何だかんだで楽しかったですね」


 真田先生と今日の反省会を始める。今日は結局生徒とともに遊園地を楽しんだ。年齢的にまだ俺たちも若いと言えるだろうか。


「まだまだ夏休みは始まったばっかりですからね」

「そうですね……はぁ、また補導とかに借り出されるかもですね」

「……」

「白石先生?」

「あっちゃー、釘さしたのに、寝ちゃってる……」


 俺と真田先生は無言になる。俺は白石先生を起こす。


「白石先生! 家まで送るんで、起きてください!」

「……うーん……ふぁい」

「ったく、油断しすぎだ。ミイラ」


 真田先生がぼそりとつぶやく。いつも優しく甘い性格の真田先生が、意外にもきつい言葉を落としたのが意外だった。



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