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もんすたぁ☆すちゅーでんと  作者: 浅野エミイ


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4-4 肖像画とタネ明かし

 乾に引っ張られてきたのは、第2音楽室だった。どうせ、人がいないのに鳴り響くピアノとか、そういうやつだろう? 俺たちは音楽室の中を点検する。


「乾、ここの怪談はなんだ? 無人なのに聞こえるピアノとかだろ」


 俺がたずねると、乾は教室に貼られている音楽家たちの肖像画を指さした。


「おしいっ! 確かに誰もいないのに動くピアノもあるけど、教室に入った時点で音は聞こえて来なかったでしょ? ボクが気になっているのは、『視線が動く肖像画』だよ」


 肖像画の視線ね……。そんなの普段は気にしないが、言われてみたらそうなのかなと言った感じだ。


 4人で肖像画を眺めていく。ベートーベンにリスト、モーツァルト、ショパン、バッハ……。名前は聞いたことがあるが、ベートーベン以外の顔と名前が一致しない。俺はそこまで音楽家に興味もないし。


「……で? 視線が動いているかどうか、どうやって確認するんだ?」

 

 俺が聞くと、乾はうーんと唸った。


「ずっと見ているわけにはいかないが、方法はないのか?」

「……そうだね」


 そんないつ動くかわからない肖像画の視線を、ずっと眺めているわけにはいかないよな。それこそ気づいたら夜になってしまう。もちろん、俺たちが何分も見ているのは時間の無駄だ。


「ねぇ、写真を撮っておいたらどうかな? 日をおいて見たら変わるかもしれないよ?」


 秋雨の提案に、外森もこくんと同意する。


「……放課後の音楽室って不気味じゃん。写真撮って、また明日見たら、変わってるかもしれないよ」


 放課後の学校ーー夏だから日こそ長くなったが、それでも誰もいない学校は外森の言う通り不気味だ。テストのこともあるし、生徒を早急に帰宅させた俺は、パンパンッ! と手を2回打った。


「はい、じゃあ乾は写真を撮れ。それが終わったら撤収な?」


 そう言うと、スマホで撮影だ。カシャリと音を何度か鳴らす。撮り終えると、乾は俺たちに写真を見せた。


「しかし、この肖像画も怖いよね……」


 外森がつぶやくのを聞いて、俺は内心ツッコんだ。

 ーーいや、それをヴァンパイアが言うか? 乾もテンションが上がると尻尾が出てしまうから油断できないし。というか……ヴァンパイアと狼女が学校の怪談について調べてるのもおかしな話だ。だけど、うちの学校ーーヴァンパイアや狼女、ミイラにサキュバスが集まっているのに、学校の怪談まであるのかよ……。何なんだ、一体。


「写真撮ったよ。明日また来て確認しよう」

「変わりないとは思うけどな」


 俺は願いを込めてつぶやいた。

 ただでさえモンスターの生徒や教職員に囲まれているんだ。今更学校の怪談なんて怖くはない。だけど、俺のキャパオーバーになりそうではあるのだ。


「気は済んだか? さっさと帰るぞ?」


 そう俺が音頭を取ると、乾が小さく声を上げた。


「先生! い、今、ベートーベンの視線が……!」

「はぁ? マジかよ」

「み、見てよ! 写真。ほら……」


 乾のスマホを全員がのぞき込む。本当だ。今目の前にある肖像画と、視線を向ける位置が違う。


「紋白高校の怪談、決定だね」

「……じゃあ、こんなお化けがいる学校から早く帰りましょうってことになるな? そう言うことで、さっさと帰れ!」

「はぁい」


 乾と秋雨、外森は、ようやく納得したらしく、正門のほうへと向かう。


「じゃ、センセイ! また明日~!」

「ばいばーい!」


 3人を送り出すと、ようやくため息がつける。俺が職員室に戻ると、まだ真田先生と白石先生が残っていた。


「波久礼先生、やっと生徒たち帰りましたか」

「えぇ。って、よく生徒に捕まってたって知ってますね」

「だって……学校の怪談仕込んだの、僕と白石先生ですもん」

「ふぅん……って、お前らが元凶かっ!」

「きゃっ!」


 俺が声を上げると、白石先生がかわいく反応する。俺は咳払いすると、真田先生に向き直った。


「なんでこんな手の込んだことをしたんですか」

「学校の怪談を広めたら、さっさと生徒たちが下校するかと思ったんですよ。放課後、生徒を早く帰宅させれば、僕たち教員のアフターファイブも安泰でしょ」

「……アフターファイブのために、ずいぶん面倒くさいことしたな?」

「それだけ僕と白石先生は、波久礼先生と一緒に飲みに行きたいんですよ」


 ……そう言われると、少し照れくさい。だけど、真田先生は下心があるってわかっているからなぁ。ちらりとそちらを向くと、真田先生はお茶を汲みに行く。その好きに俺は白石先生にたずねた。


「失礼だったら申し訳ないですけど、白石先生、ミイラって酒飲めるんですか? 今まで気にせず弁当食べてもらったりしてたけどーー」


 「ミイラって死体でしょ?」とダイレクトに聞けないが、ミイラだろうが普通に教師生活を送っていたので、気にしてなかったんだよな。白石先生は両手両腕に包帯を巻いているけど、取れたら透明になってしまう。だから、食べたものがどうなるかわからないのだ。


「ふふっ、知りたいですか?」

「じゃ、今日3人でディナーにでも行きます?」

「俺はまだ試験問題作ってねえんだよ……」

「時間は取らせませんし、行きましょうよ!」


 白石先生にも甘えられてしまうと抗えない。ーーまぁ、試験問題作りは家でもできるか。俺は待っていてくれているふたりに釘を刺す。


「酒はないですからね」

「はいはい。わかってますよ」

「では行きましょう!」



 ーー真田先生と白石先生に連れて来られたのは、牛丼チェーンだった。


「ははっ、これがディナーね」


 俺が笑うと、牛丼を食べながら真田先生も笑みを浮かべる。まぁ、帰ってからも仕事はあるし、牛丼がディナーとはちょうどいいか。


「白石先生は牛丼じゃなかったほうがよかったのでは?」


 俺が気をきかせて質問する。白石先生は、手や腕は包帯を巻いているが、それさえ気にしなかったら牛丼チェーン店よりも高級ホテルのラウンジのほうが似合っている。だけど、先生は首を左右に振った。


「牛丼のほうが気兼ねしないので楽なんですよね」

「すぐ料理も出てきますからね、プハーッ! うまい!」


 俺は酒を飲まないと宣言したが、真田先生はビールを注文した。いい飲みっぷりだが、そんな真田先生が少しだけ恨めしかった。


 


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