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もんすたぁ☆すちゅーでんと  作者: 浅野エミイ


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4-1 中間テスト

 体育祭が終わったら、休む間もなく次の行事。中間テストの季節だ。


「先生、おはようございます」

「……おはよう」


 登校したらすぐ真田先生が挨拶してくる。俺は用心しながら返事する。真田先生がサキュバスって……正直誰得なんだよ。しかも男に言い寄ってるとか。俺のどこがいいんだ?


 隣のデスクに座って、じっと真田先生を見つめる。するとにんまりした笑顔が返ってきた。


「なんっすか? 波久礼先生。僕のこと、気になってる感じーーとか?」

「バカは休み休み言えよ。それより、中間テストですけど、真田先生は問題担当じゃないんですか?」


 たずねると、真田先生は俺にプリントを見せた。


「じゃん。できてるんですよね、実は」

「……俺より仕事できるのか。焼いちまうなぁ」

「焼かないで、惚れてくれないですか?」

「ははっ、バーカ」


 軽口に軽口を返す。だけど数学はテスト問題、もう出来上がってるのか。俺は古典のテキストと向き合う。いっそのこと、鉛筆転がしで作ってしまおうか。


 そんなことを思っていたら、デスクにふとチョコレートが置かれていた。


「ん? なんだこれ」

「あ、波久礼先生。答案作りしているって聞いて……。余計でした?」


 ふと声がしたほうへ顔を向けると、白石先生が頬を赤く染めていた。俺はそれにぶんぶんと左右に頭を振った。


「いえ! お心遣いありがとうございます」

「……波久礼先生、僕がチョコ置いてたら捨てそう」

「あのな、そこまで白状じゃねーぞ?」

「そう? じゃ今度催淫チョコ作って持ってきますね」

「そんな予告されたら食わんわ」


 何気に俺たち教職員は仲がいいのかもしれないな。軽口を叩きあう。……だけど、その正体はミイラとサキュバスである。それさえなければなぁ。テスト問題ではなく、人間関係……いや、モンスター関係とでも言うのか? それで頭を抱えるのはごめんだ。


「波久礼先生いますか?」


 職員室前に来たのは秋雨だった。試験一週間前になると、職員室への生徒立入が制限されるのだ。

 俺は一旦手を止めると、秋雨のほうへと行った。


「おはよう。なんだ?」

「今日日直なんで学級日誌を取りに来ました」

「おお、わかった」


 俺は分厚い黄色い日誌を手にすると、秋雨に渡した。


「ほい。今日も一日頑張れよ」

「……ありがとうございます」


 秋雨はぽっと頬を赤くして、うつむく。なんかこっちが照れくさくなってしまう。


「そろそろ僕たちもホームルームの時間っすね」

「おう。秋雨、俺もすぐに教室行くから、先戻ってろ」

「……はい」


 真田先生の声が聞こえたのか、秋雨はぺこりとお辞儀して教室へ戻って行った。ちょうどそのときに予鈴が鳴った。タイミングバッチリだ。


 俺もクラス名簿を持つと、教室へ向かった。


 ーー今日も長い一日が終わった。一日7時限も教科があると、さすがに教師としても体力的に疲れる。帰りのホームルームを終えると、俺は教壇でトントンとクラス名簿を揃えた。


「先生、さよならー」

「気ぃつけて帰れよ」


 クラスの生徒が俺に挨拶して教室を出る。


「センセイ、職員室に戻らないんですか?」


 外森に聞かれると、俺は視線を秋雨に向けた。


「ああ、宇月の学級日誌を待ってるんだ?」


 乾が気がついた通りだ。また職員室まで来られると、試験問題が流出したらまずいからな。だったら最初っから書き上げるのを教室で待っているほうがよい。


「先生、書けました」

「ん。……秋雨、絵もうまいな!?」

「ありがとうございます」


 秋雨のイラストは、マンガ研究部並みにうまい。そう言えばこいつらって……。


「お前ら、部活には入ってないのか?」

「葉桜は器械体操部だよ。令来はチア部」

「……で、秋雨は?」

「私は帰宅部。家遠いし」


 今は試験前だからふたりは部活休みなのか。だからって、クラスに残っていたらテスト勉強が遅れるのでは?


「テスト勉強はちゃんとやってるのか?」

「うん。今日もこのあと、3人で図書館に行こうかって話してたんだよ」

「……勉強はいいけど、早く帰れよ?」

「はぁい」


 俺は学級日誌を受け取ると、きちんと早く帰るように釘を打ってから職員室へと戻った。


「ーー2-Aの生徒は物わかりいいんですね。テスト前も勉強とか」

「真田先生のクラスは、違う感じなんですか?」

「僕のクラスは放牧ですから。生徒の自主性に任せています」


 真田先生は朝に白石先生からもらったチョコを口に入れる。俺も真似すると、真田先生はにんまりした。その顔に、俺はバツが悪く感じて、包み紙を丸めた。


「でも、部活が休みだからだと思うんですけど、放課後のケガ人がぐっと減るんですよね、この時期」


 白石先生が俺たちの会話に参加する。確かにケガしやすい乾や外森の部活は休みだ。


「毎日このくらいならいいんですけどねぇ」

「はい、白石先生、波久礼先生。一服どうぞ」


 真田先生がお茶くみしてくれる。俺は茶碗に入れられた煎茶を飲もうとしたが、少し熱かった。猫舌ではないと思うんだが。ともかく、お茶もお菓子もありがたい。俺はふたりの厚意を享受した。


「そうだ。試験終わったら、3人でメシでも行きません?」


 真田先生が発起人で、夜の飲み会を開こうと言う。嬉しい半面、真田先生はサキュバスだ。正直油断できない。


「……変なことすんなよ?」

「えっ、変なことって?」

「白石先生は大丈夫です」


 俺は白石先生が安心できるように添えた。そうなのだ。白石先生はミイラ。生者じゃないので、サキュバスである真田先生は、白石先生から精気を吸えないのだ。そうなると、ターゲットになるのは、また俺になるということだ。


「まぁ、考えておいてください」

「ぜってー酔えないフラグだな?」


 俺は口角を上げてにやりと笑う。もう一度お茶をずずっと飲むと、試験問題の作成だ。早めに作り上げた真田先生と、保健医の白石先生は早めに学校を出る。試験問題がなければ、教職員は早く帰れるのだ。


 夕方6時を回った。俺は時計を見て、ため息をつく。そろそろ施錠する時間だ。俺は一応、自分のクラスに戻ってみる。また残っている生徒がいたら、家に帰さないと。


 俺は教室を確認する。……ん? まだカバンがある。残っている生徒がいるのか?

 そのときだった。


 ぽん。


「うぉっ!」


 肩を叩かれたような気がして、俺は驚きながら振り向く。そこにいたのはーー

 


 


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