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結果から言うとシルヴィアは助かった。運良く川岸に引っかかっていたところを親切な誰かが引き揚げてくれたそうだ。
「心配したよぉ、もう!」
目が覚めたら、滞在中のホテルの部屋に寝かされていて。いつの間に駆けつけたのか、コンラートが涙目で手を握っていて。ああ、涙目のイケメンって綺麗だなぁと見とれていたら、そりゃあもうこってりと叱られた。
そんなわけで、シルヴィアの看病には始終コンラートがくっついていたのだけれども。
「ねぇ、そろそろ手を放してほしいんだけど」
「イヤだ! シルを一人にしたらまた無謀なことするでしょ!」
シルヴィアがコンラートとくっつくのを躊躇うには理由がある。束の間の逢瀬だろうが、ドジの呪いは容赦なく降りかかるわけで。
(アンタが部屋の壁をぶち壊してくれたせいで、外から丸見えなのぉ!)
おかげで野次馬や宿泊客からの生ぬるい視線のいい餌食である。顔から火を噴きそうな日々にシルヴィアは内心、白眼であった……。
◆◆◆
まるで羞恥心を試す試練みたいな療養生活がやっと終わり、シルヴィアはエロー子爵邸を訪れた。例の毒花を見つけた件で、ぜひお礼をと招待されたのである。シルヴィアを引き揚げてくれた人が、毒花のことも報告してくれたらしいのだ。あの川岸では今、駆除作業が行われているという。
「繁茂する前に対処できたのはサンクタ伯爵令嬢のおかげですわ。エロー家を代表して、心より御礼申しあげます」
あの花の毒素は、触れれば皮膚を爛れさせ、飲めば腹を壊す。放置すれば、下流の水草も魚も死滅させてしまう。繁茂すると、なかなか根絶やしできない厄介者なのだ。
「どうぞ、心ばかりのお礼ですわ。お納めくださいませ」
艶やかな赤髪が眩しいゴージャス系の美女――エロー子爵令嬢テレーズ様が差し出したのは、色鮮やかなアクセサリーの一式だった。
(わぁ……!)
よく見ればどれも繊細な刺繍やレース編みで立体的な花を象っている。それらを集めたブーケを思わせる色鮮やかなネックレスや、花弁を幾枚も重ねた大輪の花の髪飾り。それから一輪のモチーフの可愛らしいピアス。
「我が領伝統の刺繍なのです。糸の染色から領内でやっておりますのよ」
テレーズ様はそう言って、誇らしげな笑みを浮かべた。笑うといっそう華やかさが際立つ。彼女もまた、花のモチーフをいくつもの連ねた刺繍細工付きのリボンで艶やかな赤髪を飾っていた。自ら広告塔になっているのだろう。
(でも……王都でお会いしたことはあったかしら?)
これだけ華やかな美女なら記憶に残りそうなものだが、シルヴィアはとんと覚えていない。それが少しだけ引っかかった。
刺繍細工のモデルはトルコのオヤ刺繍です(^^)




