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第53話 その頃の魔法科

一方、魔法少女科の支局。 執務室のソファに深く腰掛けた支部長・水鏡柊は、刹那から送られてきたばかりの定期連絡の報告書を、穴が開くほど凝視していた。


そこへ、白衣の裾を翻しながら村雲雅が近づき、けだるげな声をかける。


「随分と集中して報告書みとるようやけど、例の『サイカちゃん』の件?」

「ん? ああ、雅か。……少し気になる点があってな。お前はこれを見てどう思う?」


柊から手渡されたタブレットの報告書に、雅は細めた目を滑らせる。


「……ふぅん。随分と奇妙な報告書やなぁ。てっきりウチらは、彼女が魔法ポイントのシステム自体を知らんのやと思ってたけど、刹那ちゃんの話やとシステム自体は知っとるようやし、端末にアプリも入れとる。やのに、服一着買う余裕も無いほど困窮しとる。ほな、魔法ポイントをマホペイにせず『妖精アイテム』に変えてるのかと思うたけど、そもそもアイテムの存在すら知らんかった……と」


雅は扇子でトントンと顎を叩き、分析を続ける。


「そして、ポイントを貯めれば『何でも願いを叶えられる』という話にだけは、異常なほど食いついた。……となると、考えられる可能性として一番高いのは」

「願いを叶えられるという話自体は知っていたが、その具体的な方法までは知らなかった。……いや、教えられていなかった、と言うべきか」


柊が苦渋に満ちた表情で言葉を継いだ。


「彼女の契約妖精……結局、正確な名前までは分からなかったようだが。報告書に上がっている、サイカ君が『邪悪の化身』と呼んでいるその妖精が、意図的に情報を遮断し、彼女をコントロールしている可能性がある」

「せやなぁ。妖精には『契約に関する嘘を言ってはいけない』という妖精界の絶対ルールがあるけど、言わんだけで隠しとくっちゅー抜け道はいくらでもある。特に『あの精霊』の眷属妖精によく見られる傾向やわ」


雅の言葉に、柊は手元の資料をさらに深く読み込む。


「……『闇の精霊』の眷属。いや、あの幼さで、あのレベルの魔法少女となると、闇の精霊本体が契約精霊である可能性まであるな」

「どの道、あまり良くない話やなぁ。子供の無知に付け込むんは、胸糞悪いわ」

「彼女の魔法ポイントの動きを、裏から洗う必要性があるかもしれない。現に彼女の手元には、実績に見合わない雀の涙ほどのポイントしか与えられていないという報告もある」


雅は、手にした扇子をパチンと閉じた。


「ええんか? 妖精側の内情にまで首を突っ込むとなると、あっちの連中と厄介なことになるんは明白やで?」

「……あのような儚い子が、命を懸けてまで叶えたい願いがあるという。それを食い物として扱う者がいる……その可能性があるなら、組織の長として、何より一人の元・魔法少女として、絶対に許してはならない」

「ふふっ、柊は相変わらずやなぁ。そういう青臭いとこ、嫌い嫌いやないで」


雅はくすくすと笑ったが、その瞳の奥には、友である柊と同じ、底冷えするような冷徹な怒りの光が宿っていた。


「せやけど、今は大きな動きはせえへん方がいいやろなぁ」


雅の忠告に、柊は苦々しい表情で唇を噛み締めた。


「……悔しいがな。今回の件で、サイカ君は妖精アイテムの存在を知った。それは契約精霊にも必ず知られることになるだろう。彼女が問い詰めるのは明白だしな。その上で我々が不審な動きをすれば、契約精霊に警戒され、再びサイカ君を連れて姿を消される可能性が高い」


「せやろうなぁ。今この時点で完全に潜伏されたら、ウチらにはどうしようもあらへん。……せやから、刹那ちゃんにも詳しい推測は伝えておらんのやろ? あの子がこの話を聞いたら、正義感に火がついて短絡的に突っ走るのは火を見るより明らかやし」


「ああ、刹那には『今後も変わらず連絡を頼む』とだけ伝えている。彼女の純粋さは、サイカ君の警戒心を解くための最大の武器だからな」


雅は窓の外、街の夜景を見つめた。


「ふふふ。せやけど、バレないように探る手立てはいくらでもある……確実にその『邪悪の化身』とやらのベールを剥がしてやろうやないの。子供の夢を食い物にするような不届きもんには、相応の報いが必要やろ?」

「ああ、頼む」


雅の不敵な笑みに、柊も短く応じた。


「おそらく相手がサイカ君を使って、やってくるであろう次の手は――」

「ポイントの効率的な稼ぎ方……やろうなぁ」


雅の読みは鋭かった。100億という絶望的な数字を突きつけられた「子供」が、それでもなお諦めないのなら、次に求めるのはより多くの「獲物」と「効率」だ。


――一方、その頃の才牙サイカは、高架下でチーポを物理的に締め上げ、「9対1」の超不平等条約を無理やり合意させていたのだが、その鬼のような形相は、魔法科の面々が抱く「儚く健気な少女」というイメージとは、もはや銀河系ほどの距離が生じていた。


「わ、わかった……わかったから離してぇな……。ワイ、今日からかすみを食って生きるしかないわ……」

「当たり前だ。これまでのピンハネ分、きっちり返して貰うからな!あとクソキノコ!効率的なポイント稼ぎの方法教えろ」

「んなん、ワイが知りたいくらいや!!魔法科の連中にでも聞いたらええやろぉ!!」

「……ッチ、しゃーねぇ、それしかねーか」

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― 新着の感想 ―
ちーぽの属性は生命…ある意味光?ですかね?
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