19-25.最後の敵
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
19-25.最後の敵
さて今回は千秋楽であるので、アンコールには何度かは応えようか。と言う話にはなっていた。
バクロン公演まではアンコールは無かったので、観客はちょっと物足りない様子だったが、こちらはすぐに撤収準備に入る、いわゆる
「ケツカッチン」
だったので、お応え出来なかったのだ。
今回は撤収準備はゆっくりでいいし、大ドームを畳んでマルブで再利用する(チャガム大公の全天候型バザール構想のため)ため保守しておくだけだった。
後の大道具等は大半伎芸天事務所が引き上げるが、一部はギョウザ歌劇団の3メタル演目準備のために残す。さらに今後移動しやすい様に加工された、パイプオルガン型の
「パラゴン」も妖狐の里のダンチビ社から納入予定だ。
二体のプロジェクター(ウル・オートマタと八娘パナの抜け殻)は歌劇団の練習開始に合わせてオペレーター(三娘)付きでシバヤンからレンタルされる。
そう言うスケジュールなので、明日以降特に急ぐ事は何もない。
なので
「30分位は伸びてもいーよー」
みたいな雰囲気がみなぎっており、観客も盛り上がりまくり、3メタルも神バンドもノリノリだったのだ。
「「「ありがとー!See You!」」」
と、一旦はけても
「「「「「「アンコール!アンコール!」」」」」」
の声に再び舞台に現れた3メタルは
「ありがとー。私達まだ新人だから、あんまりレパートリーないんで、同じ曲だけど、いい?」
「「「「「「いいよー」」」」」」
てなもんで、いつ終わるか分からん状況で、なんと一時間以上アンコールが続いた。
そりゃいくらなんでも引っ張り過ぎでしょ、八戒(舞台監督)さん、止めろよ。
と思うだろうが、実は裏では止められない事情があったのだ。
『おかしい、おかしいよ』
セイコαβから緊急念話が入ったのが、オーショー団長が新公演の発表をしていた頃。
『どうした?何があった?』
『穴が…ポコポコと』
もちろん、ここで言う穴はモグラ叩きゲームなんかじゃない。
大御所勢力が金羊毛で開ける空間の穴の事だ。
『ポコポコって?』
警備主任の沙悟浄が走って来た。
「ドームの周囲に20個の穴が開き、中から50人ずつ筋肉兵が出て来た」
さっと風が吹き、伝言だけが残る。
霧隠(羽鳥)才蔵の得意技だ。
「こちら才蔵。穴の一つに攻略をかけたが、筋肉兵は穴の防衛に特化しているらしく、容易には落とせない」
一体何が起こっている?
「大事なアンコールをワシに聞かせん気か。しかしそんな事よりワシはファンクラブ名誉会長としてあの子達を守らねばならん」
マーリンが現れた。こう言う時の奴は頼りになる。
「名誉会長、この多数の穴は?」
「20個の穴に守備兵50人づつ。これで1000人じゃな?」
「と言う事は?」
「あと筋肉兵は100人。この者達の生命力を絞りとって、あやつが術を掛けようとしておる」
「あやつ?大御所ですか?」
「そんな小物ではない。ワシが超古代より幾度となく戦って来た宿敵じゃよ」
「破滅の魔女」
「その上の虚無の女神まで出て来おったら勝ち目はないが、もしあやつが出て来たら、各神界が黙って居らんじゃろう。一気に終末に向かおうが、あの女神は今までは、分身である破滅の魔女を使っておる」
「分かりました。魔女は何をやろうとしているのですか?」
「ドームの周囲に穴を20個。それをワシらに取られぬよう、1000人の筋肉兵に守備させる」
「一個に50人たぁてゃあした事にゃあがね。アシの電撃で」
「おそらく効くまい。パーサ程ではないにしろ、上警のエージェント、羽鳥才蔵が攻略出来んのじゃ、穴に完全に貼り付けられた、肉の蓋になっておるんじゃろう。奴の考えそうな汚い手じゃ」
「それでそんな穴開けて、何をする気なのかしら?」
「切り取り線じゃよ」
レムリアでも一列に並んだ針を押して、紙に切り取りやすい穴を開ける文房具はある。
「と言う事は?」
「魔女は金羊毛に寿命があり、既にそれが尽きかけている事を知っているのだろう」
「知ってて大御所に好き勝手使わせた?」
「尽きかけ、つまり破滅直前でないと使えない魔法を破滅の魔女は持っている」
あれか?ウルトラマンはカラータイマーが赤く点滅しないと、スペシウム光線が出せない。的な?
「火事場のクソ力みたいな魔法だが、盛大に体力を使うので、大勢の人間の体力を吸い取りながら行う術じゃ」
「そのために筋肉兵100人を残した?」
「一番エネルギーが溢れた男達をな。いわば電池兵じゃ」
「その人達はどうなるの?」
「一度奴の儀式の場を急襲した事がある。体力を吸い取られた者達は、骨と皮ばかりになって死んでおったよ」
まだ肉蓋兵の1000人は確認出来ないので定かではないが、おそらく電池兵の100人に、間違いなくあの村の義賊たち、そしてエールとレイラの父もいるのだろう。時系列的には各地の悪党狩りのいかにも最後に、あの村を襲って男達をさらい、慌しく空間の穴に帰っていった。女達を殺す暇さえ無かった(エールの結界が強固だったため)。
あれは遂に魔女が最適な電池兵を見つけた。と言う事だろう。おそらくアニメの悪役魔女の様に
「見〜つけた」
と言う感じだったのだろう。
なんとか彼らを救いたい。
姉妹のために。
「それで20の穴が魔女の魔法でどうなるのですか?」
師匠が冷静に聞く。
「穴から穴に。魔女の強力な魔法により亀裂が入り、遂には」
皆がゴクリと息を飲む。
「ドーム全体が沈み落ちる」
「敵のアジトに?」
「いや、おそらく女神の待つ虚無に」
つまりアリジゴクか。
「つまり、今はいかに義賊達をおぞましい電池兵の死から救うかよりも、術が完成する前に魔女を倒さねばならないのですね?」
師匠がまとめようとする。
「そうすれば、自然に彼らも助かるのだから」
「いや、お前達には魔女は荷が重い。電池兵の体力の1%でも残っていれば、強力な回復魔法を一昼夜でもかけ続ければ、助かるじゃろう。まずは彼らを奪還する事じゃ」
「魔女は?」
「古い馴染みじゃ。ワシがなんとかしよう」
俺たちがマーリンの言葉を聞いたのは、これが最後だった。
ホント?




