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19-24.タリフ公演

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


19-24.タリフ公演


タリフにたどり着く。

予定より5日遅れたが、なんとか間に合いそうだ。

今迄の公演地と違う所は、このオアシス都市は小さいが(妖狐の里よりは大きいが)、公演が行われる事に慣れている所だ。

流石はギョウザ歌劇団が本拠地として居るだけある。

ギョウザ歌劇団は年の2/3は他国で公演しており、本拠地での公演は近隣の農業が忙しくない計3ヶ月間だけである。


農業が、と言うのは前述したが、本拠地でのギョウザ歌劇団は、初演の出し物がタリフで行われる事が多いために劇団追っかけファンにとっては特別な意味(俺は初演から観てるよ。と言いたい)があり、大勢の客が詰め掛ける。

そのため町の宿屋では足りず、周辺の農家に民宿するのだが、農繁期だと農業用水が足りなくなるのである。

他の開催地だと臨時のキャンプ村が出来たが、町の中央の井戸からキャンパーにどんどん水を汲まれたら、今度は生活用水が無くなる。


なので最初この時期のコンサートツアーは実現が危ぶまれたが、ベンガニーの柔軟な解決策で切り抜ける目処がついた。

『で、近隣に一番被害の少ない水の入手先は、どこがいいかな?』

俺はスミティに相談した。

『本来はないはずの水を動かすのですから、厳密に言えば必ず環境被害はあります。まず必要なギリギリの水量ですが、お風呂は必要ですか?」

中央レムリアの民はほとんど風呂は使わない。あっても水風呂だ。

「まあ洗顔・汗拭き位はするとして、一人1日10L。コンサート前後計5日として50L。3万人ですから、1500000L。つまり1500tの水が最低必要です』


『そんなにか』

『余り小さい湖だと、干あがるまでは行かなくても、かなり影響があるでしょうね」

『なるほど。ではアスビ海とか』

『あそこは塩水湖ですよ。出来れば地下水ではなく、雨や雪が溜まって居る高原の湖とかがいいのですが』

『どうして?』

『タリフは今、塩害が深刻になっています。塩害は地下水を農業用水にする事で地下水に含まれる塩分が地上でどんどん濃縮されてしまう事で起こります』


『だから天からの水か』

『例え1500tでも、この水を優先的に使う事で塩害を遅らせる事が出来ましょう』

まあいずれは何か効果的な脱塩法を考案する必要があるだろうが。


『それで1500t頂いちゃっても良さそうな湖って?』

『パーサに依頼して七娘さんの衛星から確認して貰ったのですが、大山脈のかなり高地に人が住んでいない高原湖があります。冬場は凍りついて雪に覆われますが、この時期は湖になります』

『そこから借りる分には問題ないと』

『いえ、それは今後ここから借りたマイナス1500tが、その地の環境にどの様な影響をもたらすかは不明なので、向こう千年位、見守る必要があります』

とりあえず、この方法が一番影響が少なそうだったので、スミティの教えてくれた湖に向かい、1500t程拝借して、俺のマジックバッグに注入した。


そのマジックバッグ(ボーイスカウトのやつね)は一番前から使っていたので、色んな懐かしいガラクタが放り込んであり、整理が大変だった(すぐ懐かしいね休憩が入る)。あと肉の熟成用(スペシャルマジックポーチだと時間が止まるので熟成しない)にも使っていたので、まだ途中の物は他のポーチに移し、食べごろのはどんどん焼いて、タリフの街の人々に振る舞った。

タリフの街は、歌劇団の公演がない時期でも旅人をがっかりさせない様に、毎夜地元の青年団が舞踊の宴を開いているので、集まった観客が綺麗に片付けてくれた。


公演が近づき、人々が続々やって来て宿屋や民宿にチェックインすると、師匠が仮設した人工溜め池に、マジックバッグから毎晩水を移し(いっぺんにやると蒸発するので)、それを農業用水にする様に農民に言った。

宿泊客には節水をお願いし、皆快く協力してくれたので、街の生活用水である井戸も枯れる事は無かった。


コンサートも5回目ともなると

「3メタルコンサートには絶対に当日券はなく、ダフ屋も出ない」

事が知れ渡ったので

「チケットないけど、行きゃなんとかなるだろ」

と言う安直な客は居なくなった。

いつもは王侯貴族、大富豪とかの無理難題には滅法弱いオーショー団長も

「主催者の意向でして」

で突っぱねている。

タリフ公演ではあるが、歌劇団主催ではないから強気に出れるのだ。


今回も襲撃を警戒したが、前日まで特に何も無かった。

大御所の筋肉兵(てごま)もあと1100人。

無駄遣いは出来ないのだろう。

最終公演も無事終盤に差し掛かり、3メタルがステージ上から

「5公演全てに皆勤されたお客様ぁ〜」

と呼びかけると、12人の馬鹿、いやファンの鑑が

上がって来た。

「仕事辞めてきました」

とか

「家督を息子夫婦に譲って」

とか壮絶なファンばっかりの中に、見慣れた老人がピースサインしていたが、無視しよう。


そうしていよいよグランドフィナーレの前に暗転した後、ホログラム映像ではあるが、ペンジクの大獅子に乗ったキャーリーと、小さな狐面技芸童女が取り巻く光背を背負った聖狐天が、手をつないで大階段を降りてくる。

正装したオーショー団長が

「只今より、キャーリー神様公認、キャーリー化粧品社提供の新しいギョウザ歌劇団の演目を発表いたします。演題は『キャーリー化粧品提供 3メタル物語』」


うぉ〜っと言う歓声がこだました。

コンサートツアーが終わって高揚する気持ちと、終わってしまうのか、と残念な気持ち半々だった観客が一気に盛り上がった。

団長の口から、3メタルの生い立ちを綴る歌劇団の演劇と、3メタルの新曲演奏のホログラムライブを組み合わせた演目で、脚本はベンガニーである事が告げられ、初演はペンジクのナランダーで来春行われる事が告げられる。


俺はぼんやり前世を思い出していた。

俺が初めてオタクになった

「けいおん!」

の第2期最終話の最後に

「映画 けいおん!」

の発表があった事。


あの忌まわしい7月の後、秋の京アニコンサートの最後に

「映画版 続ヴァイオレット・エヴァーガーデン来春公開!」

のテロップが出た事。


これだからファンはやめられないのだ。


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