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19-22.真打登場

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


19-22.真打登場


「分かりました。良く知らせて下さった。ドリア、私の甲冑を」

「はい貴方。佩剣は?」

「父祖の聖剣ドゥルビスを」


「何とかこれが着れる体型に戻って良かったよ」

「殿下は最近毎日城壁の外周を走って居られるのですよ」

大公が供も僅かで走っていると言う。本当に治安が良くなったのだな。大御所に感謝せねば。

「お供は?」

「私一人で良い」

(わたくし)も参ります」

「あの者達はそなたを知らん。そなたを憎むかもしれないのだぞ」

「いいえ。わたくしが貴方に、どんなに幸せにして頂いているか。そしてフィフがチャガマンを継承し、末永く国が栄える事を、あの英霊達に見て頂きたいのです」

妃は幼子を腕に抱いていた。


結局ご夫妻に輿を使って頂き、コンコンはトトムに。俺とオコはあのコクーンに乗り込む事になった。

「いやあ、初めて乗るけど怖いねこれ。まるで足元に何も無いんだもん」

ちょっと高所恐怖症気味の俺。

「試作段階で自分で確かめてないの?最低ね。ベンガニー先生にもしもの事があったらどうする気だったのよ」

「いやベンガニーはすごく楽しんでくれたじゃん」


「いやあステル様の飛行速度は、聞きしに勝るものですな。我が公国でも空軍を創設せねば」

「それほどでも。今日はコクーン抱いてたから、いつもの半分のスピードだよ」

肉壁を飛び越してクルタン側に着地した俺たちは、亡霊兵と対峙した。

「この様に動けるのならば、コンサートの機材もステル様やワイバーンがタリフに運べば良いのでは?」

公妃ドリアが聞く。

「残念ながら一番荷物を運べる大型ワイバーンでも、全ての機材を運ぶには一週間は掛かってしまう。それでも良いかと最初は思っていましたが、あの方々の声をお聞きしては、どうしても大公様に救って頂きたいと思い」

「出過ぎた事を申しました。思慮浅きわたくしをお許し下さい」

既に生きていない先妻ハナテンに勝てないと自暴自棄になっていた彼女だが、本当に聖狐天は彼女を救ったのだな。


大公には亡霊兵の姿は見えない。

(つわもの)に告ぐ。諸君の奮迅の努力により、国は救われ、余も九死に一生を得た。今はチャガマン国は未曾有の繁栄をしておる。全ては諸君が命を賭してくれたおかげだ」

『なんだ?誰だ?チャガマンの名を口にする奴は?』

『見ろあの甲冑、掲げる聖剣。あれは殿だ』

『いや歳が違う。あれは先代のIII世殿下ではないか?』


「余は大公チャガムIV世である。諸君が荒野に落命してから十余年が経過している。マルブの廟堂には諸君の遺骨を祀り、戦死した全ての兵の名が記念碑に刻まれているが、戦場の地に諸君の魂が彷徨っているなど、考えても居なかった。配慮が足りない余を許して欲しい」

大公は頭を下げる。


「殿だ!本当に大公様だ!それでは無事撤退されたのですね?」

「余は大きな傷を負い、長らく静養していたが、人代様に霊薬を頂き、この様に回復しておる。髪はこの様になったがな」

兜を脱ぐと、かなりのM字。亡霊兵達が笑い声を上げる。

社長は大公に例の毛生え薬を献上しようとしたのだが

「過ぎた奇跡が起こると、聖人扱いされてしまい、聖狐天教の教義に反する」

と断られたという。ドリアも

「いつも亡きハナテン様を思い、わたくしを子供を作るだけの存在としか思って居なかった髪フサフサの殿より、今の殿が大好き」

とラブラブなので、薬は渡さなかったと言う。


徐々に夕暮れに差し掛かり、ぼんやりとだが亡霊兵の姿が浮き上がって来た。

「しかし、なぜ諸君は戦場を離れなかったのだ?」

「タンランめが再襲してくるかと思いまして」

「タンランは死んだ。ここなる人代様のご尽力で」

「「「「「「なんと!」」」」」」

ここでペンジクの神、シバヤンの名を出す事は出来ない。色々神界同士の事情があるので。まあきっかけは俺なので、"尽力"でも間違ってはいないか。


「諸君、余と共にマルブに帰ろう。救国の英雄たる諸君を祀った記念碑には、市民達が毎日花を捧げておるぞ」

「今更帰ったとて、迎えてくれる者もなく」

「百人長スルベ殿、奥様は立派にお子様達を育てられ、お子様達は英雄の子として敬愛されて要職についておられます。ドリト少尉殿、ご母堂は97歳でご健在です。エクァルス上等兵殿、許嫁のアイリ様は嫁がれ最初のお子様にエクァルスと名付けられました。…」

師匠がマルブで調べて来た各人の遺族についてのデータを読み上げる。


『我らはマルブには参りません。チャガマン国の繁栄を心から願いながら、祖先の地ゴルモア高原(冥界の)に参ります。チャガマン国は、我らが命で贖ったチャガマン国は続いて行くのですな?』

ドリアが息子を高く掲げる。

「わたくしは大公の後添いドリアと申します。末子相続の伝統に従い、この子V世(フィフス)を殿と共に立派な次期大公に育て上げる所存でございます」

『おおしっかりした奥方じゃ。これなら安泰だな』

亡霊兵は皆頷いている。


『して、若とn…いやウメダ殿はいかがされた?』

「ウメダはエルフの王女と結ばれ、幸せに暮らしているよ」

『本当ですか…?失礼ながら、殿はウメダ殿を冷遇しておられた。やはり血が繋がらないご養子なればと。我らハナテン様親衛隊の者は心配しておったのです』

「冷遇などしたつもりはないが、確かに死んだナンバの手前、遠慮があった。戦の後はウメダを見るとハナテンを思い出すので、遠ざけてしまった事もある」

『やはり…。ではそのエルフ王女とやらとの縁組も、島流しの様なものではありませんか?』

なんか亡霊兵がどす黒くなっていく。


「待たせたがね!」

アヌビス体のパーサが戻って来た!

そして空中には無数のワタリガラスが吊り下げた籠が。

特急便(エクスプレス)料金は無料にしといたわ。うちのレムリア横断速度記録よ!」

社長が胸を張る。

全力で走るパーサに付いてこれたのは凄い。


「みんな、久しいな。俺だウメダだよ」

『確かにウメダ殿だ。ちょっとやつれた感じだが、嫁御に虐待を受けているのか?』

「いやいや俺嫁が大好きだから。愛されてるから。お互い好きすぎるから。ああ、紹介するね。俺の愛妻(ハニー)のエルフ王女アマランタインだ」

アマランタイン女王は俺たちに背を向け、ベールを取って挨拶した。


『おおおおおお〜っ!なんとお美しい』

『ハナテン様だ!』

『いやハナテン様には申し訳ないが、数百倍お美しい!』

亡霊兵は一斉に跪き、すーっと天に吸い込まれて行く。

「皆様はわたくしが祖先の地にお送りしました」

ベールをつけたアマランタインが微笑む。


この方の精霊魔法は大爆裂しか知らなかったが

「美による浄化」

の力は聖狐天に匹敵するのではないか?


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