19-21.亡霊兵の正体
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
19-21.亡霊兵の正体
メル友?の才蔵はすぐ捉まった。
どう見ても彼は四娘が好きなのだが、この女上司は姿を見せる事がなく、止むを得ず仮の姿になる時は大抵パーサの顔を借りていた。
俺が酒の席でついうっかり
「さすが姉妹だけあって似ている(しまった!)…んじゃないかな?」
とか漏らしてしまったので、仮想片思い相手としてパーサを意識する様になった様だ。
元々才蔵の蓬莱での評価は
「仕事の出来る遊び人」
であったので
「美味しい店があるんだけど、今度行かない?」
とか交線でパーサを誘っては
「アシは飲み食いせんで。酔っ払ったあんたの介抱はごめんだでよ」
と断られていたらしい。
「パーサちゃんからお誘いとか珍しいな」
明らかに誤解してる才蔵に
「あんたとこの若いの、借りるでよ」
とレイラを連れて来させた。
久しぶりの再会だったが、痩せ細っていた体は見違える様に発育良くなり、上警の待遇が良い事を知れた。
「お久しぶりでございます」
明らかに固くなっている。
「レイラお姉ちゃ〜ん!」
ステルが抱きつく。このコミュニケーション能力は異常だ。
凄腕結界師の姉のエールとは違い、才蔵に付いてパトロールしなければならない見鬼の仕事では毎日かなりの距離を歩くので、筋力も充分鍛えられている様子で、簡単にはステル(サーバル娘体)には吹き飛ばされず、がっぷり四つのお相撲みたいになっている。
「レイラ姉ちゃんつおくなった。これならいつでも才ぞうの子ども、作れるね?」
「な、なにを…」
ステルは男女が二人でいると、すぐカップルだ夫婦だ交尾だと早トチリするが、レイラが真っ赤なところを見ると、図星の様だ。
結構厄介な一方通行三角関係なのか?
「いやいやいやいや」
とオコが俺の心を読む。
「四娘ちゃんの心はさ」
「えへん、あーさてレイラに来て貰ったのは他でもないが、レイラって亡霊の声って聞こえる人?」
慌てて話題を変えたが、才蔵が何か言いたそうにしている。まあ放置だ。
「目を塞げば」
一言で見鬼と言っても、霊を察知するやり方は色々らしい。
尋常ならざる匂いで分かる者。
ゾワッと髪の毛(妖怪アンテナ)が逆立つ者。
暗闇の中でボソボソと呟く声が聞こえる者。
総称して見鬼と呼んでいる。
レイラの場合はかなり優秀だが、
見る事と聞く事は同時には出来ないらしい。
結界の縫いこまれた特殊な眼帯(かなり中二病なシロモノ)2個で両目を塞ぐと、霊の声が聞こえる。と言う。
「実害は殆どなく、突き飛ばされる程度だが、亡霊兵の声を聞いてくれないか?」
「才蔵様が…手を引いてくれるなら…」
結構アプローチを仕掛けてくるが、才蔵は鈍感主人公を決め込んでいる。
「それはそなたの上司として当然の事だ」
手を取りあって視覚を塞がれたレイラの手を引き、肉壁の前3m程のところに至る。
以下はレイラの聞き取った亡霊兵の会話である。
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「殿は無事か?」
「かなり手傷を追われたが、まだ騎乗して居られる」
「ウメダ殿は?」
「公は騎馬を使われないので、戦中で姿が見えぬ。ただかなりの戦果を上げて居られる様だ」
「流石ハーフエルフは勇猛だな」
「先には父君を失われ、今度は母君まで。だからな。自暴自棄になられぬとよいが」
「これ以上の深追いは無用だ。タンランの本陣は我らの突撃に恐れをなして、クルタンに逃げ帰って行く」
「半日後にはマルブから救援の歩兵達が到着する。それまで持ちこたえ、大公様とウメダ殿をお逃しするのだ」
「味方はどうか?」
「半分は…。城警長のデニズ殿は討ち死にした」
「近衛のロホイ隊長も…」
「敵の1/3は打ち果たした。残る三千。我らが命。に変えても持ちこたえるのだ」
「心得た。なあ、いい人生だったよな」
「うん。英雄と言える主君に使える事程、軍人として幸せな事はない」
「お前、家に奥方と二人のお子を残して居られるのだな?未練はないか?」
「ないと言えば嘘になるが、殿が国家がきっと我が妻子を養って下さる」
「お前は独身だったな?」
「ああ、年老いた母が待っている。女手ひとつで俺を育ててくれた自慢の母だ」
「ご母堂もご高齢だろう。じきにまたゴルモアの草原で逢えるさ」
「自分は次の休暇で故郷に戻り、許嫁と結婚するんす」
「そうか、おめでとう!生きて帰れよ」
「ははは無理っぽいすけど」
「さあまったりするのはここまでだ。敵の後衛がタンランの無茶な命令で、殿の首を取りに突っ込んでくるぞ!」
「なんであんな馬鹿王のいいなりになるんすかね?」
「都に女房子供を人質に取られてるからさ」
「なんて卑劣な!」
「では近衛連隊、及び城警隊の諸君。只今より大公殿下、及びウメダ殿の救出の為突撃する。覚悟はいいか?」
「「「「「「おう!」」」」」」
「おのれタンラン許すまじ!」
「「「「「「タンラン許すまじ」」」」」」
「全てはチャガマン公国大公チャガムIV世殿下のために!」
「「「「「大公殿下のために!」」」」」
「ごめん、俺はハナテン様の為に戦う!」
「お前も好きだったんか?」
「あんな美しい方、見た事ないからな」
「俺もだ」
「自分もっす!」
「おいお前許嫁はどうした」
みんなで笑いながら、二度と戻れない戦場へ…
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流石に皆静かに涙を流す。
感情移入しやすいオコは、号泣している。
「シン・エルフの隠れ里にいるウメダ王は無理だろうが、大公殿下をここにお招きしようと思う。コンサートの為、と言うよりこの者達の為に」
「無理な事あらすか!」
アヌビス体のパーサが走り去る。




