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19-18.暗雲

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


19-18.暗雲


そうしていよいよバクロン公演は始まった。

結果的には大成功。

ジェライス達が用意したグッズも予約分はすぐにはけ、後から追加された高価な記念スタジャンは、希望者が多すぎて抽選となった。

当選した人は嬉しさの余り泣き叫んだり失神したり、えらい騒ぎだった。高価と言っても良心的な価格なのだが、当選者達には買値の10倍以上のオファーが殺到し、首を振り続けたため、ムチ打ち症になった人もいた。


当日に前のチケットを持ってきた客は二人。

一人は醍醐密教の修行僧で、山で修行中に怪しい登山者から買ったと言う。

修行僧でも3メタル好きなんだ。とちょっと面白かったので、色々話を聞いているうちに

「残念ですが、これも大日如来様のおぼしめしでしょう。拙僧はまた山に戻るといたそう」

と帰ろうとするのを引き止めて、内緒でアリーナに入れてあげた。


若者で既に盛り上がるアリーナで、錫杖を持つ山伏が一人立っているのは中々シュールな絵だったが、やはり修行を積んでいるだけあってなんらかの法力があるらしく、常にモッシュの中心に台風の目の様に山伏が直立しているので、ナイラス公演の時のBNの様に上手く若者の群れを裁く事が出来た。


修行僧はすっかり満足して

「いい修行になり申した」

と、山奥でいつも聞いているという3メタルの海賊盤を高音質版に交換し、俺からのプレゼントの持仏(フィギュア)2体を大事そうに背負い箱に入れて去って行った。

この身長12cm程の持仏を、彼は

「一体は変性大黒天様、もう一体は聖狐天様ですな?」

と、正確に言い当てたのは嬉しかった。

(※キャーリーが蓬莱に嫁ぐにあたり、父シバヤンが自分が気に入っていなかった"大黒天"と言う醍醐教の習合名をキャーリーに名乗らせたので、醍醐教ではキャーリーの事をこう呼ぶ)


10年程経って、大東南西域の大山脈東端の麓にある醍醐密教の大きな寺で、この密教僧と再会した。修行を終えた彼はその寺の住職になっていた。

「あの持仏はまだ持っていますか?」

と聞いたら

「今は誰でも礼拝(らいはい)出来る様に二つの高峰の上にそれぞれ祠を作って安置しております」

との事。


ステルが面白がったので、7000m級のその峰まで飛んで行ったが、確かに二つの最高峰にそれぞれ石造りの祠があり、持仏が安置されていた。

しかしとても(酸素ボンベのない)人間が登れる山ではないのだ。しかも空気の薄い高山で、よく石の祠など作れたものだ。あの修行僧は只者ではない。と皆で噂したのだった。


ちなみに二つの峰はそれぞれ

「大黒峰」

「神狐峰」

と呼ばれて地元民の信仰の対象となっている。


もう一人は商人で、長い商談の旅を終えて自宅に戻り、そのままコンサートにやってきた。新しいチケットは直接韋駄天サービスの職員が自宅に届けるのだが、隣に住む男が彼に成りすまして新しいチケットを受け取っていたのだった。

古いチケットの認証魔方陣が示す個人情報が全てこの商人と合致したので、ちゃっかり彼の指定席に座っていた隣人が逮捕された。商人はこの隣人をすっかり信用して、合鍵を渡していたので、まだ色々余罪があるらしい。


そう言う訳でオコの心配していたトラブルは、この二件だけだった。

結果としてコンサートは大成功に終わり、大御所の襲撃は無かった。

フサイ国王やアポルと別れを告げ、次の開催地はタリフだ。

3メタルは一旦大氷原に戻り(パピーズもβたちの故郷に同行した)、俺たちも一旦自宅に戻って一ヶ月後位に合流する約束だったのだが、設営を担当する伎芸天事務所のメンバーは、迎えに来たギョウザ歌劇団の巡業スタッフと共に大道具一式を運んで移動するので時間がかかる。


前世で良く見かけた有名バンドのツアートラックの様に、隊商(キャラバン)を連ねて移動する。

ツアートラックと言えば、俺たちは

「あっ!〇〇だ!」

とか言って手を振っていたが、そのバンドメンバーが乗ってる訳もなく(そりゃスターは飛行機や新幹線で移動するだろう)、コンサート機材を載せているだけだ。


バクロンから北上し、クルティア王国(かつて最悪王タンランが治めていたクルタン国跡)の東側をかすめて、カイバラ峠から伸びる街道に合流する。

この辺りが大街道の西の終点である。

そこからチャガマン国の首都マルブを通って、大街道を東進すると、オアシス都市タリフに到着する。

約一ヶ月半の馬車と牛の牽く荷車の、ノロノロした旅である。


俺たちが自宅で寛いだり、大氷原で3メタルの様子を見たりしている頃、社長の元に部下が血相変えてやって来た。

部下?オルフェだ。下っ端じゃなくて副社長格のオルフェが青い顔をして来るのは只事でない。

「どうしたの?奥さん子供に何か?」

「プライベートじゃありません。家内はますます美しく、子供はレムリア一可愛いです」

さりげなく惚気るオルフェだが、いつものキレがない。


「大街道が」

「どうした?」

「大街道が、封鎖されています」

「どの当たりで?」

「マルブの南方770km。クルティア王国とチャガマン国の国境当たりです」

「コンサートキャラバンは?」

「進めません」

あの大掛かりな可搬式(ポータブル)ドームを始め、様々なコンサートの機材。音響、照明その他総量30tを超える機材を積んだ何台もの荷車が、一歩も進めなくなっている。との知らせだった。


「取り敢えず、現地に向かおう」

とステルとトトムの準備をしている所に、マーリンが飛んで来た。

「ウラナよ、用心した方が良いぞ」

マーリンの慎重論は珍しいのでちょっと驚いた。


「隊商を阻んでいるのは、良くないものですか?」

「かなりな」

「正体は?」

「阻んでいるのは肉の壁。守っているのは亡霊兵じゃ」

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