19-15.魔法の妖精
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
19-15.魔法の妖精
「妖精の匂いだって?」
俺はステルに聞き返す。
レムリア神の意向があり、レムリアには人間以外の知的生物は現存していない。
元々人間からはかけ離れた
「妖精・妖魔」
と言われる類いは、神々の眷属としては存在しており、身近な所だと、伎芸天事務所には多数所属している。
コンコンが借りパクしている
「技芸童女」
などは小学校低学年児童程の大きさがあり、コンコンが憑依すると、普通の子供と区別がつかないが、本体の知能はそれ程高くなく、命令を実行するだけの脇役である。伎芸天得意の曼荼羅ショーでも、主役を引き立たせるパーツとして配置される事が多い。
西洋だとラッパ吹いて飛んでいるキューピッドさんの役割である。
後はシン・エルフの隠れ里(シン・ってやるとなんかそれっぽい。昔は"真・幻魔大戦"とか漢字だったが)で、見かける妖精達がガチっぽいが、あれは結局先祖の霊だし、シン・じゃない方には滅多に出てこない。
なのでレムリアの現世では、人々は妖精を見る事は生涯に、あって一度だろうが、物語には山ほど出てくる。
「複製魔法か。認証魔法陣を欺く程精巧な魔法が使える魔術師は、人間にはいない」
師匠が言う。
「難しいの?」
「いやうんざりする程手間と時間が掛かるので、誰もやらないだけだよ」
「じかんって、どれくらい?」
ステルが聞く。
「最高度の複製魔法"同じ物をもう一つ"は、ある種の妖精にしか使えず、その妖精を作るのに手間と時間が掛かるんだよ」
「知ってる。それって"ランプのジン"だよね?」
俺たちも全員知っている。
幼い頃に聞かされるおとぎ話だ。
荒神丸と言う少年が、偶然ジンの入った灯油ランプを入手して、三つの願いを叶える話だ。
「本当にいたとは…」
オコがびっくりして目をまん丸にしている。
「ただ本物のジンは、物語の様に才能とか富をもたらしたりしない。彼らは家事妖精の類で、願いは家の中の仕事限定だよ」
「家の中の?」
「ステルさん」
「はーい」
ステルが立ち上がる。
「子供の頃、一番叱られたイタズラは?」
「天帝さまがたいせつにしていたそめ付の大つぼをわった時かな?」
「な、なんと言う事を!」
天帝が大切にしていたとなれば、韋駄天の首を全部差し出しても贖えないだろう。
「中に入ってみたいなって。そしたら出られなくなって、母さまを呼んだら、母さまがすぱぁーんとつぼをわって」
白虎さんならやりかねない。
「天帝様に怒られたんかい?」
「ううん、天帝さまはステルには甘いので。それで母さまにしかられた」
まあ猫はどうしても狭い所に入りたがるわなあ。
「それで母さまは壺をどうした?」
「老子さまにたのんだの。そしたら老子さまがランプのジンを呼び出して」
ちょっと待て!老子様ってひょっとしてマーリン?
「老子さまは何人もいたからわかんない。ステル小さかったし。それでジンにね」
「「「「「うんうん」」」」」
みんな身を乗り出す。
「同じ物をもう一つ。って。そしたらつぼが出来ちゃった」
つまり破片から同一物を複製できるのか。術者が主人の叱責を受けない様に、完璧に同じ物を作る魔術か。
「それでね。いだ天さんのいんさつ所で、二枚のチケットを見せてもらった時、あの時のようせいさんのにおいだな。って」
若夫婦が持っていた方から、その匂いがした。というのだ。
「ねえ師匠、そのジンって妖精、作るの難しいんですか?」
「いや作るのは簡単。適当な瓶に水を張り、ジンの粉を溶かすだけ。餌も要らない」
シーモンキーかよ。
「じゃあどこが手間がかかるって」
「そのまま毎日水面に浮いてくるゴミ(要は排泄物)を取り除き、水を足し、そうして千年程」
そりゃ誰もやらんだろ。
「なるほどねえ。例えばさ、コレ(チケットの耳の束)にその"同じ物をもう一つ"ってやれば」
「チケットの束が出来上がり。だな」
「さあ、じゃあマーリンを逮捕に行きましょう!」
「なんでマーリンじいちゃんたいほするの?」
ステルが驚いている。自分が言った事が繋がらない様だ。
「簡単よ」
とオコは得意げに解説する。以下要旨。
1:マーリンはしばしば大東で老子と呼ばれる。
2:老子はステルが小さい時にランプのジンを使って
"同じ物をもう一つ"の術を使った。つまりジンを作れる。
3:魔法陣認識呪法を欺く程の複製魔法が使えるのはランプのジンだけ。
4:誰にも怪しまれずに韋駄天の事務所に入り込むセキュリティ破りが出来るのは、相当高位の術師。
→以上の事から、犯人はマーリンである。
「証明終わり。さあサクサク逮捕逮捕」
飛び出て行こうとするオコを必死で抑えて
「待て待て待て待て待てっ!」
「5回…」
「何よ、メグル。なんであんな因業爺をかばu…」
「仮説4:の証明が破綻してるぞ」
「どういう…」
『韋駄天事務所のセキュリティは突破出来ても、セイコαβの監視網は突破出来ない。と言う意味ですね』
スミティが割って入った。
「その通り。まさかオコはセイコ達までグルだとか、言わないだろうね?」
「ぐっ!あの子達に限ってあり得ないわ」
『例えば子どもらしいイタズラ。と言う範疇で考えても、影響の大きさを考えればマーリンの提案をおかしい。と思うだろうし、兄姉達が許さないでしょう』
「そうね。早まったわ。事件は振り出しに。かぁ」
オコががっくり肩を落とす。
「そうとも言えないよ。ステルのおかげで一歩進んだ」
「どういう事?」
「あんな複製物を作れるのは、ランプのジンだけで、それを作れるのは千年以上の寿命を持つ者だけ。と言う事さ」
「そうね」
「だからさ、とりあえずマーリンの所に行ってみよう」




