19-12.さらばナイラス
私の計算に間違いなければ、今話で700話です。
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1000話行ったら、記念に自費出版でもしようかな?
お金ないけど…
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
19-12.さらばナイラス
ナイラスを発つ日が来て、プトマス95世の所に挨拶に行く。
シオ・ラメンは順調に回復していて、杖一本で歩ける様になっていた。
「本当にお世話になりました。ナイラス国の今後の繁栄をお祈りしております」
「我が宰相を助けていただいた事。深くお礼申し上げます。人代殿はアヌビス神と懇意とはお聞きしておりましたが、まさか太陽神ラーの御令嬢たる正義の女神マァト神とも親しい間柄とは…。我が国の危機をお救い頂き、感謝に絶えません」
「陛下は両神とは?」
「即位の時以外、お会いした事はありません。ナイラスでは、ペンジクほど神と人との間が近くないのです」
ナイラス王は即位の儀式で、独りで神殿から神界へと昇り、ラー、オシリスなどナイラス有力神から認証を受けるが、会話は何もなかったそうだ。
「今回のマァト神の働きについては、詳細は内密に願います。あくまでも大魔法使いノヅリの魔術にマァト神の加護があった。と言う程度で」
実際には、戦地に後背から恐るべき光量で輝くマァト神が顕現しただけで、殭屍魔術師は目が眩んで倒れ、筋肉兵たちの足は一歩も進めなくなった。
「承知しております。私は国民が神々への信仰を厚くするのは良い事と思いますが、神々に依存してしまうのは好ましくない。と思っています」
流石英邁な国王は志が違う。
「神と人とをとりなす人類の代表として、そのご見識を尊く存じます」
国民が信心深いのはいいが、何でもかんでも
「いざとなれば神様が助けてくれる」
と言う楽観的な神依存におちいると、国が滅ぶ事になる。
前世の日本でも、鎌倉時代に起こった史上初の外国による侵略(正確には平安時代に刀伊の侵寇があったが、これは異民族の海賊行為と考えられる)である元寇では、二度にわたる元軍の侵攻を日本は防ぎきった。
この勝利の原因は、
1.源平合戦以来久々の大戦に沸き立つ武士団と言う職業軍人が数万人も現地に集結した事(しかもこれは主に九州の御家人で、幕府が派遣した援軍は間に合っていない!)。彼らの戦闘能力が尋常では無かった事。
2.支配者である遊牧民族の元人と漢人や高麗人と言った被支配海洋民族の間にコミュニケーションが全く取れて居なかった事(危ないからと慎重論を唱える部下をサボりだと決めつける上司と言う最悪の構図)。
3.そして主力となるはずだった中国江南からの軍が台風で壊滅した事。
が挙げられるが、特に台風については、朝鮮半島から南下した先陣と一進一退の戦いを繰り広げていた武士たちからすれば、江南の大軍に合流されては本当に危ない所であった。
その為日本人のメンタルに
「神国日本」
「どんなに敵が強くても、神風が吹いて日本は勝つ!」
と言う楽観論が植え付けられた。
真に賞賛されるべきは九州御家人の頑張りであるのに、幕府は戦後、御家人たちより
「我らのご祈祷により神風を吹かせた」
と称する寺社に恩賞を厚くし、足利尊氏による倒幕の遠因を作ってしまった。
そして結局このナショナルメンタルが太平洋戦争末期に
「自分たちが神風になろう」
と言う若者たちの特攻作戦を招いてしまう。
しかし日本が世界初の空母艦隊で真珠湾を攻撃した結果、多くの戦艦を失ったアメリカは、その教訓から巨大な工業力を生かして無数の航空機による空母打撃群にシフトしていたので既に日本には勝ち目がなく、ミッドウェイ海戦で壊滅的敗北を喫した事も日本国民は知らされず
「日本は神の国だから絶対負けない」
と信じていた。1945年8月15日までは。
俺はナイラスをそんな風にしたくない。
「アヌビス神様はもう二度とナイラスを助ける事はないと存じます」
「承りました。肝に銘じます。しかし他言無用で教えて頂きたい事が2、3あります」
国王の表情が少し柔らかくなった。
「なんなりと」
「二度とないならば、なぜ今回に限ってマァト神はナイラスをお助け下さったのですか?」
「詳細は申し上げられませんが、上警とビッグセブンが手を組んでも手に余る敵だったからです。通常であれば世界最強のナイラス魔術軍に、我が同僚の大魔法使いノヅリがいれば、神様の御手を煩わす事はないのですが」
「それはシオ・ラメンが新規に召し抱えた元筋肉兵を操っていた存在ですね?人間としては、それ以上は立ち入る事は遠慮いたしますが」
「ご配慮感謝します」
「古代ナイラス史にも、死人人形師と神々の戦いの神話があります。またこの地にて、その様な邪教がはびこる様であれば、きっと人代殿に報告します」
「ありがとうございます。他には何かお聞きになりたい事が?」
「アヌビス教徒達が神聖なる足踏みでドームを膨らませた時、ドームの頂上に現れたアヌビス神そっくりな神獣。あれは確か人代殿の眷属であられましたね?アヌビス教徒達があの獣を生き神として迎えたい。と申しておりまして」
「申し訳ございませんが、あの子は大事な我らの家族にして、ビッグセブンの一員ですので、ご要望には」
「判っておりますよ。ただ個人的には、なぜナイラスと縁のない者がアヌビス様の姿をとれるのか、不思議に思っておりました」
そこで俺は、シバヤンがナンバーズの一人に、世界で最も速い獣の姿を与えようとして、あのアヌビス体になった事。シバヤンとアヌビスの間で、肖像権の問題は解決済みで、アヌビス神はパーサと兄妹の契りを結んでいる事。を告げた。
「なんと!ナンバーズの八女、パーサ殿はアヌビス神の聖妹であらせられたか!この事は上手く利用すると、アヌビス教と聖狐天教の軋轢を和らげる事が出来るかもしれませんね」
俺は王に詳しい事は上手に略して欲しいと伝え、聖狐天四天王の一人、二娘とパーサは母娘の関係であると明かし、王はさらに驚嘆した。
その後ナイラスのアヌビス教徒の間で
「誰よりも速く走りたかった少女がアヌビス神に祈ってアヌビス体をした聖妹に変身した」
と言う神話が広まり、聖妹像に運動用サンダルを奉献すると足が速くなる。と言うプロの走り屋さんの信仰を集めた。
こうしてある日、パーサの元に
「神族登録書」
が蓬莱神界から届けられたのである。




