19-10.ナイラス砂漠の戦い(は付録です)
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
19-10.ナイラス砂漠の戦い(は付録です)
要はラーの腹の中で徐々に育っていった、サソリの形をした黒い塊とは何か?
と言う事なのだ。
「父ラーは全く休みの無い太陽神としての仕事のストレスが、だんだん心の中に溜まっていったのだと思います」
太陽神の仕事は年中無休。しかも下々は
「太陽神様は夜はぐっすりお休みになったり、一杯やって居られるのだろう」
と考えているが、実は夜の船メセケトに乗ってリフレッシュして日の出の港を目指すのも仕事なのである。
体はリフレッシュしても、精神は休息しない。
ラー神と言う権威ある立場だから、周囲に愚痴をこぼすのも出来ない。
どんどん内向してストレスが溜まって行く。
「つかれたら、代わってもらえばいいのよ」
とステルが慰める。
「周りも気を使って、何かあった時に備え、神々が交代で補佐官を務めているのですが、それがラー神にとっては疑念を抱いてしまう様で」
誰も太陽神の座を奪おうなどと思う神はいない。
いかに激務であるかは、考えれば誰にでも判る。
「皆に崇敬され、絶大な権力を得られますが、それを使う暇がない。暖かい日差しは感謝されるが、日照りになると恨まれる。でも本人には、自分を暗殺してとって代わろうと陰謀を巡らす者ばかり。と言う黒い疑惑が湧くようです」
指輪物語のビルボやフロドの心境なのだろうな。ラーの場合、原初自然神とオシリスら四柱神との微妙な力関係もあるのだろう。
「それもまたラー神が自ら招いた事。やはりマァトさんの父・母ともラー神。と言う事ではないですか?」
「神とは」
マァトは冥界法廷で告訴主文を読み上げる様に威儀を正して述べ始めた。
「完璧であるべきです。日毎のストレスが溜まりに溜まるなどは、もっての外」
「はい!」
とステルが元気に手を挙げる。
レムリア広しと言えど、ストレスを溜めない。と言う点ではステルほど完璧な神はいないだろう。
「では、なぜラー神がそれほどストレスを溜めるかと言えば、もちろん超ブラックな職場、と言うのが根底にありますが、何より外からの働きがあったのではないでしょうか?」
「外から?」
「人間も神も同じだと思いますが、私も審判の場でアヌビスが送ってくる"死者の書"を読むに、人が罪を犯す時はかなりの確率で『魔が差す』と言う事がある様です」
そうだ!それこそマーリンの言っていた、滅びの魔女メハシェファのなせる技。
「ラー神の様なストレスを身の内に溜め込む様なタイプの方は、外的な刺激で最後にそれが爆発します。幾万年も溜めこまれた黒いサソリは、暗闇の海に潜む虚無の女神との接触による『魔女の一撃※』で爆発し、セルケトの腹に飛び込んで、私が生まれました」
マァトは歌う様に続ける。
「イシス神が私を匿い、セベクとレネネトという両親が全うな娘として私を育てて下さらなければ、私は虚無の女神に捕らえられ、闇の者となっていたでしょう」
(※正確に言えば『虚無の女神の一撃』であるが、前世では『魔女の一撃』と言えばギックリ腰の事であるので、あえて翻訳がこうなったのだろう)
やはりマァトはそんな事を考えていたのか?
キャーリーもそうだが、親の大変ネガティブな成分から誕生した神は、アイデンティティを得るのに大変苦労するのだ。
「どうせ私は…」
になるからである。
「つまり、失礼な言い方を敢えてするならマァトさんにとってラー神は母、虚無の女神は父。と言う言い方も出来る訳ですね?」
師匠が冷静に言うが、そうなると『一撃』の正体が少々露骨になる。
「ああ、良いですねその考え方。私は『人間が罪を犯すのは自業自得』と、ながらく思って来ましたが、アヌビスと知り合ってから、こんな馬鹿助でも良いところがある。と思う様になり、魔が差すのは自業自得ではないのではないか?と思う様になりました」
なんか随分だが、マァトは母の様な心でアヌビスのやらかしを許す様になった。と言う事だ。
マァトが、アヌビスとつきあう様になってから丸くなった。と言うOLオコの指摘はここから来ているのだろう。
「なので私には5人の母、いや正義の大魔王ノヅリ様の表現によると、4人の母と2人の父(セベクと虚無の女神)
がいる事になります」
皆納得の行く表情で頷いた。
「なので魔が差して罪に落ちた人々を冥界で裁くだけでなく、諸悪の根源たる虚無の女神の分身である滅びの魔女メハシェファの陰謀を、現世で打ち破る必要があります。さあ、私を戦場に連れて行って下さい」
虚無の女神本体ならばともかく(本体は現世には現れない)、魔女の陰謀など正義の女神マァトにかかっては、あっけないほど簡単だった。
偽バルバル軍は50人の殭屍魔術師と、2000人の筋肉兵を連れて現れたが、マァトの光で一瞬にして無力化した。
魔女に憑依されていたバルバル人の提督と殭屍化された魔術師は、すでに死んでいるので助からなかった。俺はマァトが蘇生させてくれるのではないか?と思ったが、
「死は人間の摂理です」
とマァトは言い、師匠も教え子を助けてくれ、とは言わなかった。
こうして、ナイラス砂漠の戦いは終了した。
戦史上は女神マァトが表に立つ事は憚られるため
「マァト神の加護を得た大魔法使いノヅリによる、弟子の仇討ち」
と言う事になっている。
滅びの魔女メハシェファは上警が追跡したが、救援のため開けられた空間の穴に逃げ込まれてしまった。
2000人の筋肉兵は、パーサがナノ姫によって、1時間ほど掛けて善人化した。
大御所筋肉兵残存数:6100人(61%)。
『もうナイラスでは来ないだろうか?』
スミティに聞くと
「敵は相当のダメージを受けています。戦場とコンサート会場はかなり離れていますので、空間の穴を新たに開けるのもかなり困難だと思います。用心には越した事はありませんが』
『滅びの魔女がカペラと同列なのか、下なのかははっきりしないが、かなり面目を失した事は間違いないよな』
『そうですね。次のバクロンで、また立て直して手を打ってくるでしょう。それより、ナノ姫007が帰って来ましたよ』
※第19部の主な登場人物
◯旅の仲間(ビッグセブン+α)
メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目なまもなく18歳(僕)と結構浮気症な66歳(俺)が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表(略して人代)"を押し付けられる。
聖狐天の父となる。朱雀国ガルーダ元帥となる。
オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。
コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。
ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。
パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスと美しい牝馬に変身出来る。
今後は小説家になるらしい。
ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの夫。
コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの妻。
八咫…師匠と社長の息子。瑞西学院在学中。
"僕"…"俺"の中に共存する肉体の本来の持ち主。スミティと共にウラナに様々な助言をする。
○聖狐天神界
聖狐天…オコを崇める人々の信仰が造り出した神をオコの分魂とメグルの造った依代で具現化した新しい神。ウラナ夫妻の娘。
シャミラム…聖狐天四天王の一人。元北風の巫女。
サンコン…聖狐天四天王の一人。オコの先々先代の鼎尾妖狐。
二娘…聖狐天四天王の一人。ナンバーズ一の武人。
メルファ…聖狐天四天王の一人。元暴風の魔女メル=ハバ。
○ナンバーズ(参考資料)
一娘…ナンバーズの統括。シバヤンの宮宰。
五〜七娘の母。
二娘…武人。聖狐天に仕える。八娘の母。
三娘…シバヤン宮廷の家事一般を取り仕切る。完全なお掃除をする侍女人形。
四娘…隠密活動に特化。上警で働く侍女人形。
五娘…キャーリーの親友。足が速い。
六娘…唯一人間と同じ消化器官を持つ。記録の神殿で修行中。
七娘…背が高い。宇宙での活動に特化。
八娘…パーサ。クローン分裂したもう一人の八娘のパー子は、人間のパナとなりバクロン元第5王子にして元国王アルディンの妻。
○その他の神・人
アドミン…管理者。スミティを派遣する。
スミティ…アドミンに派遣されたエージェント。メグルの脳内で、メグルの宿主意識の少年と暮らし、メグルに助言する。
マーリン…古代の魔術師。元人類の代表。因業爺。超古代の英雄神イーオンの転生。
ゴンドワナでは白いフクロウを依代とする。
レナルド・ダンチビ…妖狐の里の天才工房長。
アルディン…元バクロンの第5王子で国王。パナの夫。今は種屋の修行中。
ジャルディンII世…旧名サート。ペンジク王。
シュニア…サートの妻。ペンジク王妃にして宰相。元ウル・オートマタ。
初代妖狐…九尾妖狐。初代ボンに仕える。
戦狐…妖狐の一人。ジョウザを守った英雄。
羽鳥才蔵…異賀忍者。現在は上警勤務。
○コンサートツアー関係者
伎芸天…伎芸天事務所代表。今回のコンサートツアーを仕切る。
チャガムIV世…チャガマン国太守。聖狐天教徒。
ボーノ…チャガムIV世の長男。音楽家。
フォカッチャ…チャガムIV世の次男。後に冒険家。
シオ・ラメン…ナイラスの財務大臣。旧名シオ・タンメーン。
アポル…バクロンの元第二王子。バクロンでのコンサートツアー責任者。
ジェライス…アポルの妻。アポルを覚醒させる凄い女性。スメル人の末裔。本名はランジェラ・珠。
団長…ギョウザ歌劇団主宰。
ベンガニー…元ジョウザの侍女。大ベストセラー作家。今回はコンサートツアーギョウザ公演のプロデュースと新しい"3メタル物語"の脚本を担当。
アンジェロ・三毛…ギョウザ歌劇団お抱え絵師。ジェライスの父。
猪悟能…西遊記の猪八戒。現在は伎芸天事務所に就職し、舞台監督として活躍している。
沙悟浄…天竺から戻った後精神を病み、引きこもっていたが、現在は伎芸天事務所で警備主任。
○神々
ダガムリアル…古代神の一人。滅亡したドワーフの祖先神で工芸の神。キャーリーと結婚。
シバヤン…ペンジクの有力神。破壊と創生神。
パトゥニー…シバヤンの妻。慈母の女神。
キャーリー…シバヤンとパトゥニーの娘。ダガムリアルの妻。漆黒の女神。
アヌビス…ナイラスのミイラ作りの神。パーサの義兄。馬鹿助。
マァト…ナイラス冥界の正義の神。強い浄化能力を持つ。
○敵
大御所…蓬莱を脱出した元東国国司。
合理キー(仮)…パーサの首を捻じ切った謎の怪力マン。
カペラ…アドミンと同等の宇宙生命体。
メハシェファ…滅びの魔女。
虚無の女神…メハシェファが仕える絶対的な
虚無。
◯大氷原
イグルー…村長の娘。
パピーズ…レムリアとゴンドワナを行き来出来る4人の犬人の子(ウラナ、オコ、ノヅリ、セイコのαと4匹の橇犬の仔犬(同β)。
3メタル…初代妖狐の娘白銀丸、初代妖狐の義妹の黄金丸、赤銅丸。
○妖狐の里
リュナ…オコの上の妹。商才に長ける。
愛…オコの末妹。美少女でアイドルマナマナとして活動中。
御供…オコの弟。二娘とメルファに師事し修行中。
ヒデノリ…マナマナ親衛隊長のオタク。リュナを補佐してコンサートツアー責任者になる。
○ルディン村
レイラ…救出された山賊の村の娘。四娘を視認出来る。見鬼。
エール…レイラの姉。凄腕の結界師。




