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19-6.きざし

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


19-6.きざし


ナイラスでのコンサート準備は着々と進んで行く。

アリーナ席も完売になり、若者たちもドームの土台作りに汗を流している。

この国は元々鎖国していた事から、入国審査は未だに厳しく

「ラースに行きさえすれば切符なくても観れるっしょ」

とか

「高くてもダフ屋から買えばいいさ」

と言う安直な輩は入国させない。


この国は砂漠に囲まれていて、ナイラス川下流の海港と、俺たちが最初に通った細い地峡を除けば旅人は入国出来ない。

なので妖狐の里の時の様なキャパオーバーは起きなかったが、何しろ開国して間がないので訪問者は初めてナイラスを訪れる者ばかりで、古代の遺跡巡りとか観光を満喫する姿が見受けられた。


全てが順調だったが、俺たちは大御所がどんな手で来るか不安があった。

ナノ姫007からは何も連絡がない。

何らかの念波妨害が行われているか、探知される事を恐れて情報収集に専念しているのかも知れない。

次に空間の穴が開いた時、筋肉兵に乗り写って戻って来るつもりなのだろう。


『スミティ』

返事がない。ただの鹿羽根の様だ(比喩表現)。

『スミティ?』

『なにようるさいわねえ』

ええええっ!

『ス、スミティさん?』

『いっぺん言えば分かるわよ、なんか用?』

『用って…。大御所の今後の戦術についてだが』

『もう、何でもかんでも聞いて来ないで!知らないわよそんな事』

『聞くなと言われてもなあ』

『あと洗濯物、私のと一緒にしないで!汚いから』

『…これって何の茶番?』

『反抗期の娘モードです』

ああこの脳内同居人、めんどくさい。


『それで答えは?』

『問いが曖昧過ぎて、解がありません』

『大御所はこれからどう言う手を打って来るか?って事だよ!』

『ああもう!大声出さないで下さい、思念が頭蓋骨に反響してます』

『さーせんしたぁ』

『反省してませんね。教えてあげませんよ』

『ごめんなさい。教えて』


『これは私の様な機械頭脳が確率を示しても、本当になにが起きるのかはわかりません』

『つまり選択肢が3つあるとして、全てが確率30%くらいって事?』

『そんな感じです。会議形式の方が納得の行く解が出やすいのでは?』


そう言う訳で、ビッグセブンが久々に集まった。

「それならあそこで会議したいわ」

オコの強い要望で、会議は俺の浮遊神界で行われた。

『ふーん。ここにいつもはあの子が座るのね』

とか

『あらいいお茶があるのね。あの子は一口しか飲めないのに』

とか独占回線の念波がガンガン送られて来る。助けて!


「いい趣味の別荘ですね。ログハウス風でありながら茶室の趣きもある。ウラナ君はここでゆっくり思索にふけるんですね」

「いやあ師匠の書斎に比べたら、貧弱なものですよ」

『くんくん。女の匂いがするがね。メグルさ、どこぞの姫と…あ!これはもしかして?』

『パーサそれはいいから』

「あるじ、ここでオコとらぶらぶする?」

ステル、それは禁句!

「ステルちゃん、メグルはここで『たった一人で』過ごすのよ。だから『ここに女性が来るのは初めて』なの」

極めて冷静に言い放つオコが怖い怖い。


「で、では会議にしよう。今後大御所が何を仕掛けて来るか?だが」

「一回目はコンサート前日に偵察行動(老人100人)、二回目は当日会場に乱入(筋肉兵500人)、マルブでは反乱に乗じて13箇所に計1300人の筋肉兵」

師匠がまとめてくれた。

「後は草忍、津藝権太夫の撃退」

社長が補足する。

「次はなんやろな、うちワクワクしてきましたで」

コンコン、そんな浮いたセリフ言う歳じゃ。でも元ネタを言う声優さんの実年齢は(以下略)。


「今度は正攻法でコンサートを狙うか、搦め手で要人を襲うとか」

「シオ・ラメンを襲った滅びの魔女メハシェファの行動がコンサート妨害に当たるのか、シオ本人への因縁か」

「おそらく両方だろう」

「すると例えばプトマス95世の様な要人にテロ攻撃とかはもうない?」

「と見せかけて。と言うのもありだよな」


「ナイラスで要人と言えば?」

「シオ・ラメン(済み)、プトマス95世、カライ大佐、94世先王」

「そう言えば先王ってどうしてる?」

「カライ大佐と釣り三昧(殆ど弘樹&辰兄状態)。でも彼らは既に過去の人だからなあ…先王は軍事クーデターで、大佐は今回の王政復古で、粛清された。と思ってる国民も多いよ」

「でもメハシェファのナイラス乗っ取り計画を打ち砕いたのはカライ大佐だからな」

「確かにカライ大佐は恨まれてそうだね」


「こう言うのはどう?」

ステルがワクワクしてる。

「どう言うの?」

「こうやのけっせん」

「なんだそりゃ」

「さばくでげきとつ」

「まさかぁ、ステルはベンガニー戦記ものの読み過ぎだろ」

「まあ大御所も焦ってるけど、ここで一挙に大軍を使うのは悪手だよね」

と師匠。

「なんかね。いくさのにおい」

だが、ステルが気になる事を言う。

ステルはビッグセブンで一番嗅覚が優れている。

「大ぜいの男、鉄のにおい、馬のあせ、ナイラスに迫って来る」

「そうか敵は筋肉兵とは限らず…。ちょっとシオにナイラス周辺の国際情勢を聞いて来る」


そこに、実にタイミングよくスミティが一報を入れる。

『ここで臨時ニュースです。西の砂漠でバルバル人とナイラス魔法師団が戦闘状態に入りました』


誰だよ、バルバル人って。

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