表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
703/2099

18-36.マルブ事変

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


18-36.マルブ事変


草とは忍者の中で、敵地に潜入し何食わぬ顔で普通に暮らしながら、主君のために情報を集めたり、侵略の手引きをしたりする者の事で、代々敵国に使える者さえいる。現代風に言うスパイに近い存在だ。

その為江戸時代では、各大名は他国からの移住者を極端に警戒し、地元民以外は習得が難しい方言を奨励した。

東北や南九州の方言がとりわけ難しいのは、その名残である。


「上警の手の者が?」

今四娘が話しているのは上警側の草ではないが、ここはまずとぼける。

「いや、コンサートを中座すると言う怪しい者が一名おり、才蔵が後を付けた。大御所の草だ」

「なんと!」

俺は白々しく叫ぶ。

先回のスミティの件もそうだが、それぞれの立場で言っていい事・悪い事があるので、注意が必要だ。


その者は先日の襲撃で捉え、記憶を一部抹消した上

「ナノ姫007」

をパーサに仕込まれているが、上警はその事は知らず、筋肉兵の無力化はマーリンの精神支配魔法の為と思っている。


「何を企んでいるのですか?」

その曲者の事はナノ姫007からの報告が師匠の元に上がって来ているはずだが、トンボくん2号の情報解析に忙しく、直近の情報は師匠も着手していなかった。何しろ

『おお!ここの団子は美味い』

とかの曲者の思考した内容がそのまま送られてくるので、こちらもデータが膨大なのだ。


「この者は、マルブの反政府組織に接近した様だ」

太公チャガムIV世は統治と戦功において首都マルブの市民には絶大な支持を得ており、さらに地方のオアシス都市では神の様に崇められているが(最近ではならず者が減ったのも太公のせいになっている)、なんと言っても聖狐天教徒に改宗した為に、他の宗教の関係者には評判が悪い。

ゴルモア人の始祖アンゴルモア大王への崇拝と祭祀は欠かさないので、支配階級のゴルモア人は余り気にしていない(先祖の地ゴルモア高原のゴルモア人はすでに醍醐教ジョウザ派に改宗した者が多い)のだが、被支配民族で他教徒の中では、不満は未だにくすぶっている。


あれだけ俺たちや聖狐天と縁があるペンジクのナランダーで3メタルのドームコンサートが出来なかったのは、地方でキャーリー派と聖狐天教徒との対立が起こり、都のジャルディンII世への反対勢力(元奴隷商人や既得権を失った貴族)がそれを利用して地方で暴動が起こった為だが、タリフ劇団の

「3メタル物語」

をキャーリー系の会社の冠スポンサーにすることで、比較的あっさりと沈静化した。

俺たちは随分苦労したが、まあ言ってみればその程度の事でも、国王としては

「遠方からの客人に迷惑がかかってはならない」

と思い、開催を断念したのだ。


だが今回は地方ではなく、マルブ市街で暴動が起きるケースなので、より深刻なのだ。

太守が聖狐天教に改宗した時、聖狐天教をチャガマン国の国教にしようとしたが、聖狐天の御心を知り思いとどまった。その事が反太守派の反抗の意図を挫く事になり沈静化したが、強硬に国教化しなかった事により反政府組織が温存されたのも事実である。


「暴動を起こしてコンサートを潰そうと言うのでしょうか?」

「今やマルブの反政府勢力は以前の勢いはないはずだ。しかも彼らと結びついていたマルブの犯罪組織も壊滅したからな」

(本来犯罪組織は、政府側の役人に賄賂を贈ってお目こぼしを願うものだが、チャガムIV世の清廉な統治は、下部の役人にも収賄等の不正をやめる効果をもたらし、仕方なく犯罪組織は反政府側に近づいていた)


しかし、政府や上警でもなかなか尻尾を掴ませなかったギャング団が瞬滅したのは、皮肉な事に大御所の功績である。

レムリア中で政府への支持率が一挙に上がり、名君よと後世に称えられる治安の良さが実現したのだ。

これは精神操作と言う、各国で厳禁されていた魔法を大御所が使った為であるが、残り9400人程の筋肉兵が完全に無力化すれば、これは大きな怪我の功名というものだろう。


「では何を?」

「少数で政府に対し効果的な反抗とは?」

「テロですね?」

「いや同時多発テロだ」


もしコンサート開催時期にマルブの市街で同時多発テロが起きれば、太守はためらわずコンサートの中止を決定するだろう。

しかし太守自身は家族ぐるみで妖狐の里のコンサートに行っているので、中止にすればチケットを買った客や聖狐天教徒の間でも太守の支持率は激下がりだろう。


「同時と言っても、かの地の反政府勢力も弱体化し、おおよそ200人位と思われるがな」

「それならば同時多発と言う程の数の騒動は起こせないでしょう?」

レムリアにも一応爆弾はある。

だが威力は石造りの建物を爆破する程の威力はなく、少しでも威力を高める為に大型になるので、設置は秘密裏に、と言う訳にはいかない。前世での、ダイナマイトから始まる高性能爆弾の様に小型の時限爆弾を設置し

「赤、青、白どのコードを切るか」

なんていうサスペンスは起こらないのだ。


「なので最も効果的なのは自爆テロだが、マルブの反政府勢力にそこまで気合いの入った者はいない」

自爆テロは

「俺が死んで国を守る」

「俺が死ねば家族が貧困から救われる」

「俺は信仰する神の為に死ぬので、死んだら天国に行ける」

と言う信念で、自分の命と引き換えにテロを行う。

しかしマルブの反政府勢力は既得権益を守りたい有力者が多く、これだけ平民層の太守への支持が厚いと、人が集まらない。頼みの兵隊=犯罪組織も、いなくなってしまった。


「と言う事は、つまり?」

「命令に絶対服従する兵隊を供給します。とその草が持ちかけたら?」

つまり今回のミッションは

「コンサート前に現れる空間の穴を察知し、筋肉兵の収容場所を叩く!」

と言う事か。


しかも前回会議による推論では

「大御所アジト→マルブへの空間移動は複数可能」

なのだから、セイコβの感知能力が間に合うのか?

が鍵になる訳だ。

「上警側の警備責任者は?」

「私も斉天大聖殿も立ち会うが、基本的には羽鳥才蔵だ」


ならばまず才蔵に会わねばなるまい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ