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18-35.会議と密会

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


18-35.会議と密会


「あの、タケノコみたいに見えるヤツが、金羊毛の残機数を示していると?」

「終わり頃に減っとったんなら、タケノコ一本使きゃぁて空間に穴開けるんだないの?」

凄くわかりやすい解で、みんな絶対に飛びつく解なのだが、そもそもあんなわかりやすい場所に、なぜ"タケノコの山"があるのかわからない。

だいいちタケノコは山じゃなくて里だろ?

と、これはいいとして、そもそもあれはタケノコでいいのか?


皆が腕を組んで考えこんでいるとパーサが

「あれがなんだとかは小せやぁ問題だがね。要はあれが残機を示すなら、まんだ100回近く空間転移が出来るちゅう事なんだて」

「しかもあの山にはびっしりタケノコ?が生えていて、今迄使って来た分がごっそり抜けた後は無かったな」

サンダル大王はアトランティス難民脱出のため金羊毛を多用した。と伝えられる。

機関銃のマガジンみたいに、山全体が入れ替わるとか?

そうなると残機数と言うより残山数なのか?


「まあ全くあれは金羊毛とは無関係。とも言えますしね」

と師匠が言う。結構目の下にクマが出ている。

ここにきて、自らの体力を削り、俺とマーリンにあんな酷い拘束をしながら

「何も判りませんでした」

では、稀代の軍師ノヅリの面目が立たないのだろう。

「他に何かなければ、今回はこれでお開きとします」

師匠が力なく告げる。

「次回は?」

「何か新事実が分かり次第」


結界が解かれ、静かな夜の妖狐の里に戻る。

師匠と社長はトトムで自宅に帰った。

妖狐の里からトトムなら30分の距離である。

まだ四娘の憑依が解けていないエールが、俺に囁く。

「余り根を詰められるな。捜査は100の手がかりのうち1〜2しか生きぬものじゃ」

まあ俺はそれ程焦ってはいないが、師匠がこれ以上煮詰まると、どんな奇手に走るかわからない。

現状はまた大御所達が攻め込んで来ても、同じ様に迎え撃てばいいだけだ。

しかし敵はまた同じやり方をするだろうか?

「正攻法では無理」

と言う様な事をあの密偵は言っていたな。


「お人払いを」

突然男のつぶやく様な声が聞こえた。

「失礼します。上警からの緊急連絡の様だ」

ふいにエールが倒れ、オコが急いで介抱する。

「これ以上はガキどもの睡眠時間が足りなくなるので、帰るとしよう」

パピーズは伎芸天事務所の社員扱いなので、明日も片付けとマルブ公演のための旅支度の仕事がある。

マーリンが付き添ってくれれば安心だ。

俺たちも自分の家に戻る。

パーサはルーティンの夜間警備に向かった。


沐浴を済ませ、寝所に行くとオコがハーブティーを入れてくれた。

「茶葉は使ってないので眠れなくなったりはしないわよ。心が穏やかになるハーブを調合してある」

それはカモミールを中心にしたハーブティーで、確かに心の凝りがほぐれる様な気がした。

いつもはなかなか寝ずにひと暴れするステルも、まだ朦朧としているエールが一緒なので、おとなしくしている。

「今夜は念のため客間でエールに添い寝するわ」

とオコが言い、コンコンも付き添った。


部屋を出ようとするオコに耳打ちする。

「深夜に外出するかもしれない」

「そう…。明日は久しぶりに正式なペンジクカレーを作ろうかしら」

俺は皆の食事にカレーをよく作るが、サンディー直伝のペンジクカレーはスパイスが命なので、その都度必ず石の車輪のついた挽き臼でゴリゴリスパイスをすり潰し、マサラを調合する。いつもは挽いた状態の粉を瓶に入れて保管し料理に使うのだが、挽きたてはやはり全然違うし、スープや具材も一日かけた仕込みが必要だった。


「俺の全てはオコのものだよ。愛してる」

と言うと

「あたしも。でもそうは言っても男はねえ」

と信用がない。

仕事とは言え、深夜に美女(オコは顔を知らないが)と誰にも監視出来ない場所で密会。とか、妻にとっては理性は許せても感性的には無理なのだろう。

『頼んだわよスミティ』

『任せといてオコ、婿殿が破廉恥な行いをしたら、最もダイレクトに痛覚をパチンとやってあげる』

知らないうちに安全保障条約が締結されているらしかった。


一旦寝所に落ち着く。

ステルは俺を独占出来て、満足げに

「カレー、明日はカレー」

と寝言を言いながら俺の隣で丸まって眠りについた。


『ウラナ殿」

念話が聞こえる。

来たか。予想通りだな。

天幕の外に出ると、輪郭のはっきりしない人影が現れた。狐面を付けている。

『余り時間がないが、報告がある』

『わかった。では参ろう』

俺はあの浮遊神界を呼び出す。


今日の神界は

「秋の夕暮れ」

環境はどの様にでも変えられるのだが、基本的に四娘は白日の元に姿を晒すのを好まないので、このあたりの黄昏時が良い。

さっきの会議にちなみ、ススキの原をあしらった。

「ご足労申し訳ない」

「まあ急ぐと言うても茶を飲む時間くらいはあろう。くつろがれよ」

なぜか武家言葉で俺も答える。

まあ有り体に言えば、前回ちょっと接近し過ぎたかな?と、俺は固くなっているのだ。多分四娘も…。


ススキの原を一望出来る、四畳半畳敷の部屋。

要するに茶室で、シュンシュンと鉄釜の湯が沸く。

俺には茶道の心得はないが、前世で京都の大学に行く事になった時

「京都ならば、抹茶を頂く事もあろう」

と、姉が通っていたお茶の先生のところに行った事ならある。

結局足が痺れた思い出しかないし、京都でも一度もそう言う機会は無かった。


いや一度寮で年配の先輩(そう言う年齢で大学に入り直す人もいて、経済的事情で寮生が多い)が、九州に伝わる茶道の免許を持つ人で、お茶を立てて貰った事があった。

寮の自室で、湯沸かしポットの湯だったが、武道と一体の茶道とかで、片膝で立てる勇壮なお茶だった。


蝋燭の灯りの下、見よう見真似で茶を立て、前世での茶道の歴史を説明すると

「なるほど、毒殺されぬ様所作を作法化し、客の面前で亭主が茶を立てるのだな。合理的だ」

と安土桃山時代の世相を反映した茶道の成り立ちを、正確に言い当てた。

六娘以外のナンバーズには消化器官はないが、毒味役をする事がある関係上、味覚は人間より鋭敏である。

「苦味と渋みに旨味も含まれており、カフェインの覚醒効果も強い。これは砂糖を入れるレムリア風の茶より好ましいな」


「恐れ入ります。して、ご用とは?」

「草が、マルブで動き出した」


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