18-34.アジトのヒント
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
18-34.アジトのヒント
「こう言うのはどうかしら。往復は無理って」
社長がゆっくり言う。
「世界を回るとね。そう言う関所って結構多いのよ。国の都合で、入り口と出口が別。と言う」
今まで余り詳しく話していなかったが、俺たちがジョウザを出る時、昔のスケベなボンが隠し部屋に溜め込んだ各国の貨幣を、旅の資金にありがたく頂いた事があった。そしていざ使おうとすると、種々様々な種類があり、受け取って貰えない貨幣もあった。
街には大体両替商もあり、そう言う外国の貨幣を交換してくれるが、レートが腹立たしい程低い。
例えばタリフでペンジクの小銀貨を一枚交換すると、チャガマンの銅貨が50枚返ってくる(ディルハムとかデナリとかディナールとか各国の通貨単位は面倒なので説明を省く)。
為替手数料が半分かよ。と思う。
タリフは大街道のオアシスで、交易も盛んだ。当然ペンジクからの荷もペンジクに運ぶ荷も隊商は運んでおり、そう言う商人にペンジクの通貨で支払っても断られないのだから、もう少しレートが高くてもいいと思うのだが、この辺は両替商のいいなりになるしかないのだ。
いつの時代もこう言う両替商が手数料以上の金を貯めこみ、その金で金融業を営む様になって、それが国の経済を牛耳る銀行になるのだ。
それで社長が言っているのは、他国に行くと余り評価されない自国貨幣を持つ弱小国などが、旅人が入国する際に一定額以上の他国貨幣(特に共通性のあるチャガマンやバクロンの貨幣)を自国貨幣に両替する事を強要し、仕方なく旅人は滞在中に必要な滞在費分をその国の貨幣に両替する。滞在を終えた旅人が、出国専用ゲートから出るとき、その国の貨幣を外国貨幣に両替しようとしても出来ないので、仕方なく併設の免税店で特産物や土産物を買う。お釣りの小額貨幣は記念品にしかならない。
そう言う小額貨幣を腹立ちまぎれに国境の川に捨てていったりするので、貧しい子供が拾おうとして川に飛び込んで溺れたりする事もあるらしい。
何度もそう言う国を訪れた商人は、だから絶対沢山は両替しないのだが、額が多いと両替レートが大幅にお得になるので、初めての旅人はこの罠に嵌る。入口と出口で話が違うと騒がれてはまずいので、ゲートが全く違う町にあったりするらしい。
ワタリガラスを使う輸送と言う、軽量で高額な商品を扱う社長にとって、こう言う為替問題は最も神経を使う所だと言う。
「だからね。同じ方向に向けて金羊毛で空間の穴を開ける事は出来ても、逆方向に開ける事は出来ないんじゃないかな?と思ったわけ」
そして金羊毛が穴を維持できる時間には限度があり、多分30分位。
そう仮定するとステルの仮説も正しい気がするな。
そう言えばアトランティスの海底神殿で、一瞬にしてあの合理キー(仮)が乗り込んで来てパーサを倒し、カペラを回収したのも極めて短時間だった。俺まで殺して悠々と金羊毛で穴を開けて戻る時間は、奴には無かったのか。
「うん、それはかなり頷ける仮説じゃな。そう言う面倒くさい制約が古代の魔具にはあるもんじゃからな」
マーリンが同意し、恥じていたステルもちょっとホッとしていた。
「さてこの問題は新たな要素が出るまではこれ以上確認が出来ません。あとは場所の特定と、金羊毛の回収制限数について、考えられそうな事を話し合いましょう」
「とりあえず、ススキの件で大御所のアジトは南半球にあるのではないか?と言う事だったな」
「だけどヤクスチラン領内だとススキにはちょっと早いわよね」
「北の方とか、ほら世界の果ての宿屋に行こうとして、誤って踏み込んでしまう岬の方はどうかな?」
「南半球だからね。もっと暑くなるから、ススキは全然生えてないな」
「南半球の国って、他にはないのきゃ?」
この中では最もレムリアを旅する距離が多い社長がパーサの問いに答える。
「うーん…。小さな無人島は幾つかあるけど、アジトが作れるかなあ、水がなさそうだし」
とりあえず一万人の筋肉兵も収容するわけだから、ある程度の面積は必要だろう。
「ねえねえ、大ひょうげんってレムリアたいりくとつながってるの?」
ステルはいつも空を飛んで大氷原に入るのだが、自動的に記録の神殿に入ってしまい、そこから大氷原の上空に出るので、下界の事は知らなかった。レムリアと大氷原のつなぎ目は諸説あり、陸続きだ。とか海で隔てられている。とか言われているが、もし海があったとしても、それは極地なので凍りついているだろう。
空が飛べる獣や神族以外は記録の神殿を通る事が出来ないし、下界を通るルートは誰も通った者がいない。
「いっぺん行こうとおもったけど、ぜったいきろくのしんでんに入っちゃうんだよね〜」
「ステルはさ、いつもどこから記録の神殿に入るの?」
「そりゃナイラスから」
「ナイラスの南には何がある?」
漆黒大陸だ。
ナイラスで出会ったBNとニャメみたいな肌の黒い人たちが住んでいる。
彼らの村より更に南に進むと、人より獣の方が多くなり、人々は原始的な暮らしをしている。
レムリアの旅行家や冒険家が稀に行く事があるが、そこから更に南に進む者はいない。
そそり立つ壁の様な山脈に阻まれているからだ。
ある意味記録の神殿の神官は、この山脈と上空の神殿で、漆黒大陸を守っているとも言える。
彼がBNたちの神、オニャンコポンである事は、この理論を裏付けるものとも言えるな。
そうまでして守る何かが、漆黒大陸にはあるのか?
そうだとすると大御所たちのアジトがそこにあるのは、かなりマズイのではないだろうか?
「伝説では人間は漆黒大陸で生まれたそうだ。そして星から来た神に農業を教わったと」
星から来た神?宇宙生命体か?
バクロンでは農業を教えたのはスメル人だが、レムリア各地には、農業を教えてくれた他所から来た民族や神の伝説がある。
大御所のボスである、スミティ達と対立する宇宙生命体が、漆黒大陸にいるのか?
「そのお山の向こうには、何があるのかな?」
ステルがつぶやく。
超えられない山があるのは、初めての経験だったステルは興味津々だった。
「あるいてお山まで行けば、とびこえられるかな?」
だが今はその長い旅をしている時間がない。
コンサートツアーが終わったら行ってみるか。
「この話もここで先には進めませんので、最後の話題に行きます」
「さっきノヅリさが言っとったタケノコの山だけんど」
パーサが言う。
「タケノコが一本消えるの、いつ頃だの?」
「いつって…。ああトンボくん2号が撮った画像では、一番終わりのあたりかと」




