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18-30.祭りの後

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


18-30.祭りの後


「ウラナαβ」

「はい」

「空間の穴の持続時間はどうだった?」

「30分丁度。ただし敵側に躊躇があり、早めに閉じられたかもしれません」

「なぜそう思う?」

「何度か穴の向こうから、何者かが覗く顔が見えました」

と言う事は、もし500人の筋肉兵があんなに簡単に捕まっていなければ、第二陣が突入しようと待機していたかもしれない。という事か。


「確かに初戦にしては、500人は少ないな。少なくとも2000人は送り込んでくると思ったけどな」

「ししょう、どうして?」

ステルが首をひねる。

「コンサートは5回。兵の総数は1万。と言うただの単純な割り算さ。今回でわかったけど、客がぎっしりのドーム内を制圧しようとすれば、最低それ位は必要だろう。パニックになって逃げ惑う客ばかりではない。『3メタルを守れ!』てんで、素手でも何でも掴みかかる群衆が2-3万。ちょっとした集団リンチになる」

筋肉兵は死を恐れず勇敢に戦うが、乱戦では自分で戦闘パターンを作り出す事が出来ず、単調になる。

普通の兵隊は死にたくないので、考えながら戦うが、筋肉兵は命令された事しか出来ない。


「コンサートがぶち壊されたら逆上する因業爺もいるしね」

「コンサートの来場者までは、敵も把握してないでしょうからね、オコさん」

「5回で決着を付けんと、筋肉兵の大半を次の作戦に温存しておくかも知れへんで」

「筋肉兵は魂は抜け殻だが、健康な成人男性だ。一万人もいたら、食費だけでもえらい事になる。美味い不味いの文句は言わんだろうが、カロリーだけは与えておかないとな」

普段は何食ってるんだろう?と思って、ちょっとゾッとした。


「一回の行動で2000人使うとして、始動から撤収までに2時間は必要だろうか?」

「いや半分でいいよ。彼らは撤収しない」

最初から使い捨てか。

「で、今回の筋肉兵の中に、レイラの村の者はいたの?」

オコの問いにパーサが答える。

「おらせんかった。半分がニャアラス、残りが大街道(でゃぁきゃぁどう)あたりのワルだったで」


後で上警の聴取報告を見せて貰ったが、彼らは根無し草で家族などいないか、いても大御所の人狩り隊に瞬殺されるのを洗脳の直前に見ており、故郷に帰る気は無い様だった。

「これって、地味な嫌がらせだよね」

計算が早い社長が600人分の食費を弾きだす。

確かに、今は教会有志(いわゆる婦人会だね)による炊き出しで養っているが、聖狐天教会には余り金がない。

俺たちで食材を提供して自炊させ、仕事も見つけてやらないと。


中国史での戦記では、よく敵国に

「難民を送り付ける」

と言う戦術が出てくる。

戦で家を失った難民が10万人いればそれだけ敵国の国力が落ち、兵士への補給が危なくなるのだ。

確かに嫌がらせだが、実に効果的だ。しかも相手は我々が洗脳を解き、善人化出来るなどとは知らないはずだから、結局筋肉兵は抹殺されるしかない。クリーンなイメージの聖狐天や人代(一応そう思いたい)にとって、一万の敵兵虐殺、と言うのはマイナスイメージだろう。もし洗脳が解けても、そこには一万人の悪党がいるわけだし。


「捕まった筋肉兵の末路については、事が終わるまで秘匿しておいた方がいいな」

そうなると、俺が引き取るしかないな。

爺さん達はすっかり馴染み始め、今回は息子に会えたラッキーな人も数人いたので、お祭り騒ぎになっていた。

「100+500、混ぜちゃって平気かな?」

「後から(ひゃあ)った若い衆も、とびきりの善人になってまったで、年寄り敬っとるがね」


とりあえず俺の持ってる空っぽの浮遊神界の一つに、森林を発生させ、開拓させてみた。

狩れる動物も離し飼いにしたので、農業が上手く出来れば自活出来そうだ。その後どうするかは、今回の件が片付いてから考えよう。


3メタルはファーストコンサートの成功に高揚していた。

だが妖狐の里をウロウロされるとファンが帰らないので、ステルが一旦大氷原に送った。

ファンもなんかここにいる間に仲良くなったり、中には付き合い始めたカップルも生まれて、帰らずに居残る気配が濃厚だった。

それでも1/3程はいそいそとマルブに急ぐ。

次のチケットも用意しているのだろう。

ガチファンと言う奴だな。


残りは追い出す訳にもいかず、流石に遠い妖狐の里まではるばる来る様なファンは、有名な

「妖狐の里女子の優秀男子一本釣り」

にも殆ど耐え3メタルに操を立てて、しぶとく残っていたが、翌週例の聖狐天ガチオタク勢の礼拝出席の頃には、殆ど姿を消していた。

何しろ礼拝に参加した者達が、血相を変えて故郷に戻って行ったからだ(聖狐天のホログラムに"それぞれ故郷で頑張ってください"と言われたので)。

そう言う訳で急に里心がついたのか、3メタルファンも姿を消していき、妖狐の里は落ち着きを取り戻した。


「さて、次はよろしくお願いします」

ゆっくり滞在していたチャガム太守一行も、いよいよ帰る事になった。

都合三週間の滞在と言う、一国を預かる者としてアルマジロ、いやあるまじき長期休暇だったが、留守を預かる宰相達の努力でクーデタも内乱も起きず、無事にマルブに帰る事が出来る。


「コンサートだけでなく、3回も本山の礼拝に参加出来て、大変嬉しく思います」

太守は俺の手を握ってブンブン振る。奥方も子供達も名残り惜しそうだ。

年代の近い(マナ)と仲良しになった太守の娘ディアボラも、抱き合って別れを惜しんでいる。この二人はのちにバクロンで、片やフサイ国王の皇太子妃として、片や社交界の花形"マダム・マナ"として再会するのであるが、それはまた別のお話である。


大御所筋肉兵残存数:9400人(94%)。

※第18部の主な登場人物

◯旅の仲間(ビッグセブン+α)

メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目なまもなく18歳(僕)と結構浮気症な66歳(俺)が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者(イノベーター)"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表(略して人代)"を押し付けられる。

聖狐天の父となる。朱雀国ガルーダ元帥となる。

オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。

コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。

ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。

パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスと美しい牝馬に変身出来る。

今後は小説家になるらしい。

ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの夫。

コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの妻。

八咫…師匠と社長の息子。瑞西学院在学中。

"僕"…"俺"の中に共存する肉体の本来の持ち主。スミティと共にウラナに様々な助言をする。

○聖狐天神界

聖狐天…オコを崇める人々の信仰が造り出した神をオコの分魂とメグルの造った依代(フィギュア)で具現化した新しい神。ウラナ夫妻の娘。

シャミラム…聖狐天四天王の一人。元北風の巫女。

サンコン…聖狐天四天王の一人。オコの先々先代の鼎尾妖狐。

二娘…聖狐天四天王の一人。ナンバーズ一の武人。

メルファ…聖狐天四天王の一人。元暴風の魔女メル=ハバ。

○ナンバーズ(参考資料)

一娘…ナンバーズの統括。シバヤンの宮宰。

五〜七娘の母。

二娘…武人。聖狐天に仕える。八娘の母。

三娘…シバヤン宮廷の家事一般を取り仕切る。完全なお掃除をする侍女人形。

四娘…隠密活動に特化。上警で働く侍女人形。

五娘…キャーリーの親友。足が速い。

六娘…唯一人間と同じ消化器官を持つ。記録の神殿で修行中。

七娘…背が高い。宇宙での活動に特化。

八娘…パーサ。クローン分裂したもう一人の八娘のパー子は、人間のパナとなりバクロン元第5王子にして元国王アルディンの妻。

○その他の神・人

アドミン…管理者。スミティを派遣する。

スミティ…アドミンに派遣されたエージェント。メグルの脳内で、メグルの宿主意識の少年と暮らし、メグルに助言する。

マーリン…古代の魔術師。元人類の代表。因業爺。超古代の英雄神イーオンの転生。

ゴンドワナでは白いフクロウを依代とする。

レナルド・ダンチビ…妖狐の里の天才工房長。

アルディン…元バクロンの第5王子で国王。パナの夫。今は種屋の修行中。

ジャルディンII世…旧名サート。ペンジク王。

シュニア…サートの妻。ペンジク王妃にして宰相。元ウル・オートマタ。

サード…ジャルディンII世の息子。後のジャルディンIII世。

パドマ…サードの妹。

初代妖狐…九尾妖狐。初代ボンに仕える。

戦狐…妖狐の一人。ジョウザを守った英雄。

羽鳥才蔵…異賀忍者。現在は上警勤務。

○コンサートツアー関係者

伎芸天…伎芸天事務所代表。今回のコンサートツアーを仕切る。

チャガムIV世…チャガマン国太守。聖狐天教徒。

ボーノ…チャガムIV世の長男。音楽家。

フォカッチャ…チャガムIV世の次男。後に冒険家。

シオ・ラメン…ナイラスの財務大臣。

アポル…バクロンの元第二王子。バクロンでのコンサートツアー責任者。

ジェライス…アポルの妻。アポルを覚醒させる凄い女性。スメル人の末裔らしい。本名はランジェラ・(タマ)

団長(オーショー)…ギョウザ歌劇団主宰。

ベンガニー…元ジョウザの侍女。大ベストセラー作家。今回はコンサートツアーギョウザ公演のプロデュースと新しい"3メタル物語"の脚本を担当。

アンジェロ・三毛…ギョウザ歌劇団お抱え絵師。ジェライスの父。

猪悟能…西遊記の猪八戒。現在は伎芸天事務所に就職し、舞台監督として活躍している。

沙悟浄…天竺から戻った後精神を病み、引きこもっていたが、現在は伎芸天事務所で警備主任。

フィリッポス・フリューゲル…フリューゲル家現頭首の叔父。大発明家。録音の実と量産技術を発明する。

デンスケ…フィリッポスが飼っているオウムの一種の妖夢(ヨウム)。聞いた音を完全に録音出来、録音の実を排泄する。

○神々

ダガムリアル…古代神の一人。滅亡したドワーフの祖先神で工芸の神。キャーリーと結婚。

シバヤン…ペンジクの有力神。破壊と創生神。

パトゥニー…シバヤンの妻。慈母の女神。

キャーリー…シバヤンとパトゥニーの娘。ダガムリアルの妻。漆黒の女神。

オニャンコポン…BN達が信仰する漆黒大陸の神。記録の神殿の神官。

○敵

大御所…蓬莱を脱出した元東国国司。

合理キー(仮)…パーサの首を捻じ切った謎の怪力マン。

カペラ…アドミンと同等の宇宙生命体。

ハマジ…憑依されて殺された筋肉兵。

◯大氷原

イグルー…村長の娘。

パピーズ…レムリアとゴンドワナを行き来出来る4人の犬人の子(ウラナ、オコ、ノヅリ、セイコのαと4匹の橇犬の仔犬(同β)。

3メタル…初代妖狐の娘白銀丸、初代妖狐の義妹の黄金丸、赤銅丸。

○妖狐の里

リュナ…オコの上の妹。商才に長ける。

(マナ)…オコの末妹。美少女でアイドルマナマナとして活動中。

御供…オコの弟。二娘とメルファに師事し修行中。

ヒデノリ…マナマナ親衛隊長のオタク。リュナを補佐してコンサートツアー責任者になる。

○ルディン村

レイラ…救出された山賊の村の娘。四娘を視認出来る。見鬼。

エール…レイラの姉。凄腕の結界師。

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