18-29.初めての本格敵襲
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
18-29.初めての本格敵襲
昨夜のは、相手にとってもこちらの警備体制を確認する為の偵察行動に過ぎない。
『相手は俺の能力には気づいていないのだろうか?』
『バクロンでの科学者の襲来の時も、一度アルディン皇太子暗殺を防ぐ為、貴方はチートを使って、パナを身がわりに皇太子を救ったのですね。いつも甘ちゃんな貴方にしては冷静な判断でした』
『いや、飛んで来たのが軽量なミスリル製ナイフだったし、ナンバーズの頭蓋は人間よりはるかに硬いからね』
『そうです。そう言う、より価値の劣る者を犠牲にする判断は、論理的です』
『論理的と言うか…。これはアルディンを救う為にパナ自身が言い出した事だ』
『なぜそんな無駄な思考が必要なのか?理解に苦しみます。パーサもそうですが、シバヤンの作る自動人形は欠陥品ですね』
シバヤンにとってはむしろ、人間らしい感情を持つ自動人形こそが、自らの研究の理想形だったのだが…。
この点はスミティがどうしても理解できないレムリア世界の謎だった。
自分だって結構"僕"とキャッキャウフフしてるくせに。
『理解できないからこそ、シミュレーションがいい研究課題になります』
お前、それを"僕"に言うなよ。グレるぞ。
『話が逸れました。大東の科学者は、論理的な思考が出来る人達だったのでしょう?』
『そうだな。しかし論理だけで話を進め、空間転移を上級神だけが独占しているレムリアは論理的でない。と断じたんだ』
『まあレムリアと言う神のやり方については、アドミンも疑問を抱いている様で、それで私が派遣されたと言う面もありますが』
なるほど。
『なぜ彼らが貴方のチートを理解できず、再度王宮を襲って一網打尽に捕えられたか?と言えば、それはレムリア人が基本三次元人だからです』
だから俺が時間を巻き戻せる。と言う事に考えが及ばない。というのか。
『じゃあ俺は四次元人なの?』
『先っぽだけね』
どこの先っぽだよ。と思ったが、これは比喩。と言う事でいいんだろうな。
『じゃあ大御所達も気づかない、と』
『余り失敗が重なれば、裏がある。と勘ぐるでしょうが、答えは見つからないでしょう。襲撃を繰り返し、一万の筋肉兵を全て失って撤退すれば、大御所の勝利となります』
『勝利?敗北じゃないの?』
『その間に我々が大御所のアジトを突き止め、大御所と金羊毛を確保できれば、我々の一応の勝利です』
『一応の?』
『カペラにまで至る確率は0.02%です』
なるほど。
『合理キー(仮)は?」
『34%』
『低いな』
『カペラが大御所をまだ利用価値価値あり。と判断した場合、合理キー(仮)が救援にくるでしょう』
つまり大御所の大物度が34%。と言う事か。
それからコンサートが始まってからは、全ては予定通りだった。
もちろんコンサートも大成功で、伎芸天プレゼンツの天狐界曼荼羅(子狐パピーズもちゃっかり出演していた)を背負って登場した時から、観客は熱狂しっぱなしだった。一番目立ってるサイリウムを何本もお手玉の様に振っている老人の事は見ない様にしていたが。
曲目は海賊版の発売順に進み、これから30分の休憩を挟んで、3メタルのMCを皮切りにして新曲に入って行く。
新曲アルバムの予約もほぼ100%(入場者比)になっているそうだ。
『来たよ』
セイコαの念話。
『ケース37。中央通路です』
ノヅリαの指示が飛ぶ。
舞台上では新曲披露前のMC(ファンとの交歓シーンの様な感じ)で、白銀丸が
「と言う訳で、レムリアは今大妖魔の手先、大御所の脅威にさらされています。皆さんも力を合わせて、大御所の野望を打ち砕きましょう!」
コンサート台本にない台詞を吐く。
観衆は、コンサート内の茶番だと思い込み、ノリノリで声を上げる。ベンガニーの忍者小説はかなりの人気の様で、悪の親玉、大御所の名はしっかり認知されていた。
「「「「「「「大御所倒すべし!」」」」」」」
「「「「「「「妖魔しばくべし!」」」」」」」
忍者装束姿の才蔵が現れ、横一列の筋肉兵に縄を投げる。縄は綺麗に蛇のように五百人程の筋肉兵全ての体を巡り、縛り上げる。抜刀した筋肉兵が縄を切ろうとするより早く、パーサが通電し、全員を失神させる。
客席に感電被害が及ばない様に縄に通電したのである。
そのままステル達が兵を会場外に運びだす。そこでナノ姫達の仕事が行われるのだ。
場内は大喝采で
「「「「「「「正義が勝った!」」」」」」」
「「「「「「「忍者が勝った!」」」」」」」
と大喜び。
そして舞台が明るくなって、第2部の新曲ステージが始まった。
ここで問いたい。
俺はどこで、あのタイムリバースを使ったのだろうか?
3メタルのMC台本では
「今日は天気が良くて良かったですね」
とか、
「もう妖狐の里の名所は見学されましたか?」
とかの当たり障りのない内容だった。
そこへ敵の襲来(ケース37)。
会場は混乱し、パニックに。
会場は500の兵に制圧される。
と言うのが1回目。
俺がそこでチートを使い(オコにハリセンで殴られ)、時間を休憩後のMC開始まで戻す。
白銀丸のMCが大御所の陰謀について、にすり替わる。
こうして奴らの襲来は、コンサート中の茶番劇と思われて、誰もパニックにならずに全てを受け入れて楽しんだのだ。
新曲が始まってみんな大盛り上がりの中、トイレに行く様な感じで自然に席を離れる者が居る。
ここまで熱心なファンなら我慢するだろ常考。
出口の所でパーサが、当たり前の様に当て身を食らわせ失神させ、いかにも気分が悪くなった人を介抱する様に
「お客様、でぁじょうぶきゃ?」
と確認する。
今度は逃亡はさせない。
その際パーサの指から曲者の脳にナノ姫007が打ち込まれている。
ナノ姫007の脳内操作で、捕まった記憶だけ消去され、曲者が覚醒した時には、パーサは姿を消していた。
『やはり500人でも一瞬か。初動まで1分かかっておらぬ。恐ろしく訓練された護衛だ。これは正攻法では無理だな』
と言う念波を発しながら、曲者は闇に消えた。
もう一つ成果があった。空間の穴が空いた時、オコαの元に彼女の
「トンボくん2号」
が戻って来たのだ。
これから師匠が吐きそうになりながら、360度画像を解析する事だろう。




