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18-28.情報

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


18-28.情報


夜があけ、グッズを求める客たちが、一斉に浮遊神界を出て販売ブースにダッシュする。

「商品はお一人様一点まで、商品には全て認識魔方陣が施されているので、転売はすぐ特定され罰せられます」

よくできたシステムだな。前世でもこれがあれば良かったのに。

「一列に並んでお待ちください。8時より販売開始ですので、整理券をお配りします」

良くあるコンサートの光景だ。


前にも言ったが、妖狐の里公演にはアリーナ席がなく全席指定のため、先を争って入場する必要はない。

だがグッズを購入し終えた客たちは、そのまま入場待ち列に並び始める。

そう言う心境なのだろう。一刻も早く自分の席についてコンサートが始まる前の雰囲気を楽しみたい。気持ちはわかるぞ。

まあどうせコンサートが始まれば、総立ちになってしまうのだが。

ちなみにここのシートは、俺が土魔法で作ったので、椅子の上に立つと崩れてしまう。


「警備配置完了」

沙悟浄さんが敬礼をする。

天界の役人だった人だが、人間関係に悩み鬱になって引きこもり、八戒さんの紹介で伎芸天事務所で働いている。

腰の低い、良い方だ。

実に溌剌としているな。転職して良かった。


「しかし、昨日の今日でしばらく襲来はないやろ」

コンコンが気楽に言うが、俺は次の襲来は今夜。コンサート中のドーム。と想定していた。

それは、深夜に四娘からの念話が入ったからだ。

『怪しい者を捕えたが、服毒自殺された』

捕えたのは、見鬼レイラと指導中の才蔵だったと言う。

『レイラが発見し、才蔵と二人で気配を消して見守っていると、何やら遠隔通話をしている様子だったと言う。それは蓬莱忍者異我流の使う忍話法で、余人には聞こえないが勿論才蔵には判った。"呆気なく全員捕えられたわ。やはり奴らを制圧するのは難しい。行事の妨害に専念するがよかろう"と聞こえたそうだ』


『つまり蓬莱忍者が大御所に味方していると?』

『そう言う事になるな。忍者は請負業(アウトソーシング)だから、誰に仕えるのもあり得るが、慈班宮消失以来、異我、紅賀始め忍法各流派に"大御所残党への合力まかりならぬ"と言う達しがされているようだ。才蔵は怪しんで蓬莱に問い合わせを入れているが、まさか現役の蓬莱忍者に、この達しを破る度胸のある者など居ないのではないか?と言っておった』


『それでその者は?』

『才蔵が急襲し、拘束したまでは良かったが、突然痙攣して死んだと言う。自分で毒でも盛ったか?』

『はて、会話の内容だと大物感満点だが、あっけなかったな』

『確かに。この者はその後マルブに向かうつもりだったのだろう。作戦の現地側指導者かもしれぬ』

『死んだ者の風体は?やはり顔を焼いて死んだか?』

『いや、死体は綺麗なものだ。才蔵はパーサに預けたと言っている』


念話が切れてから、俺は急遽現場に行った。

パーサが死体番をしていた。

「四娘様からの連絡あっただかね?」

「うん。これがその死体…。なんだこれは?」

「そうでしょう。でら若いでかんわ」

それは若者、と言うより少年だった。

「蓬莱人には見えないが…」

俺は思い立って、老人達が野営しているキャンプに若者の遺体を運んだ。

「この者を知っている者はいないか?」

「ああっ!ハマジ〜っつ!」

一人の老人が遺体に取りすがる。


「ハマジと言うのか?」

「わしの孫じゃ。息子夫婦が海で死んでから、わしが親代わりで育てて来た」

「ハマジは忍者ではないのか?」

「忍者?そんな物語の中の人間じゃねえ。ハマジはわしが立派なアトランティス海賊に育てるつもりだった」

アトランティス島嶼には、海賊行為を働く村がある。と聞いている。そこも大御所に襲われたのか。

(※ハマジは妖狐の里に埋葬され、身寄りを全て失った老人は、そのまま妖狐の里で墓守りをしたという)


『ハマジは無関係。とすれば』

『変わり身の術でしょうね』

いやスミティ、そんなベンガニー忍者小説の様に言わんでも。

『平たく言えば、筋肉兵のハマジに憑依して空間転移でやってきたと思われます。今回見つからなければそのままタリフ公演まで、襲撃の指揮を取るつもりだったのでしょう』

『もしかして大御所か?』

『いえ、大御所の部下で、忍者の。死霊でしょう』


『そいつは、ハマジが死んでどうなった?』

『死霊だけでは現世に存在できません。大御所の力なくば、新たに憑依する事も困難でしょう。大御所のアジトに戻ったと思われます』

死に戻り。と言うのとはちょっと違うが、霊ならば空間移動は必要ないからな。

『今後奴はまた来るだろうか?』

『意志のない筋肉兵には必ず指揮官が必要です。次回の空間移動で、別の筋肉兵に憑依して同行するでしょう』


『なら次回こそ捕まえる』

『また死なれるだけです。しかし次はわざと逃し、我らの手駒にすれば』

『手駒?』

『ナノ姫007で』

ナノ姫の派生種ナノ姫007は、相手の脳に作用しない。ひたすら思考内容を我々に送って来る。そのため相手は気づかないまま、こちらの間諜(スパイ)の役目を果たすのだと言う。


『それで次回はいつだと思う?』

『ウラナさんならどうしますか?』

『奴は大御所の腹心で、多分生前は忍者流派の大物。気位が高くて、そう言う点は大御所に似ている。もし俺がそう言う奴なら、思いがけず後輩の忍者に捕まると言う失態を犯した事は、大御所の手前、大変恥じるだろう。そしてすぐにでも挽回を。と焦るのではないか?』

『そうですね。それは大御所も同じでしょう。またしても煮え湯を飲まされた気分でしょうね』

『つまり、二回目もここ。時はコンサート中』

『可能性は76%と言う所です』


そう言う訳で俺たちは今夜奴らが来る事を知っていた。

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