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18-20.父娘

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


18-20.父娘


ジェライス、本名は

「ランジェラ・(タマ)

らしいのだが、ややこしいので今後もジェライスと呼ぶ事にしたい。

彼女はアポルとコミューンに連絡し、しばらく父の仕事を手伝う事にした。

俄然やる気を出した三毛がいつもの様に初代妖狐の肉声をBGMとして、流し始めると

「そんな辛気臭い婆さんの声聞いてないで、これ聞きなさいこれ!」

と例の3メタル海賊版アルバムをガンガンかける。


個人で聴くにはムスビの実や録音の実の音量で充分なのだが(スマホ単体の音量のイメージ)、重低音を含む3メタルの音楽が登場してから、より大きな音で聞くために、様々な工夫がなされている。

パラゴンなどは、パイプオルガンの様な多数の共鳴筒と、拡声魔法を封じた魔具を仕込んだ超高級ハイファイシステムだが、そんなもの買うお金も置く場所もない若者達は、木材を組み合わせて長大なラッパの様な共鳴筒の仕組みを作り、そんな小さなガレージメーカーの中には大金持ちになった者もいる。


「どう?自慢の最新型共鳴筒よ。Dr.Nagaokaの最新型フロントロードホーン組立キットなんだから」

コミューンに手紙を届けて貰うついでに、ステルに持って来て貰った箪笥くらいの大きさの、恐竜の様な奇妙な形の木製造形物をジェライスは愛おしそうに撫でる。

録音の実はまだステレオ録音が出来ないので、セットは一台だ。

アルバムケースから慎重に実を選び、恐竜の口にセットすると、実が回り始める。その刹那

「ドゴ〜〜〜ン!」

もの凄い轟音が響き、三毛が腰を抜かす。

「なんだなんだ!ペンジク空軍の空襲か?」


「これが3メタルよ!お父さん、自分が参加するイベントの主役の音楽、聞いてなかったの?」

なんかすっかり中年サラリーマンの父親と、今風のJKの会話を聞いている様だ。

俺たちが見ていても、これはジェライスが正しい。

昔の映画館の看板は、洋画だと海外から宣材として送られて来るポスター等を参考に、専属看板職人が描いていたものだが、いくら日本での封切り(字幕版、吹き替え版)が、本国での公開より一年以上遅れるとはいえ、看板職人さんが英語の映画を実際に見て書く。などと言う事はなかった。


あくまでも職人さんは画家ではないので、オリジナルのポスターをコピーするのが仕事なのだ。

ビルの屋上に巨大な看板を描く動画を見た事があるが、スライドフィルムを直接白地の看板に映写して、それをなぞって直接描いていてびっくりした。

描こうと思う部分に近づくと、自分が影になって絵が消えるので、長い筆を使って描くのだろう。

熟練の技だな。


「まあもう少し聞いてみなさいって」

ジェライスは楽しそうだ。

アポルといる時も楽しそうだけど、それはアポルを導く、いわば母親みたいな存在なので、余り馬鹿な事は出来ない。アポルはジェライスを崇拝しているので、ジェライスが感情的に泣く所も大笑いする所も見た事が無かった。今までのジェライスの人生に、家族と呼べる存在が無かったために、いつも仮面(比喩)を被っていて、それが神秘的で人を惹きつけるので、素顔をさらす事が無かった。


だが何十年(何百年?)振りに再会した父の前では、3歳児に戻ったのだろう。

待てよ?スメル人が長命で、成人するまでも長い時間がかかるなら、3歳児に見えたジェライスは、生き別れになるまで、すでに何十年か生きていたのかも知れないな。


「分かった分かった。いい曲だと思うし、歌声も素晴らしい。だがちょっと音量を下げてくれないかな?」

これは俺が高校生の時、姉に言われたのと同じ言葉だな。家のリビングにあったステレオで、ピンクフロイドの

「原子心母」

をフルボリュームで、掛けていた時だ。

「えー?大きい音の方がお腹に来るのに」

ジェライスは口を尖らす。

会えなかった何十年(何百年?)分を取り戻す様に甘えた声で。

いっそアポルやコミューンの皆の前の神秘的でかっこいい"ジェライス"と、

父に甘える"珠"を呼称で使いわけた方が良いだろうか?

いやそれは紛らわしいか。


ようやく妥協が成立し、ほどほどの大音量で3メタルを聞きながら作業に入ると、これがなかなか作業BGMとして合う事が三毛にも分かった。

なにしろ、一枚目の艶っぽい誘惑シーン以外、

港湾都市破壊

黄金丸戦死

赤銅丸戦死

と、殺伐とした場面ばかりなのだ。

3メタルの曲には、しっとりしたバラードもあるので、それは一枚目を描く時にかけ、後の3枚は激しいメタル音楽をかけた。


ジェライスは筆を洗ったり、三毛が必要とする色のペンキを差し出したり、助手としてよく働いたが、背景を描かせると驚くほどの才能がある事が分かった。

「流石ギルド所属の絵師様は違うなあ」

「父さんには全然敵わないわよ」

急速に近づく二人。

アポル危し!忘れられてるゾ!


結局三毛は、一枚目をほぼジェライスに任せて、残りの殺伐とした軍記モノを一挙に片付けた。

「うん、4枚とも良い出来だ。一枚目は魂が抜かれるほどエロチックだし、後の3枚はその場にいて『危ない!逃げろ!』と叫びたくなる様な臨場感だ」


後はパーサが

「7つの威力の一、高解像度カメラ」

で撮影するだけ。

撮影用のライトや反射板などないので、晴天の日に外で地面に絵を直置きして、パーサが影が出ない様に少し上から撮影する。

この方法は通販サイトなどで買いたくなる写真を撮る裏技として知られている。

パーサは空中をホバリングするステルに足を持って貰って、逆さ吊りになりながら撮影していた。


三毛とジェライスが満足する画像が撮れたので、コンコンと二人で、急ぎステルに乗って初代妖狐の家に見せに行った。三毛が

「是非妖狐様に会わせて下さい」

と言ったが、動機が不純っぽいので、同行はお断わりした。

まあ今度サンコンに会わせてあげよう。彼女は生前初代様に生き写し、と言われた鼎尾銀狐だからな。


パーサはビデオレターを撮って来てくれた。

俺も同行するつもりだったが、オコに

「あんたは戦狐様に会いたいだけでしょ!」

と提案を蹴り飛ばされた(比喩でなく)。


「わあ妾はこんなに色っぽかったかのう?」

から始まり

「これは壊しすぎじゃ。妾これほどには乱暴に…。まあやったかのう」

そして黄金丸と赤銅丸の最期には涙を流し

「ツアーが終わったら、久々に4人で会いたいのう」

と言っていた(以上パーサの7つの威力の一"右目で投影、左目で撮影"でお送りしました)。


絵の仕上がりには初代様は満足で、ギョウザ歌劇団の

「3メタル物語(原作・脚本ベンガニー)」

の最重要パーツが埋まった事になる。

脚本が完成稿になった時点で、パーサがデンスケ鳥を借りて行き、初代様のナレーションを録音してくる算段だ。


「じゃあ妖狐の里に戻って、もう一つの宿題を片付けるか」



※第18部の主な登場人物

◯旅の仲間(ビッグセブン+α)

メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目なまもなく18歳(僕)と結構浮気症な66歳(俺)が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者(イノベーター)"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表(略して人代)"を押し付けられる。

聖狐天の父となる。朱雀国ガルーダ元帥となる。

オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。

コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。

ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。

パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスと美しい牝馬に変身出来る。

今後は小説家になるらしい。

ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの夫。

コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの妻。

八咫…師匠と社長の息子。瑞西学院在学中。

"僕"…"俺"の中に共存する肉体の本来の持ち主。スミティと共にウラナに様々な助言をする。

○聖狐天神界

聖狐天…オコを崇める人々の信仰が造り出した神をオコの分魂とメグルの造った依代(フィギュア)で具現化した新しい神。ウラナ夫妻の娘。

シャミラム…聖狐天四天王の一人。元北風の巫女。

サンコン…聖狐天四天王の一人。オコの先々先代の鼎尾妖狐。

二娘…聖狐天四天王の一人。ナンバーズ一の武人。

メルファ…聖狐天四天王の一人。元暴風の魔女メル=ハバ。

○ナンバーズ(参考資料)

一娘…ナンバーズの統括。シバヤンの宮宰。

五〜七娘の母。

二娘…武人。聖狐天に仕える。八娘の母。

三娘…シバヤン宮廷の家事一般を取り仕切る。完全なお掃除をする侍女人形。

四娘…隠密活動に特化。上警で働く侍女人形。

五娘…キャーリーの親友。足が速い。

六娘…唯一人間と同じ消化器官を持つ。記録の神殿で修行中。

七娘…背が高い。宇宙での活動に特化。

八娘…パーサ。クローン分裂したもう一人の八娘のパー子は、人間のパナとなりバクロン元第5王子にして元国王アルディンの妻。

○その他の神・人

アドミン…管理者。スミティを派遣する。

スミティ…アドミンに派遣されたエージェント。メグルの脳内で、メグルの宿主意識の少年と暮らし、メグルに助言する。

マーリン…古代の魔術師。元人類の代表。因業爺。超古代の英雄神イーオンの転生。

ゴンドワナでは白いフクロウを依代とする。

レナルド・ダンチビ…妖狐の里の天才工房長。

アルディン…元バクロンの第5王子で国王。パナの夫。今は種屋の修行中。

ジャルディンII世…旧名サート。ペンジク王。

シュニア…サートの妻。ペンジク王妃にして宰相。元ウル・オートマタ。

サード…ジャルディンII世の息子。後のジャルディンIII世。

パドマ…サードの妹。

初代妖狐…九尾妖狐。初代ボンに仕える。

戦狐…妖狐の一人。ジョウザを守った英雄。

○コンサートツアー関係者

伎芸天…伎芸天事務所代表。今回のコンサートツアーを仕切る。

チャガムIV世…チャガマン国太守。聖狐天教徒。

ボーノ…チャガムIV世の長男。音楽家。

シオ・ラメン…ナイラスの財務大臣。

アポル…バクロンの元第二王子。バクロンでのコンサートツアー責任者。

ジェライス…アポルの妻。アポルを覚醒させる凄い女性。スメル人の末裔らしい。本名はランジェラ・(タマ)

団長(オーショー)…ギョウザ歌劇団主宰。

ベンガニー…元ジョウザの侍女。大ベストセラー作家。今回はコンサートツアーギョウザ公演のプロデュースと新しい"3メタル物語"の脚本を担当。

アンジェロ・三毛…ギョウザ歌劇団お抱え絵師。ジェライスの父。

猪悟能…西遊記の猪八戒。現在は伎芸天事務所に就職し、舞台監督として活躍している。

沙悟浄…天竺から戻った後精神を病み、引きこもっていたが、現在は伎芸天事務所で警備主任。

フィリッポス・フリューゲル…フリューゲル家現頭首の叔父。大発明家。録音の実と量産技術を発明する。

デンスケ…フィリッポスが飼っているオウムの一種の妖夢(ヨウム)。聞いた音を完全に録音出来、録音の実を排泄する。

○神々

ダガムリアル…古代神の一人。滅亡したドワーフの祖先神で工芸の神。キャーリーと結婚。

シバヤン…ペンジクの有力神。破壊と創生神。

パトゥニー…シバヤンの妻。慈母の女神。

キャーリー…シバヤンとパトゥニーの娘。ダガムリアルの妻。漆黒の女神。

オニャンコポン…BN達が信仰する漆黒大陸の神。記録の神殿の神官。

○敵

大御所…蓬莱を脱出した元東国国司。

合理キー(仮)…パーサの首を捻じ切った謎の怪力マン。

カペラ…アドミンと同等の宇宙生命体。

◯大氷原

イグルー…村長の娘。

パピーズ…レムリアとゴンドワナを行き来出来る4人の犬人の子(ウラナ、オコ、ノヅリ、セイコのαと4匹の橇犬の仔犬(同β)。

3メタル…初代妖狐の娘白銀丸、初代妖狐の義妹の黄金丸、赤銅丸。

○妖狐の里

リュナ…オコの上の妹。商才に長ける。

(マナ)…オコの末妹。美少女でアイドルマナマナとして活動中。

御供…オコの弟。二娘とメルファに師事し修行中。

ヒデノリ…マナマナ親衛隊長のオタク。リュナを補佐してコンサートツアー責任者になる。

○ルディン村

レイラ…救出された山賊の村の娘。四娘を視認出来る。

エール…レイラの姉。凄腕の結界師。

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