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18-19.アトリエでの再会

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


18-19.アトリエでの再会


物騒な事を言うジェライスだったが、気持ちは分かる。

しかし俺は三毛が雑踏で手を離してしまい、必死で探し回っても見つからず、その後魂が抜けてしまった様になった事を聞いている。

しかし今俺が言うより、本人に直接会った方がいい。


タリフに到着し、劇団のバックヤードにある三毛のアトリエに行くと、パーサが焦燥しきって戸口に座っていた。

「どうした。絵は完成したのか?」

「どうしたも靴下もにゃあがね。あの御仁は、気が乗らにゃあとテコでも動かせん」

事情を聞くと

「描いてるうちに『物語の全体を知らんとこれ以上描けん』とか言い出して、脚本読み初めたら泣き出ぇやて、もう何日も一筆も進ませんがね」

パーサは呆れた様に言う。

「何が三毛さんをそんなに動揺させたんだろ?」

と俺が言うと

「ばっかねえ。初代様と白銀丸の再会とか、いつまでも帰らない義姉を待つ黄金・赤銅とか、三毛さんの体験からしたら、共感してしまうところ満載でしょうが、ベンガニー先生の文章なのよ!」

朴念仁で相済みません。


「三毛さん、三毛さん?」

「ああ…人代様。確か妖狐の里には、初代妖狐様を祀った祠があるのですよね」

確かに例の源泉の中に、祠とそれを守る二体の狐石像(今は空き家)があり、潜水艇ツアーの目玉になっている。

「そこへ巡礼に行きます。二週間位で戻ってきますので…」

「妖狐の里なら、ステルに乗れば数時間で」

「いやそれでは駄目なんですよ。徒歩でなければ」


四国のお遍歴さんでも、車で巡るのでは御利益が弱いのだそうだ。

「同行二人」

と書いた笠を被り、お大師様と対話しながら歩く。

巡礼と言うのはそう言うものなんだろう。


「ソンナコトヲシテモ ナンノショクザイニモ ナラナイ」

黒いベールを掛けた女が、つぶやく様に言う。

「誰だ!俺の決心をクサすお前は?」

「ダレダッテカ?ソウデスワタシハ でぃあなノ ミコ」

ジェライスが前職の口調で言う。

「おお!ディアナ様の巫女なら神託が出来ますね?」

「シカリ」

「俺の娘は生きているのか?」

「アナタノ ムスメハ イキテイマス」

「本当ですか?今どこに?」

「イママサニ アナタノマエニ」

ジェライスがベールを脱いだ。

「タ…タマなのか〜っ!」

三毛が失神した。


すぐにパーサが救急キットを使う。

「ここ何日も寝取らせんでよ、少し眠らせとくで」

「今も神託が出来るんですか?」

師匠が学問的興味で聞いた。

「まさか。アタシの予知能力はアポルを受け入れた時に喪失したわ。さっきのは一芝居打っただけ。アタシ、本名はタマっていうらしいわね」

ディアナの巫女は未経験の処女。と言うのは常識だが、それはディアナがそう求めるからだ。と言う伝説がある。

「恋をしてディアナの元を去った恋人達を追跡する狩の女神」

と言う恐ろしい神話もあるのだ。


「三毛さんはずっと貴女を探していたのよ!」

オコが叫ぶ。

心ない噂話を聞いてから、ジェライスはずっと父親が自分を奴隷商人に売ったのでは?と思っていた。

「どうやら父は故意にあたしを売った訳ではないらしい。懐剣は再び封印するとしましょう」

オコは複雑な表情をしていた。

彼女の両親はすぐ後悔してオコを取り戻そうとしたが、一度は支度金を受け取ってしまったのだ。

「そうよ。貴女を失って、三毛さんの人生は完全に狂ったのよ。貴女を探すため、定住出来なくなって」

オコは自分の共感を120%込めてジェライスを説得にかかる。


「父と話してみる」

数時間後目を覚ました三毛は、ジェライスと涙の再会をした。

言葉は要らなかった。

三毛が目を覚ます前、アトリエの中に描きかけの絵(港湾都市を襲う大妖怪九尾妖狐)の下絵を見たジェライスは、黙って左隅のある部分を指差した。

逃げ惑う大群衆の中に、幼い女の子と必死に逃げる若い男の姿。その手はしっかりと娘の手を握っていた。

それを見てジェライスは全てを悟ったのだ。


「よく気がつきましたね」

「まあ私も前職は一応画家だから」

ディアナの神殿から逃げ出したジェライスは、神官の残党から執拗な追跡を受けたので定住出来ず、生きる糧を得るために神託、いや占い師も出来なかった。

「よく当たる女占い師」

の評判などは、すぐに広がるからである。


幸いジェライスの非凡な才能の中に描画の才能があり、神殿で素描の教育を受けていたので(本人は語らないが、神託と関わりがあるらしい。予知能力者の中にはあれこれメモ用紙に絵を描きながら、予知を進めるスタイルの人もいる)、似顔絵描きの旅芸人(奇しくも三毛と同じ!)をしながら相手の人生相談をしたりしているうちに、壁に飾る人物画や風景画の依頼も舞い込んできて、画家ギルドにも加盟した。


もしかして三毛が団長に拾われて劇団専属の絵師になって居なかったら、ギルドに加盟してジェライスの情報を得ていたかも知れない。

やがてジェライスを慕って、若い才能ある芸術家も集まり、いつの間にかコミューンが出来上がって行った。

「そこにアポルがパトロン志望者(下心丸出しの)として訪れたのよ」

アポルはジェライスにバチッと言われ、バクロン王家兄弟の共通の長所である

「自分を客観視して素直に反省出来る所」

が上手く作用して、とうとうアポルとジェライスは結ばれる事になった。


女子(おなご)芸術家のパトロンはんて、体目当てが多いと聞いてますえ、ジェライスはんは大丈夫やったんか?」

「そう言う時は懐剣で撃退。よねえ。まあ本当に使ったのは、アポルの時一回きりだったけど」

ディアナの巫女の護身用懐剣は神経を痺れさせ、容量が多いと一生体が麻痺する

「ツキヨタケ」

の毒が塗ってある。

これで脅すのは、評判が伝わって追っ手が来るので、ジェライスは何度か住処を変えねばならなかったから。


「アポルが突然飛びかかって来たので、思わず懐剣で刺してしまった。あの人は毒に強い体質だったけど、数週間苦しんだ。アポルは足元のサソリを殺そうとしただけだったのにね。後悔して看病してる間に、あの人の馬鹿な真っ直ぐさが気に入ってしまって…こうなってしまったのよ」


「その追っ手達は、もう大丈夫なんですか?今はコミューンに定住してるけど」

仕事柄裏世界の噂に詳しい社長が聞く。

「ああ、みんな死んだわよ」

「ジェライス姉ちゃんがやった?」

「そんな事しないわよ、ステルちゃん。みんな寿命でね」

スメル人て長命種だったな。ジェライスさんいくつなんだろう?


ジェライスに絵の才能があって、俺たちがびっくりしなかったかって?

特に…。

だって最初から3メタルグッズのデザインの良さに、みんなジェライスさんのファンだからね。

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