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18-18.オーラ

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


18-18.オーラ


「ダーリン、あの薬を」

社長が言うが、師匠は首を振った。

「これは神の呪いだから、薬では生えないよ。それよりジェライスさん、なんでそんな物騒な護符が埋め込まれてるんですか?」


「あたしはね。小さい時に奴隷商人に誘拐されて、ディアナ神殿に売られたの」


間違いない。

三毛の昔話と、完全に符合する。

その街には人攫いの組織的な集団があって、三毛の娘は最初から狙われたのだろう。

そしてディアナ教団に売られた。

彼女が一般的な女奴隷ではなく、こう言う運命を辿ったのは、幼いながら彼女がまとわせていた独特なオーラのせいだと思う。

つまり、家庭で侍女的に使う奴隷や娼婦になるより、もっと別の高値で売れる価値がある。と奴隷商人が目利きし、ディアナ教団に売り込んだのだ。

おそらく教団も彼女の素質を感じて、言い値で買い取ったのだろう。


「それからどうなったの?」

オコは自分と境遇が重なるためか、早くもいつもより感情移入多めだ。

オコの両親は一旦は親族の名誉や貧困のため、赤子を次期妖狐としてジョウザに差し出す事を了承したが、思い直して供出を断ろうとした。しかし時は遅くオコはジョウザに向けて出発してしまっていた。

妖狐の里にとって、次々と連続して妖狐を生み出すのは、当時貧しかった村には死活問題だったので、両親の起こした返還運動には冷ややかだった。


俺はジョウザの歴史の中で、初めて妖狐の里帰り制度を導入したボンとなったので、オコは既に両親や弟妹とは表向きは村長の遠縁の娘として再会していたが、結局十数年してオコがそのボン(俺)と共に死んだ事が伝えられて、世間的にはこの事は忘れられる事になる。


「幼い頃の記憶はほとんどないの。母は最初から居なかった事。父が自分は最後のスメル人だと言っていた事。父は何かの仕事で各地を巡り、あたしは父に連れられて旅した事。くらい」

三つ子の魂百まで。と言う。これは昔の日本の諺で当時は数え年齢だから、今で言う1〜2歳の経験が後の人格形成に大きな影響がある。と言う意味だが、3歳児のジェライスに、父の記憶はしっかり残っていた。


「教団はね。まあ大事に育ててくれたよ。でもだんだんあたしはこのまま一生巫女でいるのが嫌になって来た」

ディアナ教団は、決して反社会的な集団ではなく、幼い少女が売られて行く奴隷制度や、暴力団の資金源としての人攫いには否定的な立場をとっていたが、目の前の非凡な素質を発散している少女を獲得する誘惑には勝てなかった。


「ディアナ教団は、信者のためにディアナの信託を告げる事で生計が成り立っていたから、あたしは大事に育てられた。偶然あの事を知るまでは」

それは古参の侍女が漏らした給湯室OL会話的な噂話。

ジェライスが奴隷商人から買った子である事。

記憶の中の父に逢いたい。なぜ父は自分を捨てたのか?とずっと思っていたジェライスはこの時から教団への不信感を持つ様になり、(俺はいつかジェライスの物語も本にしたいと思っているが)結果的にこの地のディアナ教団は壊滅し、ジェライスは放浪の旅を始める。


「大変だったのね」

オコがボロボロ涙を流しながらジェライスの手を握る。

ジェライスの頬に一筋の涙が伝う。

「妻が泣くのは初めて見た」

アポルが俺にささやく。


『スミティ、髪の毛なしでDNAの鑑定は可能?』

コンサート準備のためバクロンに単身赴任状態だったアポルと、コミューンでグッズの生産に大忙しだったジェライス。数週間ぶりに再会した二人の為に用意した天幕に二人が向かった後、俺はスミティに尋ねた。

『造作もない事です。彼女の飲んでいた杯を耳にくっ付けて下さい』

そうだった。

本人の同意を得ずにDNAサンプルを収集するには髪の毛(抜け毛)が一番都合がいいのだが、爪、皮膚、血液、そして唾液でもスミティならサンプリングは可能だ。


そしてスミティの信託が下る。

「解:彼女のDNAのうち約50%は三毛氏のものと近似性があります」

「三毛さんがジェライスの父である可能性は半々って事?」

オコが尋ねる。

『いえ、残りは母親由来のDNAなので、三毛氏以外にジェライスさんの父親である可能性がある男性は、三毛氏の父または兄弟しかいない。と言う事になります』

科学的に厳密すぎて周りくどい言い方だが、ジェライスの父は

自分(とジェライス)は最後のスメル人」

と言っていたそうなので、結局ジェライスの父は三毛。と言う事が確定した事になる。


「わーい、すぐおしえてあげよう!」

と天幕に走って行きそうなステルを全員で取り抑える。

「これステル!そないな無粋な事したらあきまへん」

「ぶいき?ってなに?ああそうかこうb…」

慌ててオコがステルの口を抑える。


翌朝、俺達は二人の天幕を尋ねる。

「アポルさ…」

あかん、John&Yokoのベッドイン状態や!

せめてなんか上に掛けて!

ステルの目を急いでコンコンが塞ぐ。

「済みません。呼びかける前に天幕を開けちゃって」

「いいのよ。我々夫婦は、何も付けずに寝るのが常なので」

「コミューンの好奇心の強い子供達なんか、よく用事作って朝呼びに来るんだよ」

そりゃそうだろう。

俺だったら毎朝じゃんけんに参加する。


「今からちょっと朝のドライブに行きませんか?」

オコは既にステルとトトムの上で食べるための朝食セットを用意していた。


「父が見つかったのですね?」

衣服を羽織って出てきたジェライスが言う。

なんで判った?もしかして読心能力?と思ったが、昨晩あれだけ根掘り葉掘り出自の事を聞かれたので、人代様なら心当たりがお有りなんだろう。と思ったらしい。

ディアナ教団が強く惹かれたジェライスのオーラは、彼女の聡明さだったのだろうか?


「ま、そう言う事になります」

「アポル、あたしの懐剣を」

ジェライスは言った。

「父に聞きたい事があります。返答によってはディアナの神罰を下さねばなりません」

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