ボンダイビーチ(1)
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
2-22.ボンダイビーチ(1)
その海水浴場のある場所へはNewラン子号なら2時間掛からなかった。
シバヤンが片道一回限りのパリトネカビル(通行手形)をくれたので、そのまま現世へ転移する。
あれ?帰りはどうするんだっけ?ああ八娘が送ってくれるのか。まあ、場合によってはそのまま南レムリアを旅してもいい訳だな。
さて、いかにもな海岸に降りたものだ。人通りはほとんど無かったので、俺たち(俺とオコとコンコンと子猫ラン子)が現れたのは見られて無かった。
まあペンジクは最も人と神々が近しい地域なので、突然人が現れたりしても余り驚かないらしいけど。
約束の場所、サンゴの破片で出来た真っ白い砂浜に向けて歩く。ここは名所の様で結構人が多い。男は上半身裸で短いチョッキの様な物を着ている人もいる。下はパレオと言うのかな?布を膝下まで巻いている。女性は膝上のパレオとチューブトップの様な胸当てでヘソ出しだ。
つまり大変好ましい。
少し待っていたら、向こうから女が歩いてきた。
なんかゆらゆら陽炎が立つ中を、グイングインと腰を揺らしながら歩いて来る。
これは期待できるやつだ。が、
近づくにつれてわかったのは、このシーンに一番似合うインド映画女優タイプではなく、
「12歳位やな」
紛らわしい。腰振んなよ。
俺たちから離れた所で、パッと腕が増えた。
「サンディみたいな多手タイプか?」
と思ったら、首ももう一つ。足ももう二本。
なんの事はない。もう一人居るのだった。
エグ◯イルか!
「ご苦労様です。ぱーにゃん一号です」
「同じく二号」
どうやら一人は無口。というコンビの鉄則を守っているらしい。
しかし二人居るとは聞いていないが。
この疑問は想定内だったらしく、一号が口を開く。
「元々八娘は一人だったのですが、シバヤン様の複製(以下クローン)実験で分裂し、本体の一号と、クローンの二号に別れました」
「それは間違いで一号はクローンの一体目と言う意味。本体は二号」
「二って付いてるんだから、一号が本体でしょうが!」
「たーけらしい事言っとってかんわ。クローン実験だで、本体は予備として二号に控えとるんだが」
無口かと思ったら、訛ってるぞ二号。
て言うか、妙に懐かしい訛りなんだけど。
「まあそこは均等に分裂、でいいだろうよ。しかしクローンなのに見事に個性が違うんだな」
まず外見は全く同じ。髪の色もピンクと青だったりはせず、濃い緑色。髪型が一号はツインテールで、二号はお団子二個である。後で判ったが、髪型は毎日好き勝手に変えるので、全く当てにならなかった。
「そこなんですよ。シバヤン様はもう何体も自動式侍女人形を製作されましたが、一つとして同じ個性•能力の者がいない。全く同じ製法なのに不思議に思われたシバヤン様が、八娘をクローン分裂させて、同じ個性の侍女を2人作ろうとされたのですが、見事に個性が違ってまして」
「で、そっちが一号、アシが二号となったわけだがね」
結局個性が違う事こそ、自動式侍女人形が人間並みの感情を持つ条件。という事で、それ以上クローン実験をシバヤンは止めたそうだ。
「便宜上名前を付けたい。一号をパー子。二号をパーサでいいか?」
依存はない様だ。俺たち世代だとどうしても
「ぱーにゃん」
と言えば、パー子(本当は三号だが)は
"あの作品"の口喧しい女子キャラの名前。
ぱーにゃん二号だと猿なので、名古屋弁?風に語尾に
”さ”を付けてみた(『悟空さ』みたいな呼び方を名古屋ではする)。パーサーなら、客室乗務員としては偉い人だから、ナンバーズには丁度良いだろう。
あとペンジク語の数字の、1と2のバッジを付けて貰う事にした。彼女たちはチューブトップではなく、三点式のトップにパレオ姿なので、ちょっと目に毒な胸の谷間を隠す形で。体型は12歳くらいなのに、胸はうーにゃんよりもむしろ発達してきており、オコ気象台は警戒を強めている。
大昔アグネス・チャンがアイドルだった頃、初水着を公開したグラビアで胸元に缶バッチを付けていてガッカリしたが、男の業としてどうしても(保険外交員のおばちゃんのでも)女性の胸の谷間には目が行ってしまい、その都度俺の尻は容赦ないオコの回し蹴りを食らうので、その対策でもある。
「で、君たちは何で半年もここに居るの?」
俺には二人が困った顔した様に思えた。
「まあ、何と申しましょうか。簡単に申しますと、私達がシバヤン様に申し付けられた任務を達成出来て無いからですね」
パーサも頷いている。
「ナンバーズに倒せない敵とか居るの?魔物的な奴でも、魔術師でも怖いものは無いでしょ?」
「そういうの倒すなら簡単なのですが」
やっぱり、何かの退治か事態の解決が使命なのか?
「まるっと分からせんもんだで、だちかん(なんともならない)のだわ」
「今この海岸、結構賑わってて人が沢山いますよね。せっかく来られたんですから、皆さんも着替えておくつろぎ下さい。日傘と安楽椅子は用意してあります。お酒が駄目なら、ココナツジュースでもお飲みください」
もちろんそうさせて貰うつもりだ(キッパリ)。
俺の水着は膝丈の海パン(『それは下着だろう』と指差して笑われたが、俺の故郷ではこれが海の正装だ)。貧相な生白い上半身も失笑の的だが、貧弱な坊やと笑われてもエクササイズ機器を買うつもりはない。悪目立ちするのは一番困るので、失笑位がちょうどいい。
オコはぱーにゃん達と同じ形の三点式のビキニトップに腰にはパレオ。赤の水着でこちらはエロ目立ち対象だ。5m歩く間に3回ナンパされる感じだな。全部吹っ飛ばしてるけど。
困るのがコンコンで、オコに張り合って実体化したは良いが、その姿は中年の女将→若返りの術併用で、ようやくオコ相当に。しかし魔力が続かず危うく100年の眠りに入りそうなところ、俺たちの説得(『これからの旅にはコンコンの経験が必要なんだ!』)で渋々子狐の姿に戻り、以後ラン子(子猫ver.)と一緒に日陰で昼寝していた。
「メグル様、オコ様、せっかく海に来られたのですから、泳いで来られては?」
「だって海には、君たちでも退治できない魔物?ジョーズ?クラーケン?テンタクルズ?かなんかいるんだろ?」
「いやそんなのいませんから、どうぞどうぞ」
なんかやけに勧めてくる。怪しい。
「メグル、行こうよ。泳ぎで勝負しよ?」
オコはパレオを脱ぎ捨てて、海に向かって走り出す。
「オホホホホ、掴まえてご覧なさい!」
浜の男達は一斉にオコの後を追う。これは男の本能。闘牛の牛と同じで、揺れる赤い布には興奮するのだ。
「ダメだ!それ俺の」
「オレオレオレオレオレオレ…」
妙に盛り上がる掛け声と共に、オコ、男達、俺が海に飛び込む。
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