ボンダイビーチ(2)
2部の登場人物
メグル…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。
オコ…メグルの婚約者。自称妻の元妖狐。
コンコン…先先代妖狐。子狐に憑依中。
ラン子…翼獅子。ラン(獅子)とヘレン(白虎)のライガー。
南レムリアの神々
シバヤン…破壊と再生の神。有力者。
パトゥニー…シバヤンの妻。聖母神。
サンディ…シバヤンの妻。クローンサイボーグ美少女戦士。
キャーリー…シバヤンとパトゥニーの娘。漆黒の美少女神。
うーにゃん(五娘)…シバヤンの作った番号付き自動式侍女人形の五体め。メグル達に救出される。5子ちゃん。
八娘…1号(パー子)と2号。8番めのナンバーズ。シバヤンのクローン実験で2人に分裂する。
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
2-23.ボンダイビーチ(2)
ぽよ〜ん!と弾んで、全員弾き返される。
オコはちゃんと手足で着地したが、俺たち男共は砂浜にたたき付けられる。痛え!
「いやあ、今のはいいオレオレだった。やっぱりお姉さんが先導だと気合が違うわな」
男達は打ち身を物ともせず立ち上がり、俺の肩を叩く。
「スポーツなの?これ」
「いやあ兄さん、只者じゃねえな。受け身も取らずに砂に突っ込むたあ。しかも無傷じゃねえか」
咄嗟に身体強化と、治癒の術を掛けたので一見傷はないが、痛みは消えてない。
褒められても、もう二度とやりたくないぞ。
「あと兄さんの水着。下着みたいと笑ってすまんかった。あれは転んだ時、ヤバイものがポロリしないためだったのだなあ。俺たちも見習うよ」
こいつらパレオの下は、パンツ履いてないのか!
オコが『旦那様も伝統を重んじられて』とかまた怪しい事言ってるが、結局その後、俺みたいな海パンがオラオラの制式ユニフォームとなった。
ってオラオラってなんだよ?
何で海に入ろうとするとはね返されるの?
「これが異常現象でして。半年程前から誰も海に入れないのです」
とパー子。近くの港からは貿易船も出ているし、漁船もこの浜近くまでは来るそうだが、やはり浜には上陸できないと。
「何だい兄さん、ナランダーから調査に来たお役人さんかい?今までの人たちは俺たちに飛び込ませて、ゲラゲラ笑って帰ってったが、誰も自分で飛び込もうとはしなかったがねえ。兄さんは違うな。そこの浜茶屋で、一杯奢らせてくれ」
男どもは俺を引きずって浜茶屋(ハマチャヤーと発音してたな)へ連れて行く。護衛上オコとぱーにゃんsも付いてくるので、男達は有頂天だ。
未成年だと言うと、なんか気持ち悪いくらい果物が盛り上がったフルーツジュースを奢ってくれた。
「何でもいい、教えてくれ。何で海がああなった?」
「それが、俺たちにも全然判らねえんで」
「大東の貿易船が嵐で沈んで、積荷の寒天の粉が浜に流れ着いたせいだと、じっちゃんが言ってた」
「それ本当か?」
「じっちゃんの名にかけて言うが、うちのじっちゃんは大嘘つきだ」
他には何も有力な手掛かりはなかった。ただはっきりしているのは、海がこんな状態になっても、誰も困ってない。という事。
「貸しボート屋は困ってたな。だけどオレオレ見たさに客が来るもんで本業の浜茶屋が大繁盛してる」
「大体この海はこの季節になると、クラゲが一杯出て刺されるんで海には入れない。今は年中入れないが客は来る。昔から海に来て海で泳ぐ奴ぁ、あんまりいなかったからな」
「だな。浜辺で寝そべって、ビールかジュース飲んでる奴ばっかりだなあ」
まあ前世の海水浴場でも同じだった。海で泳ごうにも人は多いし、ボディボーダーは縦に突っ切ってくるし、結局客層は休日を安く上げたい家族連れ、『初めてビキニ着ちゃった!』みたいな女子グループ、それ目当てのナンパ軍団、プールだと刺青お断りなので、水商売のねえちゃん連れてくる一部職業の皆さん。が一日中体焼いたり、波打ち際で水掛け合ったりするだけだったなあ。
俺は読書しに行ってた(チガウヨ、ランパブイッタライチマンイジョウカカルカッコウシタオンナノコ、ミニイッテタワケジャナイヨ)。
とにかく、海がこうなっても誰も困らないばかりか、オラオラという新しいスポーツが誕生してボンダイビーチは盛り上がっていたのだ。
「じゃいいんじゃないの?原因とか究明しないで」
「てか原因てもう判ってるんやおへんか?」
「え?なに?」
「まああれだな」
ぱーにゃんsが立ち上がる。
「もう分かったんですか?」
「原因て、なんだの?」
「クラゲしかないだろう」
「いやいやいやいや」
ぱーにゃんsと男達全員がシンクロして手を横に振る。
「旦那、あんなでかいくらげはいやせん。ボンダイビーチは長さが15kmもあるんだぜ」
「そうですよ。クラゲなら私たちが攻撃すれば退治できます。でもあれは平気なんですから」
「だからあれはクラゲの群生だろう」
「そうやね。群生ならやられても、あっと言う間ぁに補完されるやろ」
「じゃあ、そのグンセイ?てやつの親玉をこのオコ様がぶっ潰せば終わりね。どこにいるの?」
「いや群生てのはどこが頭ってのはないんだよ。ワンフォーオール、オールフォーワンさ」
「また分からない言葉使う。じゃあ退治出来ないじゃん」
「いやあ…退治はちょっと困るんですよね」
「誰?あんた」
「ここの村長です」
腰の低そうな中年の男が、困った顔をして立っていた。
「皆さんもお分かりの様に今やオラオラは我が町の貴重な観光資源です。正直このへんの海岸は綺麗な砂浜だらけですので、差別化が難しいのですよ。
老舗のうちも新興のラジャクマール(プリンス)財閥のリゾート開発なんかに押されて、毎年集客力は落ちる一方でした。そこへこのオラオラブームです。最初は怪我する人もいたし、如何なものかと思ったのですが、結構向こう見ずで『俺の根性見せたる!』という成人儀礼で調子こいて騒ぐ様な馬鹿が結構集まりまして」
「そうだよな。最初の頃はそんなお調子者ばっかでさぁ。俺らが〆てやったけどさ」
案外自分の事って気づかなもんだなあ。
「地元の女の子は、そう言う馬鹿には眉を潜めてたんですが、よその町からちょっとオツムが緩い女の子たちが、『オラオラやる人ってカッコイイ!』とか言って集まって来まして」
「そうなんだよ。俺らモテモテ」
まあ丁度低レベルで釣り合ってるんだろう。
「で、そう言う頭の緩い女の子は水着の露出度も高いので、それ見たさで、もてない男達も集まって来て」
ボ、ボクハチガウヨ。ドクショシニウミニイクンダ。
「本当、オラオラ様様でさぁ。お役人様、どうか退治なんて仰らず」
平身低頭の村長だった。
「しかし海が人を跳ね返し、多くの怪我人が出ていると報告があり、我々が派遣された訳で」
「手ぶらじゃあ帰れーせんのだわ」
ぱーにゃんsも困り顔である。まさか怪我人が全て怪我する事承知の馬、いやプロだとは、シバヤンも想定外だったろう。
「怪我をせん様に、なんでか敷いてまったらええがね」
「それやってみたんですよ、マットを引いて。でも全然面白くない」
他のリゾートでも室内で壁や床に弾力性のあるものを置いて、『オラオラもどき』をやってみたらしいが、やはりすぐ取りやめになったそうだ。
この村でも結構な予算を使って弾力マットをかなり広い面積用意したそうだが、青い空、青い海、白い砂、命知らずの馬鹿者いや若者。こう言うのがセットでオラオラブームが成り立ってるので、マットを敷いては興醒めだった様だ。
「まあ15km全てにマットを敷くのは無理だろうし、この群生クラゲはここの砂と相性が良さそうなので、マット敷いたらいなくなるかも」
全員ブンブン首を振る。
「俺、今新しい技に挑戦しててよう。何十回に一回、うまく海に乗る事が出来るんだよ。これだと最後どこへ飛ばされるか判らねえんで、一部だけマットで覆うのじゃNGってわけ」
ちょっと態度の悪そうな若い衆。
ほう?ボディサーフィンか。
「じゃあこういう板の上に乗るともっと簡単に乗れると思うよ」
俺は簡単にサーフィンしてる棒人間の絵を描く。
ここの海はゲル状なので海水よりも乗りやすく、短い板でいいだろう。
「凄え!この発想はなかったゼ。早速端板で作ってみるわ。サンキューな」
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