俺たちの放浪はこれからだ!(2)
今話をもって第1部の終了です。
長らくお付き合いいただき、ありがとうございます。
明日より1話/一日ペースで、
第2部が始まります!
年寄りには残された時間が少ないw
転生したら転生してないの俺だけだった
〜レムリア大陸放浪記〜
1-41.俺たちの放浪はこれからだ!(2)
ダラの街外れでオコは水袋入り背負い籠を背負い、俺は天幕の袋を背負って、歩き始めた。
オコの足取りは着実だ。50kg以上の籠を背負ってもビクともしない。俺の天幕もポールがある分細長いが軽い。ただ片側で背負う形なので、痛くて時々肩を入れ替えている。
「他の人には私たち、どう見えるのかな?夫婦?えへへ」
「うーん、衣装が俺のが上等だから、主人と使用人かな?オコの方が荷物がでかいし」
「ええ〜?妻を虐待してる夫とか」
「荷物持たせるために買った奴隷とか」
「女奴隷…。なんかいやらしい」
とか馬鹿な事を話している内に、そろそろ日が暮れ掛かって来た。
夜は移動すべきではない。盗賊も多いし、平原狼(ステッペンウルフ!)も出没する。
「野営地を決めるか」
今日はせいぜい3時間の道のりだったが、歩き慣れてないから疲れたな。
と、思いながら歩いて行くと、向こうにぼんやり赤い灯が見える。
「あんな所に町はないはずだが…」
「妖かしらね」
妖だった。
大街道が緩やかな坂道に差し掛かる所、行燈に照らされて真っ赤な鳥居が数十本、ずらっと一列に並んでいる。
「これはまあ、あれだよな」
「うわっうわっ!何これ綺麗。なんか見てると、胸が締め付けられるんですけど」
オコが写メ撮ってインスタに上げそうな勢いで叫ぶ。こっちには、なもんないけどな。
「もうこんな幻、この世界で作れるの、貴女しかいないでしょ。出てきて下さいよ」
「ほほほ、ばれた?ばれてもた?いえね、化狐組合でイナリはんにお会いして、メグルはんの事話したら、えろう喜びはってな。『故郷の景色や懐かしがるやろ』言うて、くれはったんや」
組合あるんかい。
久々の先先代が白い御幣を見せる。
「故郷と言っても、伏見稲荷は一回も行った事ないですよ」
「そうなん?がっかりやわ。イナリはんが『ガイジンさんも、びゅーてぃほー!、まーべらす!て言わはるから、メグルはんもきっと気に入る』言うてはったのに」
「いえっ!気に入りました。凄い美しいです。妖狐族の琴線にいたく響きます」
「まあ、あんたがそない喜んでくれたら入管で関税払ろた甲斐があったわ」
入管とかあるのか。で御幣は免税品じゃないのね。
「お義母さん。私メグルさんに、オコって名前付けて貰いました」
「そうか、メグルはんおおきに。ヨウコの名、確かにお返し頂きましたえ」
俺たちの決断は間違ってなかった。俺はオコの手をぎゅっと握った。
「ほんまに仲のよろしい事で。あそうそうイナリはんが『異国で大変やろけど、頑張りや』って伝えてと」
イナリさんいい人だ。俺、元来イナリ好きなんだよな。特に壺屋(豊川稲荷縁り、豊橋駅の駅弁屋)の甘いやつ。
「さて、メグルはん、オコ。よう頑張ったな。ひとまずこれで大東やジョウザに目ぇ付けられる事もないやろ。しかしあんなサンディの再来がおったとはな。お醍醐様でも気がつくめぇ。やわ」
この世界の釈迦にあたる教祖が醍醐だ。
サンディはアスラ(阿修羅)大魔王に滅ぼされかけた神々が、それぞれの能力を持ち寄って創り上げたクローンサイボーグ美少女戦士。この神話上の最終兵器を、この世界の人たちは化け物みたいな強い女の例えに使う。
「「あれはやばすぎる」」
俺たちは声を揃える。
「まあ天帝様の肝いりでマーリン様預かりになって、一安心や」
全部知ってるのね。
「あの子、サンディが旦那はんのシバヤンから貰ろたバジュラ(独鈷杵)使うてたなあ。怖すぎるわ。三鈷杵に進化したら、世界滅ぶで」
あれ本物かい!
しかもシバヤンって、柴田くん呼ぶみたいで軽いな。
「メグルが、"タンジンについて行く"方に賭けた神々が多かったんやけど、よく非情にも親代りを切り捨てましたなぁ、この人でなし!」
また賭けとんかい!神々って結構クズ。
人でなしと言われても、醍醐教には戻りたくないからなあ…。タンジンも良い人なんだけど、某テニスコーチの様な熱血な人柄は暑くるしいし。
「ほな、今日から泊めてな」
やっぱりお目付役って、ついて来るんか。
「そんな!新婚初夜が…」
オコが泣き出す。
「2人用天幕なんで無理ですよ」
「心配せんでも、この姿では長うこの世におられへん、そやからやな」
ポン!と先先代の姿が子狐になった。
「途中で罠にかかとったんで眷獣にしたった。コンコン言うんや。よろしゅうな」
狐が喋る。なんと言うかアニメで言うマスコットキャラ?
ただし腹黒な。
コンコンがなかまになった!
てってれー。
「あとな、わて、こないなちっさい体でよう歩かれへんし、乗り物持ってきたわ」
"いでませい!"とコンコンが声を掛けると、巨大な猫科猛獣がいきなり現れた。
獅子の様な、虎の様な…。
「ラン子ちゃんや」
「ガオ」
ラン子もなかまになった!
「先先代、いやコンコン様、どこでこんな怪獣を」
「怪獣ちゃうで。可愛い女の子や。初代が昔天帝様から白虎を借りてはった時に」
そんなもん借りるな!いくら
"虎の威を借る狐"と言っても。
「そんで白虎に乗って、サンディとこに遊びに行った時にな。サンディの飼い獅子ランと白虎が盛ってしもて、天帝様のとこで産んだのがこの子や」
ランってサンディの乗り物のライオンだよな。それでラン虎か。お母さんが白虎だからライガーだね。
「で、わてが今回の旅用に天帝様からお借りしたんや。いつもはこの帯に封じてあるさかい、オコ、締めや」
オコが締めると上衣が引っ張られて、胸のラインが、堪らん。
「スケベな婿殿はほかしといて、オコ、お腹空いた。ご飯食べしよ」
「あい。っても干し肉と乾餅しか無いけど」
「おっす、自分は天幕貼るっす」
「ああ、ごめんごめん。ラン子な。夜しか走られへんねん。御飯食べたら出発やで。どこ行くのん。とりあえず隣のオアシス?夜明けまでには着くで」
虎は1日に千里(大東の単位で約500km)走ると言うが、普通の虎より断然速いな。
「速度?どんだけでも出るで。ただ『虎に乗ったら着くまで降りれない』言うやろ?速すぎると、人間やと死ぬで」
気をつけよう。
ちょっと反則な気もするけど、歩きや馬車だとレムリア大陸横断するだけで、何年もかかるし…。
ありがたく使わせて貰おう。
「よろしくな、ラン子」
第1章 完
これからメグル、ヨウコ改めオコ、そして子狐コンコンのレムリア大陸の放浪が始まりますが、丁度お時間でございます。
この続きは、
セイムサイト、セイムチャンネルの第2章で。
See you again!
急に旅の仲間が2人増えました。
コンコン(先先代)はお目付役。
ラン子はメグルたちが出来るだけ沢山レムリア大陸を放浪出来る様にです。
本当に当時の馬車って遅いんですよ。
明日からの第2部もよろしくお願い申し上げます。
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