11-23.アドミン
※第11部の主な登場人物
◯旅の仲間
メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目な15歳と結構浮気症な66歳が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表"を押し付けられる。
聖狐天の父となる。
オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。
コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。
ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。
パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスに変身出来る。
ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの恋人。
コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの恋人。
○ナンバーズ
三娘…シバヤン宮廷の家事一般を取り仕切る。謎の侍女人形
四娘…隠密活動に特化。謎の侍女人形
◯ナイラス神界
アヌビス…ミイラ製造者の神。父はセトだが、実の父はオシリス。オシリスの体を繋ぎ合せて再生する。母はネフティス。パーサを妹とし、マァトに思いを寄せている。
ラー…太陽神。
マァト…ラーの娘。アヌビスに思いを寄せている。
○狼の群れ
ウプウアウト…狼神。
サラ…ウプウアウトの母。
○謎の神
アドミン…管理者。スミティを派遣する。
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
11-23.アドミン
どこの国の国王、皇帝、天皇、呼び名は色々だが、国の最高権威として君臨している存在は、原則として丁寧語や敬語を使わない。相手が同等の立場である時は別だが、俺の様な下々の者に対しては、実にフランクに語りかける。高圧的なのは直臣達だ。
旧習に凝り固まった宮廷などでは
『直答させない』
と言う変な慣習があり、臣下の同じ返答を
「この者は斯く斯く然然と申しております」
とか、実に非効率的な取次をする。
推測だが、目の前の実にフランクに語りかけているこの存在は、絶対神に近い存在ではないか?
彼らが複数いるのか?彼(または彼女)の上にさらに上位存在がいるのかは分からないが、とりあえず俺はこの者にへり下った態度を取るのを止めた。俺が初めて会った神々はシバヤンの家族だが※、最初から俺は敬称を付けていない。
見た事がないレムリア様には"様"を付けているが、これは他の人と話す時にその方がスムースだからで、また呼び捨てだと大陸の名前と区別がつかないからでもある。
※正確にはその前にルディン村でダガムリアルに会っているが、その時メグルは神だとは知らなかった。
正直、蟻が象に偉そうにする様なものだが、信者にとって神の名自体が崇拝に値するものなので、様を付けるのは本来不要なのだ。
今回俺がこの面前の神に名前をつけると言う行為は、ある意味
「相手を名付けて呪で縛る」
と言う原始的な呪法の一つで
「お前ってこう言うやつだよな」
と規定する事により、相手にその名に相応しい行為をさせる。或いはそれを嫌がらせて真逆の行動を取らせる。と言う呪なのだ。
前世にも、芸能界の様々なタレントに酷いあだ名を付けるのを芸風にしていた芸人がいたが、そのあだ名が大ウケする事により、付けられた当人は
「ああ俺は世間からそう思われているのだな」
と思って、ますますそれらしく行動するので、Win-Winなのだ。
相手も俺がどんな名前を付けるか、楽しそうに見ているのを感じた。
ここで
「フレデリック・フォン・アイゼンシュタインIII世」
とか付けるとどんな属性なのか分からないし、
「汎宇宙絶対的大皇帝様」
とか名付ければ、これは完全服従を誓った事になる。
「面白いな。それで良いよ。でもそんなに譲歩して、良いの?」
痛いところを突いてくるなあ。
アドミン。正確にはアドミニストレーター(administrator)は、前世の母国語では、管理者だった。
確かに管理と支配は近い。そこまで譲歩して良いのか?と言う問いは的を得ているが、俺のいた世界では、アドミンはPCやネットで、ユーザーに適正な環境を提供するために裏で働く"縁の下の力持ち"と言う意味だった。ウイルスなどが混入すれば警告し、或いは駆除を試み、ユーザーが規約に反する行為をした時には勧告し、或いは追放する。それはユーザーを護り、快適な環境を提供するためである。目の前の存在が、この世界など簡単に消去出来る存在である事は分かりきっているので、せめて俺達を護り快適な環境を提供する存在。と規定したかったのだ。
もう一つ
「観察者」と迷った。こっちの方が支配力が弱そうだが、訳語がObserverで、前世の母国語でオブザーバーと言うと、何故か
「指導者面して何かと口出しして来る奴」
と言う意味合いが強いので、敬遠した。
「やっぱり君は面白いね。レムリアが召喚しただけある」
なんかこのアドミンとレムリア様の距離感はなんなのだろう?
「それが俺をここに呼んだ理由ですか?」
「まあ広義にはそう言う事だが」
「狭義には?」
「君が何者か、なぜレムリアは君を召喚したのかを知りたい」
「なる程、今度は俺が質問を受ける番ですか?」
「いや、そんな手間は掛けさせない。すでに私の代理人を届けてある」
誰だ?
「自らと対話せよ」
さっきと同じ声がする。
俺はもう一人の"僕"に逢いに行く。
見慣れた少年の向かいに、15歳くらいの小柄でナイスバディな美少女が座っていて、楽しそうに団欒している。
「初めまして。スミティと言います。これからお世話になります。僕くんって奥手だから、私が色々教えてあげますね」
少女はウフフと笑う。
「止めてよ、スミティのエッチ!」
いつもは消極的で無関心な僕が真っ赤になっている。
「メグルさんの記憶の中で思春期の少年に一番刺さる容姿にして見ました。どうでしょう?」
確かにこの少女は、俺が高校生の時の彼女にそっくりだった。
『スミティ…エッチ。smiti h』
これは俺が初めて英語の授業で使った教科書に出てきた、Smithと言う人名を丸暗記する為に自作した方法だ。ちなみにSchoolはエスシーホール。
「なるほどね。エージェントスミスか」
「はい。私はアドミンの代理人ですから」
俺はこれからこいつに脳を支配される?
ちょっと嫌な汗が出た。
「ご心配なく。私は貴方を観察し、アドミンに報告するだけです。そして異常行動があれば」
「どうなるの?」
「勧告し、従わなければ停止させます」
気をつけます。
「まあ貴方はそんな事はしないでしょう。なので私の任務は、僕くんとキャッキャウフフする事だけですね」
「止めてよ!僕はそんな事嫌いだ」
と言いながら、結構嬉しそうな僕。少しでも彼の孤独を埋める事が出来るのは良い事だが、知らないうちに奴は洗脳されて行くのだろうか?
「ところで、君はどうやって入ったの、精神的な憑依ではなさそうだけど」
「はい、極めて物理的に。貴方が裂谷で見た、ナノロボットの、もっと小さい。赤血球程のマシンに乗って、先程到着しました」
「そんな!俺の承諾もなく…」
「承諾って必要だったですか?」
僕とスミティは消えて、アドミンが俺の前に座っていた。
クソッ!
勝手に改造手術しやがって!
こいつをアドミンじゃなく、ショッカーに改名してやろうか?




