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11-20.第六階層

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


11-20.第六階層


階段を降りると、そこには滝が落ちていた。

渓流があるわけではない。

天から糸の様に水が落ち、地上の穴に落ちていく。これは何のためにあるのだ?

地面に縄をぐるぐるに編んだ様なサブトンが置いてある。

ここへ座れという事か?

座って見る。

胡座が似合うよな。


滝音が心地良い。

目を閉じて見る。

ジョウザで良くやった瞑想だ。

瞑想には様々な効能があるが、俺の場合は学習した記憶が全てもう一度再現されて、整理されて行くのだ。人によっては魔素が再充填される事も有るらしいが、俺にはそんな能力(チート)はない。


静かに上の階層の記憶を整理する。

あのチビは何者だろうか?

間違いなく化け物だった。恐らくパーサでも敵わないだろう。二娘でいい勝負か?

『アタラシイ、リョウリガ、デキナクナッタラ、オマエヲ、クッテヤル』

と言ったのはハッタリではない。

食欲に対して異常に貪欲な悪鬼の類か?

何故そんなものが、あの階層(ダンジョン)に?


だいたい、このダンジョンは何の為に作られたのだろうか?

古代遺跡である事は確かだが、何十万年も俺たちを待ってたのか?

他にこのダンジョンを使った者は居たのか?

四娘はここは、裂谷の大魔王軍事施設に対抗して作られた。と言った。しかし、こんなややこしいダンジョンに何の軍事的価値があったんだろうか?

ここに籠って戦うとかあり得ないし。


そんな事を考えていると、突然俺のじゃない思考が入り込んで来た。


「自らと対話せよ」


何だと?だからいつもこうやって記憶を辿り。

いやそうじゃなない。自らはレムリア汎用語では単数形と複数形が同じなんだが、

「お前達自身で対話せよ」

と言われた気がしたのだ。


実は俺は二人いる。

もう15年以上になるので、普段はすっかり融合している。だから俺は常に一人称で話すのだが、

前世の俺。六十余年を生きたおっさんと

レムリアに、次期ボンとなるため生まれた僕。


普通憑依する時は、される側が瀕死の場合(コンコンの子狐)とか、既に死んで間がない場合(前回の後添い妖狐)に限られる。

元気でピンピンしている相手に憑依するのは、相当な魔術師でもない限り簡単には出来ない。

俺の場合は、精神の揺籠の中で赤子が徐々に育って行くうちに自我が芽生えて行き、俺があれこれ考えて行動する事に異論を唱える様になった。

だが特に反抗期みたいなものはなくて、主に俺のエロい衝動に対して、生真面目な少年みたいなダメ出しをする事が多い。

これは大抵奴の方が正しいので、大人しく従う事にしている。

その為俺は人類の代表として高い評価を得る事が出来ていた。


逆に正義感と言うか、理不尽な行いに対しての怒りは奴の方が強く、すぐ

『やっちまおうよ』

とか言う。俺は

「まあ待て」

と冷静に対応出来るので、理性的な行動がとれる。

つまり二人の意見が相違する時は、頭の中で米国製猫鼠漫画映画(トムトジェリー)の様に天使と悪魔が言い争っている感じだ。


此奴(きゃつ)と対話しろと?

「おい」

『なに?』

「最近どうだ」

『別に』

なんか思春期の息子と親父の会話じゃないか。

「ごめんな」

『なにが?』

「いや、体乗っ取っちゃって」

『いいよ。僕も自分で選んだんだから』

「選んだ?」

『僕ね。大人にはなれない運命だったんだ。一歳までは生きられないってさ』

「誰がそんな事を?」

『よくわからない。多分レムリア様』

まさかこの世にレムリア様と話した人間がいようとは。人間どころか神界にも聞いた事はない。


「レムリア様ってどんな人?」

『自動音声』

そうなのか。

『で、さっさと体を明け渡して、冥界に行ってまた転生するか、体を借りにくる人と共存(ルームシェア)するか、自分で決めなさい。って』

「それで、共存を選んだのか。なんで?」

『面白そうだったから』

「それで、今面白い?」

『まあまあだね』

「なんか不満あるのか?やっぱり俺がどんどん自分でやっちゃうのが不満。とか?」

『いやそれは楽でいい。オコちゃんや、他のみんなも大好きだし』


「じゃあ何が不満なのさ」

『退屈なんだよ』

「退屈?」

『おっさん(奴は俺をこう呼ぶ)が運転する馬車に乗ってる様なもんでさ。あんまりやる事がなくて』

「時々交代してやろうか?」

『やだよ、めんどくさい』

どないせいちゅうんや!


「判った。取り敢えず毎晩寝る前にお前と話す事にしよう」

『僕、ダメ出し厳しいよ。特にあのしょーもないオヤジギャグ』

前世で色々あったが、まあまあの人生を終えて、思いがけずも異世界に転生した。

それから15年以上。

俺は、また生かされた事に感謝しつつ走り続けたが、馬車から窓の外を眺める様に、或いは映画館で映画を見る様に、人生を見続けて来た彼奴の孤独も、これからはもっと考えて行こう。


地下への階段は、その時開いた。


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