11-16.第二階層
相変わらず適当で申し訳ないですが、多分今回でめでたく400話達成となります(祝)。
ここまで続けられたのは、ひとえに全国何人かの読者の皆様と、私とマクドナルドや駄菓子屋さんのお陰です(相変わらず人参ぶら下げないと歩かない駄馬な私)
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
11-16.第二階層
「コンコン…」
皆は絶句したが、コンコンは普通に話しかけてきた。
「心配せんでもええ。先に行き。ただわてが保つのはせいぜい一昼夜や。急いでや」
俺たちはコンコンのお尻と尻尾に一礼し、足を進めた。
階段を降りると、そこは海だった。
「これ、どこに階段があるの?」
「海の底ですかねえ」
綺麗な砂浜の海岸で、海の遥か彼方の水平線まで島かげは見えず、青い空と雲。
つまりは恒例の水着回の舞台だ。
しかしカモメが飛んでいる訳ではなく、生き物の気配は魚を含め感じられない。
海に入ると、そこはあのボンダイビーチのオレオレの様なグミ状のゲルで、とても潜ったり出来ない。
「つまりは書き割りよね」
ジョウザ劇団の舞台に飛び入り出演した事もあるオコが言う。
しかしのんびりしている暇はない。
ないとは思うが、コンコンが塞いでいる穴のある壁に、もしも鉄鼠が別の穴を開けたら?
コンコンの結界は今では本人が寝ていても維持されるが、結界は害を及ばさせない為のもので、壁に近寄らせないためには
「シャ〜ッ」
と言う威嚇が全てだ。
その気力が保つのがせいぜい一昼夜と言う事だろう。威嚇出来なくなれば、別の穴が開けられ、鉄鼠たちは、後ろからコンコンの美しいモフモフな尻尾を…。
何か考えるんだ!俺。
「砂の下に階段があったり」
オコが試しにナイフで掘って見る。
途端に砂が海と同じ様にゲル化し、オコはやっとの事でナイフを抜いた。
「これで階段がこの下にある事が分かったね」
「でも掘る事は出来ない。という事ですね」
師匠は顎に手を当てて考え込む」
「どこかにスイッチがあるのかな?」
ステルが呟く。
「どこかって…」
パーサはアヌビス化し、思い切り海岸を海に平行に走り出す。
ところが5分ほどで逆の方向から帰ってきた。
「本当に背景ロールなんだわ」
オコによると登場人物が歩く情景で、後ろに大きなロール幕を動かして、キャストは足踏みをする演出があるそうで、その間に後ろで舞台背景を入れ替えるのだそうだ。
「ちょっと上から見て見るね」
ステルが垂直離陸する。海へ向かっていく様だ。
「くそっ。こんな単純な魔術式など、僕なら破れるのに」
師匠がステルを見つめて、悔しそうに呟く。
「破れるの?やってよ」
オコが尋ねるが、師匠は首を振り
「術式を破る事は出来るけど、それでは階段自体が消えてしまうんだよ。それを考慮して解法を考えるのに3日はかかる」
だめじゃん。
皆、普段は口に出さないが、この俺たちの旅がステル無しでは成り立たない事は痛感していた。
上級神達が使う瞬間移動は、我々には使えない事が分かっている。これはおそらくレムリア様の定められた禁忌だ。
バクロンでの科学者達の陰謀の時にも痛感したが、神々や人間の禁忌破りに対する罰則は厳しい。何しろ各神界神警の上にある上級神警の敏腕刑事、斉天大聖が直接検挙に来たのだから。
もしステルがいなかったら、レナルド・ダンチビが開発した超高速馬車を駆使しても、今まで旅の半分は実現できまい。ましてステルが飛べなければ、どうやって大氷原を飛び越えれるのか?
そして瞬間移動の出来る上級神警でも、ヤクスチランには目が届かなかったのだ。おそろしい悪神を打倒出来たのは、鳥ジャガー神であるステルの圧倒的物理力だ。
「今ステルを失うのは痛手だな」
師匠には先が見えていた。ここがステルの回だと。
だがそれは軍師としての冷静な計算に過ぎない。驚いた事に
「ノヅリさ!あんた冷た過ぎにゃあ?」
と自動人形のパーサが噛み付いた。
ステルもパーサも俺たち家族だから彼女の感情回路にない反応をするのは無理もない。
「ごめん…」
と師匠が言い訳しようとした時
「見つけたよ!海のはてにむじん島があって、そこにスイッチがあった。今からおしてみるね」
とステルから念話が入る。
砂浜に渦巻きが出来、階段が現れる。
「でかしたステル!すぐ帰ってこい」
「ダメなんだよ。スイッチからはなれると」
あっと言う間に階段が消える。
「おしてないといけないんだよ」
「なんか重しになる石とかないの?」
オコが聞く。
「何にもない。そして、これはおすのになまみのどうぶつじゃないといけないみたい」
「とりあえずいっぺん戻って来て」
オコが叫ぶ。
「あのね、この島にきてから、ステルは子猫のすがたになっちゃって、へんしんできないの。今スイッチの上に乗ってるの」
俺とオコは絶望の余りしゃがみこんでしまった。
「冷たい様だが、ステルの犠せ…献身に感謝して、先に進むしかありませんよ」
師匠に腹が立ったが、社長との別れをあれほど悲しんでいた師匠に正論で押し切った俺たちが何か言える立場ではない。
「オコ俺さ」
「なに?」
「いつか俺たちの子供が生まれた時、絶対ステルの事をお姉ちゃんって呼ばせる」
「あったり前じゃないの!」
オコが俺の胸で静かに泣いた。
「いいとこなのは分かるけどが、ステルは神だから、こんな所では死なすか」
パーサが言い切るまで、俺たちは涙を流していた。




