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9-17.セト

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


9-17.セト


「セトって何ですか?初耳だなあ」

「ごまかし方下手すぎ。仮にも最高神ラーの信者なら、セトの事は知らぬはずがないだろう」

コンコンが追求する。

セトはオシリスの弟で、オシリスはイシス、セトはネフティスと言う姉妹を妻にしていた。

ところがネフティスはオシリスに懸想してしまい、酒でオシリスを酔わせて契りを結んでしまう。こうしてアヌビスが生まれたのだが、セトは妻の不義を怒り、オシリスを殺害してばらばらにしてナイラス川に投げ込んでしまう。伯母のイシス(いい人!)に匿われて育ったアヌビスは、父の破片を探し、繋ぎ合わせてミイラにして復活させた。オシリスは冥界の王となったが、セトはマァトによって冥界裁判を受けた。しかし結局オシリスとセトの兄弟は和解している。


まあ下世話に考えると酔っていたとはいえ、ネフティスの誘惑に乗ったオシリスにも非がある。と言う情状酌量があったのだろう。セトは基本的には悪神では無く、太陽神ラーも彼に恩を感じる事もあったので、和解の仲立ちをしたのだろう。

もっとも前述した

『アヌビスは魚に食べられてしまった父の、ある部分だけは回収出来なかった』

と言うくだりは、ナイラスの夫達の溜飲を少しは下げたかもしれない。


「あ、ああ神様のセトですか。私はまた有名な陶磁器の産地かと」

なんか苦し紛れに訳の分からんことを言ってるぞ。そんな名産地はレムリアにはない。

「お前はラーの神官でありながら、セトの事を知らんのか!」

コンコンが畳み掛ける。

「いえ、分かりますが、神様の数が多すぎて」

ますます沼にはまる神官。

「知らないなら教えてやろう。セトは河馬の頭を付けた神だ」

「そ、そうですか。その神様が、何でこんな所に居るんだろうなあ…」

「そうか。じゃあお前はセトが兄殺しの殺人者だという事も知らないんだな」


「セト様は殺してない!」

突然神官が叫ぶ。

「それは悪意の作り話です」

俺達は呆気にとられてしまった。

「ちょっと落ち着いて、座ろうか」

師匠が穏やかに言う。

「君が知っているセト神の事を教えてくれるかい?」

オコがお茶を持って来た。前に作ったものなので、喉を潤すためだけの冷めたものだが、神官はゴクゴクと飲んで、

「こんな美味しいお茶は飲んだ事がない」

と言った。気を良くしたオコはお湯を沸かし始めている。


「私達がトーと呼んでいるセト神の評判が世間で良くない事は知っています。でも真実は違う」

「や、め、ろ。それ以上言うな」

失神から冷めた上司らしい男が喚く。

彼に責任を押し付けた癖に、お前が言うな!

パーサがちょっと電流を加えた。

「では、貴方の知っているセト神について、教えてください。彼は兄を殺していないのですね?」

「その通りです」

以下がこのメンフィスに伝わるセト神の伝説である。


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セト神話(メンフィス版)

妻の不貞を知った(セト)は、すぐに兄の元に真偽を確かめに言った。

最初は知らないと言っていたオシリスも、弟に問い詰められ、事の次第を告白した。

「あの晩お前に呼ばれ、お前の所を訪れたが、お前は留守だった」

「俺が兄貴を呼んだ?」

「ネフティスが、お前が話があるからと使いをよこしたのだ」

「そんな用事は無かった。俺は所用で遠方の親戚の元に行っていたからな。思えばその所用も変だった」


「ネフティスは、夫はいないが珍しい酒が手に入ったので、利き酒をして欲しいと言った。知っての通り、俺は酒には目がない」

「いつか酒で身を滅ぼすと予言されていたな」

「ああ、そう言う忠告に耳を貸さず、俺はその酒を飲んだ。朦朧とした俺の上に、なぜかイシスが乗って来た」

「義姉さんが?」

「ああ、そうとしか見えなかった。しかし俺が絶頂を迎えたとき幻が解け、その女がネフティスだとわかった」


「ああ…。ネフティスは姿をくらましました」

「俺は妻に相談した。イシスは『あんな馬鹿な子ですが私の妹です。この事は私に任せて下さい』と言った」

「どうして俺に黙っていたんだ」

「イシスがそうしろと。セトさんはおとなしい性格だが、そんな人こそキレると手が付けられなくなるので、貴方の身が危ない。と」

「そうだったのか」

「しかし今お前に告白して、俺の気持ちは決まった。俺は神の座を降りる」

「何で兄さんが」

「酒の上の過ち。では済まない。これは俺の過ちだ」

オシリスは俄かに姿を消し、セトはその事を諸神に告げた。


一旦は納得した神々だったが、各地でオシリスの死体の破片が次々と発見されると、当然セトに嫌疑がかかった。

証拠はないのだが、俺の犯行ではないと肩を持ってくれる神は一人も居なかった。

隠れていたオシリスの息子アヌビスが現れ、父の破片を繋ぎ合わせてミイラとし、オシリスが冥界で復活を遂げると、敵討ち的な好奇心から更にこの話は有名になって、セト討つべしの声が高まった。


やがて冥界から召喚状が届き、世間では逮捕状と言われた。冥界にいた兄オシリスと俺は再会し、俺は冥界に隠遁する事になった。ナイラスの神界に嫌気がさしたからだ。

結局誰が兄を殺したのかは、未だに分からない。


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