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9-9.ドスル

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


9-9.ドスル


パーサに腰縄を付けられ、ドスルが戻って来た。

「いやあ食い逃げなんてする気は無かったのですが、名前を呼ばれてパニックになってしまって」

「ドスルさんが有名人だからですか?」

「え?僕有名なんですか?」

「失礼ですが神界を追放されたとか」

「まあそうなんですが、現世に来てしまったら知られて無いと思ったので、びっくりしてしまって」


「俺は貴方のしでかした事を評価する立場にはありません。しかし神界にまき散らされた悪い噂は信じていません」

「ありがとう。でもどうして簡単に信じないなんて言うの?」

「レムリア様がなぜあんな事をなさるのか?疑問に思っている人は多いです(シバヤンの箱庭の事は秘密だ)。だから単なる悪戯心で逆らったりするはずない。ましてやアトランティス沈没などは無関係でしょう」

「ありがとうございます。人間なのにお詳しいのですね」


「一応人類の代表なんてやってますんで」

「えっ?もしかしてマーリン様?」

「から押し付けられました。ウラナと申します」

「そうだったんですか。で、なんでナイラスに?」

「貴方の書き置きを見て」

「なるほど。でも鰻ならご自分で焼けるでしょ?」

「鰻じゃないんです。マルモ屋さんを探してまして」


「マルモ屋…ああジョンの事ですか」

この人にもジョンと呼ばれているらしい。

「ジョンさんは、犬人に会う方法を探していて、ドスルさんのところでヒントをつかんだとか」

「地獄耳ですねえ。いえ私は何もお手伝い出来ませんが、たまたま私が持っていたナイラスの魔具で何とかなるかも?と言って使い方を探るため一緒にナイラスまでは来たのですが、ジョンは街中ではぐれてしまって。私がここに立ち寄る事を知っているので、ここに居れば会えるかな?と」

探索の糸がここに来て切れたか。


「ありがとうございます。では街中を探してみます」

オコ以外のメンバーが目配せして、街に散って行った。

「私はもう少しこの店にいますよ。ウラナさんのおかげで、もう少しマシな鰻が出て来そうなので」

「そう言えばさっき山椒とか言っておられましたが、鰻にお詳しいのですね」

「はい、私は各地を放浪しておりますが、一番好きなのは蓬莱なんです。あそこは静かだし、安全で、ゴミが落ちていない」

何だか日本大好き外国人の動画みたいな事を言う。


「蓬莱には外国人は少ないと聞きますが(妖狐の里にいる蓬莱入り婿からの情報)、その風体では目立ったでしょう」

「ああ、申し遅れましたが私は人間ではないのですよ。一番気に入っているのがこの格好なのですが、自在に姿を変えられます」

なんかメタモンみたいな人だな。

「蓬莱では主にこの格好でした」

シュルシュルっと外見が解けて、町娘みたいな姿になる。

「性別も…思いのままですか、しかしさっき逃げる時、何で変身しなかったんですか?」

「無駄ですよ。だってこの子、ペンジクのナンバーズでしょ?変身ぐらいでは地の果てまで追いかけられます」

なかなか頭のいい人だな。


「声は変わらないんですね」

「そうなんですよ。蓬莱ではそれでむしろ仕事貰えました」

「んん?」

「蓬莱には行かれた事は?」

「まだ無いんですよ」

「蓬莱ではギダユーと言う節を付けて物語を語る芸能が盛んでしてね。高い声だけじゃなく、唸る様な低い地声も出せる娘は珍重されるんです」


娘義太夫か。明治になって女性の寄席芸人が許可される様になり、大流行した芸能だ。贔屓(ファン)の加熱ぶりは今のアイドル以上で、いわゆるガチ勢の若者は仕事も勉強もほったらかしで熱中したので、社会問題になったそうだ。

「あ、そうかドスルさんと言う名前」

「はい私は竹本 晩鐘(ミレイ)と名乗っていましたが、語りがいいところになると、大向こうから『どうするどうする』って声がかかるんですよ。それでドスル」

当時のガチ勢は堂摺連(どうするれん)と呼ばれてたんだったな。竹本晩鐘か。ミレイの晩鐘?多分西から来たから夕方のイメージなんだな。今度妖狐の里の蓬莱入り婿に聞いて見よう。


「ドスルさん」

「はい」

「本当のお名前は何と仰るのですか?」

「それは秘密です」

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