9-3.アスビの港町で
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
9-3.アスビの港町で
「これは旨いな。前来た時は五娘に吐かせるために味わってる気分じゃなかったからな」
「うーちゃんゲロっちゃったの?なんか変なもの食べたの?」
「いやそう言う訳じゃなくて。探偵ごっこしてたのさ」
ステルも一緒にいたはずだけど、帯の中だったかな?
「ああ…キャバの卵は最高ね」
「オコ、そんなにパンに盛り上げて。そんだけで小金貨1枚分くらいの値段だぞ」
「そんな高いの?産地だから銅貨50枚くらいかと思った」
「いいのよ、うちの取引先なのでいくらでも食べて」
「社長はん、流石太っ腹やな」
「どんどん頼んじゃって、どうせウラナさんのツケだから」
やっぱし…。
俺達はアスビ海の港町にいる。
ここは昔バクロンの王族のリゾートだったところで、海産物も旨い。
「キャバって養殖出来るんだっけ」
「出来ないみたいだよ」
じゃあそれを商売にするのもアリだな。暇があったらチャレンジするか。
俺達は昼前にこの街について、まず有名な
「漁師食堂」
で、ランチをとった。
元日本人の俺は海産物の鮮度にはうるさい。
レムリアの魚は生で食べれる鮮度ではないが、焼き物や煮物なら問題がない。
前回ここへ来た時、一番いいレストランで豪華な食事をし、シェフに意見を求められた事がある。
俺は、氷魔術師を雇え。たとえ火を通す料理でも魚は鮮度が命。鮮度さえ良ければ、生で食べる料理もある。と忠告した。シェフは熱心にメモしていたが、ランチに入った簡便な食堂でさえ、冷たく冷えた酢〆めの魚片が出てきて驚いた。明らかに鮮度管理が向上している。
夕方前回も来た最上級レストランでは、シェフに抱擁せんばかりに迎えられた。
結局俺持ちになった料金をレストランは受け取らなかった。
善行はやっておくべきだな。
「さてここから例の滝壺へ行って神界に入るのかな?」
「あそこは網を繕っちゃったから行けないわよ」
独鈷杵が穴開けたとこか。
「じゃあどうするのさ」
「ミニヨン隊長を呼んでみようか?」
師匠も会った事があるらしい。顔の広い人だ。
師匠は白い布を取り出して、複雑な紋様を書き始めた。
これでローランド川に行けるのか?
「よし準備完了。ウラナ君、ここに魔力を注いでくれ」
魔方陣が光り始めた。
「ミニヨンくーん!」
「はーい」
こっち来るんかい!
「諸君久しぶりであるな。何か我が警備隊の助力が必要なサムシングがあったのか?」
隊長ミニヨン・ド・ローランドは元気そうだった。しかしさっきの可愛いお返事は何だったのか?
「いや、ちょっとマルモ屋に行く用事があってさ。神界に案内して貰えないかと」
「マルモ屋?はて、最近店を閉めてる様だが」
「何だって?何か病気でも?」
「いや、旅に出てるとか」
「どこへ?」
「知らんけど、始まりの酒場のマスターによると、旅に出たとか」
がーん!
どこへ行ったんだよーシロ。
「取り敢えず神界来るかね?マスターなら何か知ってるかもしれない」
カワウソが魔方陣を少し書き換える。流石は神だ。妖狐の計らいで、絶滅危惧種だったレムリアのカワウソも少しずつ数が増えており、ミニヨンも往年のとまでは行かないが、力を盛り返して来た様だ。
皆で魔方陣に踏み込むと、川の流れる音が聞こえる。もうローランド川だ。
ミニヨンに礼を行って東に向かう。トトムは神界飛行が初めての様で、余りスピードを出さずに進む。
夕方頃、マルモ屋に到着した。
確かに店の戸は閉まっている。
『しばらく店を閉めます。探さないで下さい』
何だよ家出かよ。
野営をして、俺とオコと師匠だけで酒場に向かう。トトムに神界夜間飛行は不安だし、余り大人数で押しかける場所でもない。
「朝までには戻れると思う」
と行ってステルに乗り込む。
パーサは心配したが、神界なら危険は少ないだろうと説得した。
やがて酒場の灯が見えてきた。




