8-29.冥界への条件
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
8-29.冥界への条件
一言に冥界と言ってもなかなか広い。
俺たちが行ったことのあるのは
「煉獄」
と呼ばれる、亡者の行く先が決まるまでの裁判所と拘置所に当たるもの。
その先には地獄に当たる罪人を処罰する部署。善人の行く天国に当たる部署。転生の紹介所。そして
「ホーム」
と呼ばれる神々の隠棲所。
レムリアの神々は人気商売なので、信者が居なくなれば力を失う。
その神々の住んでいた神界も消滅し、神々は冥界に旅たち隠棲するのだ。
過去大陸が沈没したムーやアトランティスでは、信者である住民がほぼ全滅したために、多くの神々が失業した。
バクロンの様に征服民族が目まぐるしく交代する地域では、征服民族の神が被征服民族の神を
「合一」
するが、これは人間の都合で、被征服民族の神が合一を拒否した時も事実上の合一は行われ、拒否した神は
「元〇〇神」
として冥界に旅立つ。
妖狐の場合も先代より前の妖狐は冥界にいるが、具体的にはジョウザのボン派醍醐教の諸仏が住まう冥界。
「ジョウド」
と呼ばれている訳だが、ここで暮らしている。
ここの諸仏の特徴は、必ずしも
「冥界行き=引退」
ではない事で、いわゆる
「成仏」
が一般的に死を意味する関係上冥界にはいるが、現世とのパイプが大変太く、諸仏専用の神界。みたいな扱いになっている事。
そこに間借りしている妖狐達も、他の亡者に比べれば現世に行くのが容易で
「準神」
の格を持っているのだ。
だからコンコンや先先先代の様に現世にべったり住んでしまう事も可能だ。ただ亡くなった時から時間が経てば経つほど、冥界では遠い場所に追いやられるので(と言うより新しい冥界がどんどん出来るので)、初代様などは数分間現世にいるだけで大変な霊力を消費してしまい、百年ほど休憩しなくてはならなくなる。
「直接初代様の居所に行けば、初代様とお話が出来るのですね」
「時々話の途中で眠ってしまわれますけどね」
いっぺん寝ると、また目覚めるまで数年要する事もある様だ。運良く起きてるといいけどな。
「お土産に目覚めのポーションを、持っていかなあきまへんな」
そんなのあるのか?もしかしてコーヒー?
「あとせっかく処方を頂いても、わてでは何の事か珍聞漢文やさかい、誰かにしっかり覚えてもらわんとな」
「まあ任せやあ」
パーサが自信たっぷりだ。
「いや八娘はここでメンテナンスしてもらうぞ」
「なんかアシ、壊れとる所あるけ?」
「新機能追加だ。あとこれで正式に八娘は俺とサンディの所属から離れ、メグル殿の所有物となる」
三神界の協定により聖狐天のために独立した二娘と並んで、シバヤンの監視下から離れるのだ。
「まあ俺でも見てれば多分覚えられるけど」
「記憶装置としてはメグル君は無理がある。直感的記憶タイプなので、再現出来ても人には説明出来ないだろ?」
俺の第一のチートの特色だな。何でも覚えてしまうが、師匠にさえ伝授ができない。
「アシのアップグレードは、この旅の後ではいかんの?」
「俺は生きている神として、冥界の醍醐圏には入れない。何かあった時のためにパーサはこちらにいた方がいい」
アップグレードが終わらないと、パーサではこれから予想される困難に対応出来ないのだろうか?
最優先はパナの治癒なので、これでいいのだろう。
「それでな。パーサの代わりにウチのナンバーズを一人派遣しようと思う」
「誰だの?」
五娘だったら許さんでね。と言うライバル心が燃えている。
「ロクだ」
「ロクぅ〜っ!」
パーサが驚きの声を上げる。
ナンバーズは皆優秀だと思うが、そんなに驚愕する程意外な人選なのか?
「そうなの。だから早く帰ってきてね。これからうちは毎日サンディ姉様のカレー料理なの」
「キャーリー、何か不満が?」
「いえ、お姉様のカレー大好きだけど、お願い。家ではチャレンジカレー出さないで」
様々な食材とスパイスを使った試作品が出るらしい。
「で、ロクさんていうのは?」
師匠が尋ねる。まあ六娘と言う面識のないナンバーズの事だろうが、なぜシバヤン家の食卓が?
「ロクは総料理長を務めている、調理の天才です。彼女だけがナンバーズの中で人間と同じ消化器官を持っているの」
パトゥニーが説明してくれた。
ナンバーズは主人の毒味の為、鋭敏な味覚を持っているが、食物を食べる必要がない。なので五娘はキャーリーのために食べ物を丸呑みし、転送しようとしたのだ。夭逝した三ツ星ホテルの天才シェフを依代としているそうだ。そういう意味では六娘はオートマタと言うよりサイボーグなのかな?
サイボーグの六娘。
巨大スーツと宇宙活動の七娘。
クローン分裂実験の八娘と、終わりがけのナンバーズは、ちょっとシバヤンが飽きたとと言うか、イロモノに走った気がするな。
「ロク」
パトゥニーが呼ぶと一人の小柄なメイドが進み出た。
眼鏡っ娘。
タイプだ。




