8-28.類推(アナリシス)
※第8部の主な登場人物
◯旅の仲間
メグル(ウラナ)…主人公。元ボン76世(未)。旅行家志望。生真面目な15歳と結構浮気症な66歳が同居している。"国民的英雄"に加え、"改革者"の称号を獲得。更にマーリンから"人類の代表"を押し付けられる。
聖狐天の父となる。
オコ…メグルの妻の元妖狐。メグルとの子作りを夢見ている。弓の達人。弱者の味方で直情的。聖狐天の母となる。
コンコン…先先代妖狐。子狐と伎芸天女の童女に憑依できる。
ステル(ラン子)…鳥ジャガー神。ラン(獅子)とヘレン(白虎)の娘。メグルをあるじと慕う優しい少女。第6章で進化を遂げ成体、幼体(子猫)以外に猫耳娘の形態をとる。
パーサ…元八娘2号。シバヤンから譲渡され、メグルの侍女となった名古屋弁美少女。諜報活動に大活躍。自称第二夫人。大型肉食獣アヌビスに変身出来る。
ノヅリ…バクロン第3王子。魔法省長官を辞し魔法修行の旅に出る。メグルの師匠。コリナンクリンの恋人。
コリナンクリン…ワタリガラスの鳥神。運送業ワタリガラス商会の女社長。ノヅリの恋人。
◯その他の登場人物(神)
イグルー…大氷原の村の娘。村長の孫。メープル朝の末裔。
パナ…元八娘のパー子。人間となってアルディンの妻となる。
アルディン…バクロンのイザン朝第五王子。王位を捨ててパナと結ばれる。
◯ペンジク4神
シバヤン…南レムリア最高神の一人。破壊と創造の大神。
パトゥニー…シバヤンの第一夫人。慈悲と再生の母。
サンディ…シバヤンの作った美少女人造最終兵器でシバヤンの第二夫人。
キャーリー…シバヤンとパトゥニーの娘でサンディの妹。人生崖っ淵の最後の希望。漆黒の美少女神。
◯ナンバーズ
一娘…最初に生まれた自動式侍女人形にしてシバヤン家の宮宰。シバヤンも頭が上がらず、ナンバーズ全員に恐れられているスーパー秘書。
五娘…ナンバーズにしてキャーリーの親友。レムリア最速。
二娘…ナンバーズだが、現在は聖狐天の部下になっている。武芸の達人でメル、オコ、御供の師。
◯箱庭世界
ハヤテ…警備隊長。
ノモ…村長のコボルト。
影夫…力試しトーナメントに出て来た謎の存在。
ハピネス…箱庭世界魔物国の女王。
ゾフィア…第一王女。
レティア…第二王女。
転生したら転生してないの俺だけだった
~レムリア大陸放浪記~
8-28.類推
「おひさー、メグル様オコちゃん。また会えてマジラッキーだよ」
キャーリーが、落ち着いた女神姿に似合わない元気さで現れた。
「あらあらあらあら(四回)キャーリーちゃん、その様にメグル様にぶら下がっては、はしたないですよ」
パトゥニーがたしなめる。
「いえいえキャーリーちゃんはそれ位元気な方が」
と言って、俺は背後に殺気を感じた。
振り向くとオコとパーサの目が星飛雄馬みたいに燃えている。四角関係再燃か?
「お前達も話は聞いたと思うが、パナの中に埋め込まれた依代を再び取り出すのは」
「マジありえないっしょ。だけどやりたみ〜」
キャーリー語を翻訳すると
「成功の可能性はかなり低い。だが挑戦してみたくもある」
と言う事らしい。
キャーリーの査定は明快で
「アタシらだけでは無理」
であった。これにはシバヤンも
「口惜しいが止むをえんだろうなあ」
パトゥニーは黙っている。おそらく俺たちの事を慮って、不可能とは言いたくないのだろうが、とにかく全く解決の糸口がないので、言葉がないのだろう。
「キャーリーさん。『アタシらだけでは』と言うのはどう言う事でしょう」
言葉に厳密な師匠が尋ねる。俺たち全員がこのキャーリーの言葉に僅かな希望を見出していた。
「うーん。なんて言っていいか」
「多分こう言う事じゃないかな。私は最近カレーに凝ってる」
"カレーの母"サンディが助け船を出す。
凝ってるどころじゃない。
カレーに使われる各種の香辛料は殆どがペンジク、または近海の島々の産出品である。ただ唯一、
味覚の一つとして後から分類された
『辛味』
は元々ペンジクにはなく、実は俺がヤクスチランから持ち込んだものだ。
前世でまあ平均的な人間だった俺は、平均的にカレーが大好物だった。だからヤクスチランで唐辛子を市場で見かけた時は狂喜乱舞したものだ。
この辛いと言う感覚は、甘い、塩鹹い、酸っぱい、苦いとは違い人間の味覚には元々ない。
まあ言うたら痛覚。
つまり口に含んだ途端、刺激を感じて吐き出す一種の毒物なのだ。
俺が作った拙いカレーを気に入ったサンディは、産地は問わずワタリガラス社長と契約を結び、唐辛子を輸入。カレー料理の研究に没頭した。灼熱の気候ともあっていたのか、これがペンジクで広まったのだ。
ちなみに現世の歴史上、ポルトガル人が南米原産の唐辛子を持ち込むまで、イスラムの旅行記などには
『インドのカリーと言う料理は酸っぱい』
と記されている。
「ああ、またサンディさんのカレーが食べたいです」
「うふふ良いぞ。後でな。それでさ。今巷では香辛料をあれこれ混ぜわせて自分だけのパウダーを作るのが面倒なので、香辛料をブレンドした複合香辛料を売る様になっている」
更にこれをベースに英国人がもっと簡単に、スープに入れるだけでカレーが出来る様にしたのが、カレー粉だ。
更に日本のオリエンタルが、これに油脂・小麦粉等をミックスし、具材と煮るだけでカレーが出来る様にしたのが
『即席カレー(カレールウ」』
だ。
更にそれに大塚食品が、ボンカレーを
もうやめよう。
「我らは先先代妖狐殿がオコを妖狐から人間にした時、生身の体を用いず、依代を用いたのを見て愕然とした。そして研究を重ね、ペンジク神界でも人形を依代とした人造人間を作りあげた。その第一号がパナなのだが、実は恥ずかしながら、どうやれば出来るかは判っているが、なぜそうなるのかまでは判っていない」
つまりカレー粉やガラムマサラを使って美味しいカレーを料理する人。と言う事か。
「クミンをどれだけ入れるか、コリアンダーは?カルダモンは?胡椒は?となると、まだまだ発展途上で、非可逆的なのだ」
依代だけを分離して取り出し、しかもパナは無事。と言う事はまだ出来ないと白旗を上げているのだ。
「数年後にはは出来る様になるでしょう。研究は続けています。でもその前にパナは」
いつも穏やかなパトゥニーが、かなり悔しげに言った。
具材の処理やスープの作り方では誰にも負けない。だが香辛料はSBのカレー粉を使っている。
まあ行列店でもそう言う店はあるだろう。
逆に素人の料理好きが、香辛料を薬研で轢いて本格カレーに挑戦し、不味くて家族が辟易する。と言う事もあるだろう。
まあカレーは旨ければ良いので、パナを作ったペンジクの技術が妖狐より劣っているとは一概には言えない。
しかし基礎研究の脆弱さが、今回の事態を招いたのは否めない。
「妖精とか自動人形でよければ、俺でも作れるのだが、人間はなあ…」
「待って!そんなにアタシの体が良いものなら、コンコンに任せれば良いんじゃない?」
「わてかて、カレー粉?まあせいぜいガラムマサラの使い方知ってるくらいのもんやで」
「じゃあ誰がオコ殿の見事な体を作ったって言うのだ!」
さっきから聞いてると、よってたかってうちの嫁を
「ええ体してまんなあ」
とエロい視線で舐め回している様で、なんかもぞもぞするぞ。
「オコはなあ…。天帝様のお許しを得て、初代妖狐様に処方を調合してもろたんや」
「そのメモは?」
「なもんあらへん。初代様の念の籠った木の葉を貰ろて、そこに浮かんで来る処方通りにやったんどすえ。オコが出来上がったら、木の葉は崩れてしもた」
「少しくらい覚えてないの?」
「ごめんなオコ。あては文系でなあ…」
と言う事は、100年の眠りについてる初代様を起こして相談するしかないのか。
「眠りについた初代様を起こす事なんかできへんで。けどな。寝てても会話は出来るで」
「どうやって?」
ならさっさと黄金丸・赤銅丸の姉妹を解放してやってくれよ。初代がすっかり忘れてるために、ハチ公よろしくずっと待ってんだぞ!
「レムリアでは無理じゃ。我ら先代以上の妖狐族に会いたければ、その隠棲所まで赴かねばな」
つまり冥界か。




