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8-27.パー子

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


※今回のミナミメグルの使命(ミッション)については箱庭世界と言う特殊な環境を舞台にしているので、当然底本がない。この話はある文献を基に再構成しているが、今その書名を明かすのは興醒(ネタバレ)になるので、敢えて控えたい。


8-27.パー子


「パーサ?どこにいるの?」

か細い声が聞こえる。

これがクローン分裂体同士の精神感応か。シバヤンがオートマタ借りて語りかけてくるのとは、通信の原理が異なる。純粋な思念レベルの感応らしいが、正直パー子がパナとなった時、パーサとパー子の繋がりは完全に断ち切られ、二人はせいぜい双子レベルの関係になったはずだ。

「まあ普段はお邪魔だもんで使わせんのだけどね。パナはいっつもアルディンさとイチャコラしとるでよ」

精神感応は、相手の感情が混じり混むので、パーサの言う

「やらしい」

感覚を共有してしまい、独身者(チョンガー)には刺激が強すぎるで。との事。


「今あんたの依代の実家(ぜやぁしょ)だがね。母さん姉さんもどえらけにゃあ悲しんでござるが」

「そう。この子は私が体に取り込んでしまってるからねえ」

「パー子、その子と念話できるんきゃ?」

「いえ、この子はレムリアではただの人形(フィギュア)だから、話した事は無いわ。でも何か悲しそうに震えているの」

おそらく母女王の高熱にうなされての呪詛の言葉に共振しているのだろう。パナの呪いの正体は鳥属性の伝染病などではなく、これだったのだ。


「パー子、アルディンさと話は出来る?」

「私自身は意識を失ってるから無理よ」

「なんとかシバヤンさに連絡取れんかなあ」

「私を念話中継点として通信網(ナンバーズネットワーク)に入れないかな?」

「そんな事したら、体力ダダ減りだで、死ぬかもわからんよ」

「大丈夫。覚醒ははできないけど、メグル様に貰ったポーションのおかげで、体力だけはレムリア大陸横断5往復出来るぐらいあるわ。でも精神保護肢(ヒューズ)が切れるといけないから、短くなら」


「じゃあ五娘に一言伝言するだけにするで。『帰還要請』と」

「判ったわ。治ったらまた話しましょう」

パナはもうナンバーズではないので、今は二人は記憶を共有していない。別れてからのあれやこれやの話がしたいのだろう。

「じゃあ、中継するからちゃっちゃとおやりなさい」

感応が切れたが、ちゃんとスタンバイしているのだそうだ。


パーサがいつもの様に呼びかける。

「五娘」

「なに?雑音多いよ」

「帰還要請」

「了解」

これだけだった。


今は終了したサービスだが、PHSと言う携帯電話システムがあった。ドコモ等の携帯電話より微弱な電波を用いるため、ビル内では余り電波が届かない欠点はあったが、ランニングコストが安いため、ポケベルを使っていた女子高生が雪崩を打って契約した。

当時普通の携帯を持っている女子高生は、パパ持ち(血縁のない方)が疑われる程、携帯とPHS(ピッチ)の維持費の差は歴然だった。


何が言いたいかと言うと、このPHSはビル内にまで電波が届きにくいため、事業者に苦情を言うと、中継アンテナを提供してくれたのである。

これを窓際に置き、室内に電波を中継するのだが、

この中継機の役割をパー子が果たした事になる。パーサとパー子間の極くプライベートな回線を通じて、ナンバーズのネットワークに割り込む。


結構負荷のかかる作業なので、パー子の体力をパーサは心配したのだ。

そして時間がないので、一言で分かってくれる相手として五娘に依頼した。

やがて、上昇するエレベーターの様なモーター音が唸りを上げ、俺たちは一瞬にして、シバヤンの箱庭小屋に引き戻された。


「非道いじゃないですか。突き落したりして」

「すまんすまん。少しでも君たちに先入感が混ざると、うまく入国出来なかったのだ」

俺たちが前もって知っていると俺たちは

「フィギュアが飾ってあるジオラマ」

に突き落とされるだけだったらしい。

「二回目は大丈夫なんですか?」

「メグル殿達は既に彼の世界で神々と認められたのであろう?それならば問題ない」


そこで事のあらましをシバヤンに語った。

「そうか、俺の植え付けたフィギュア達が、子を成すなどすっかり順応したのか」

シバヤンは感慨深げだった。

「それで、そのレティアと言うハーピーの依代(フィギュア)を、家族に帰して頂かないと、パナにかかった呪いが解けないのです」

「うーん。あのフィギュアは最初からジオラマ用に求めたものだから、元のジオラマに戻すのは吝かではないが」

パナに比較的外見が近い依代として、ハーピーのフィギュアをシバヤンが提供したとき、シバヤンの守備範囲の広さにちょっと俺は引いた覚えがあるが、より箱庭(ジオラマ)を完璧に見せる為夥しい人外生物達の一つのモブパーツとして、ハーピーが選ばれ、その後程度の良い出物があったので、レティアが追加されたらしい。


「戻し方の検討がつかぬ」

やっぱり。

「作って中に入れたのだから、取り出すのも出来るはず。シバヤンおじちゃんはやれば出来る子」

ステルが励ます様に言うが、中々難しいだろう事は想定できた。


「我が妻達や娘にも相談してみるが…。やった事がない上に、出来ない様に設計してある」

例えば何者かが簡単に、オコの中で依代になった

『妖狐の里特産、妖狐ちゃん人形』を取り出せば、オコと言う存在(アイデンティティ)が瓦解する。そう出来ない様にしっかり固着させるのだ。

「元々ペンジクの手法はラダを依代にした様に、瀕死の者か死後間もない屍を用いる。つまり再利用を考慮する必要のない依代だ。パナの施術では妖狐の手法を取り入れて生体ならぬ人形を用いているのだが」

再び抜き取るとなると簡単ではないらしい。


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