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8-26.絆

転生したら転生してないの俺だけだった

〜レムリア大陸放浪記〜


8-26.絆


「お母様の病状を、もう少し詳しくお話し頂けますか?」

「母はレティアを我が子の様に可愛がっておりました」

元々ハーピーは卵生なので、

『お腹を痛めて産んだ子』

と言う感情はないらしい。もちろん

『巣で卵を温める』

と言う事には哺乳類にはない強いキヅナがある様だが、それは鳥類の子が卵を出た時に最初に見た物を親と認識してしまう為に、卵を侍女に預ける事が出来ないと言う女王の苦労の末の誕生なので、愛情も湧く。と言う事らしい。


「レティアは贈り物の箱から出てすぐ、母と私を『かあさま、ねえさま』と呼びました。その意味でも、母と私にとってレティアは肉親以外の何者でもありません」

神の子の中には、各地を放浪してようやく家族の元に辿りつくまで数十年を要した者もいたとか。

こうなると、受け入れる家族も

「行方不明だった親戚の子」

位にしか感慨がないだろう。


「母は悲しみの余り倒れ、高熱を発して伏せっております。神々の皆様と言えど、お引き合わせる事は出来かねます。ハーピーの体質として、高熱を発すると」

いやいいです。そうまでお会いするつもりはない。と言うつもりだったが、先にゾフィーが言葉を続けた。

「全身の羽毛が抜け落ちてしまうのです」

「お大事になさって下さい。これは少しでも回復する為の薬です」

社長が見た事のないポーションを差し出す。

「これは?」


社長は化身を現した。

「私はワタリガラスの神、コリナンクリンと申します。我らの一族も季節の変わり目の羽根の生え変わりが上手く行かない時があります。このポーションは生え変わりを正常に改善(コントロール)します」

順番に生え変わるべきを、一挙に抜け落ちる事があり、やはり社長も人前に出られない姿になった事が一度あったそうだ。この場合人間の姿も毛が抜け落ちるのかは聞けなかった。

「ありがとうございます。早速母の元に届けます」

「しかしそれだと鳥類にとってままある、精神のバランスの崩れで起こる高熱という事でしょうか。私達が探している呪いとは少し違う。薬師はなぜそれを病ではないと言ったのでしょう?」


「それは母がうわ言で呪を吐くからだと」

「うわ言?」

「『レティアレティア。その女から離れ、疾く戻れ』と」

「ありがとうございます。ところで、ゾフィー様とレティア様のお誕生日はいつ頃でしたか?」

「丁度一年前になります。この度の武闘会も、喪が明けたゆえ、もう国民に自重を強いるのはやめよう。と言う私の意志でした」

やはりバクロンを出た頃と一致するか。まあレムリアと箱庭世界で、時間の流れが同じ。とは断言出来ないが。


「ゾフィア王女、我々は事態の解決の為、一旦この国を離れます。必ず戻りますので、何かレティア王女の愛用して居られた品を、お預け頂けないでしょうか?」

ゾフィア王女は一本の簪を渡してくれた。

「これは妹がいつも髪に挿していたもの。晴れ着のベールをつける為にだけ外していたのです」

その木彫りの簪は、ちょっと王族には似つかわしくない程質素で、とても高価そうには見えないものだった。

「こ、この簪は私と妹が城を抜け出して祭りの縁日に行った時に、わ、私のお小遣いで求めたものです」

ゾフィアは涙声で言った。


あとでノモに聞いたのだが、王女が買い物する機会は無いので決まった小遣いなどは無いはずだが、誕生日の贈り物には絢爛豪華な宝物に混じって、普通の銅貨が混じっている事があるらしい。これは名も無い庶民からのお祝いで、銅貨一枚であってもその者の1日分の食費だったりする。決して軽んじてはいけない。と母女王に渡された物だと言う。その様な賜物で妹の為に簪を買ってやった。妹は肌身離さずそれを身に付けていた。


「任せなさい。私が必ずレティアさんを取り返すわ!」

感激屋のオコが目を潤ませて請け負う。

一方師匠と俺は、これから待ち受ける困難について思いを馳せていた。

シバヤンはおそらく返還を承諾するだろう。

だがどうやってパナからレティアを分離させるか?

いや、そもそもそれはパナに死ねと言っている事になるのでは無いか?

針金を使って人形の骨格を作り、粘土で肉づけして塑像を作ったとする。

その針金だけを後から抜き取る事などもう出来ないだろう。


もちろんキャーリーと言う最高の精神外科医師がいる。

だとしても、パナの魂だけ分離して他の依代に移し換える事など可能なのだろうか?

高熱で衰弱したパナが、荒療治に耐えられるか?

考えるべき事は多々あった。


宮殿を出た後、ノモが深々と頭を下げた。

「比翼連理。と言う言葉がございます」

大東の伝説の鳥で、翼が一つしかない。飛ぶ為には二羽で体を密着して両翼で飛ぶしかない。転じて仲の良い夫婦の事を指す。レムリアでは知られている言葉だ。


「ハーピー族様がたには、夫婦と言う概念はございませんが、姉妹や親友同士で比翼連理の契りを結ぶ場合がございます」

同性婚。と言うのとは違う様だが、長いハーピーの人生の中で、支えあって生きて行く誓いを交わした同士の事を言うらしい。

ハピネス女王にも内大臣を務める幼馴染がいると言う。


「ゾフィア様とレティア様もそう言う仲でした。なのでゾフィア様は片翼をもがれた様に苦しんでおられます。それがわかるので、我々下々も武闘会の再開など願いませんでした。でも姫様が『もうよい』と仰られて。

ところが再開準備中に神々であらせられる皆様が顕現されて。これは大神様の御心としか思えませぬ」

ノモは終いには涙声だった。


「任せて下さい!」

またオコが安請け合いするが、とりあえず一体どうやってこの世界から戻る?

シバヤンの奴、黙って突落しやがったから、帰り道までは判らないぞ。

「どうしたもんか?」

「情けにゃあなあ。比翼連理ちゅうのは元々他人が協力して生きる。ちゅう事でしょう?そんなん、元々同じ人同志の方が強いに決まっとるがね」


パーサが空に向かって呼びかける。

「パー子パー子。返事してちょ」


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