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55-21.新帝の事情

転生したら転生してないの俺だけだった

~レムリア大陸放浪記~


55-21.新帝の事情


「五香から漏れ聞いておる。朕が不甲斐ないせいで、その方法は知らんのだ」

「私が承知しております」

五香が手をあげる。

「ほう…誰から聞いた?先日は知らないと聞いたが」

「はい昨日」

「誰から?」

「あの…」

「言えないのか?」

「申し訳ございません。神祇官様から」


「余計なことを」

「申し訳ございませんっ!」

五香が平伏する。

「お前の事ではない」

俺は事態を収拾しなければ。と思った。

「俺が、五香に教えて頂くよう、神祇官殿にお願いしたのです」

「人代殿が?しかしあの男は…」


「事情は全て太公望殿本人から、お聞きしております」

「まさかそんなことが…。この事が知れるとあの男は破滅するぞ!」

「私は誰にも漏らしません。ビッグセブンの口は固とうございます」

「カタクチイワシでございます」

ステル、ここではその返しは…。

「ははは、面白いな。片口鰯か」

新帝は朗らかに笑った。


「確かに国家秘密を漏らしていては、人代の信頼は得られないな。信用しよう。だがなぜあの男に依頼した?元宰相(班田)とあの男は、随分親しかった。と聞くぞ」

どこからそんな情報を。


「太政官と神祇官は国家の両輪。あまり仲違いはできますまい。ですが、太公望殿は班田派ではございません」

「そうであるか。あの男は朕が都に来てから、公式の場以外では、全く話してくれなくなった」

11歳だもんな。寂しかったのだろう。


公称8人いた老帝の王子たちが、流行り病で櫛の歯の欠ける様に次々姿を消し、長兄だけが老帝の後継の皇太子になった時、第二継承権が回ってきた超春に立太子という

「万が一の時に皇太子になるための儀式」

が回ってきたのだ。


そしてこの長兄も北方異民族長征の途中、落馬して命を落とす。

「東宮(皇太子)様は乗馬の達人であられたのに…」

「朝廷は祟られているのではないか?」

などと噂されていくうちに、多くの王子を失った老帝は気落ちして、がっくり老け込み、ついには病床についた。


ちょうど人代(おれ)が科学者たちの陰謀を暴き、連座して宰相班田が力を失った頃で、役人たちは祟りの事もあり、神祇官を呼び意見を聞いた。

「天帝様のご意志は新東宮殿下にあり」という占いの託宣があり、後ろ盾がないため超春の立太子に反対だった家臣たちも、正式な皇太子と認めざるを得なかった様だ。


「では陛下と神祇官殿とは?」

「俺は大層な田舎で母子で育った。何やら『年金』とやらが母には降りていて、召使いの一人も居ないが、母子が生きるには困らなかった」

つまり後宮の下女かなにかになり、老帝のお手がついて、他の王子の競争相手にならぬ様に、僻地でひっそり暮らしていたのだな。


「あの男は年に何回か家に来て、母は嬉しそうにしていた。まるで親子の様にしていて、俺は何度か『僕のおじいさまですか?』と尋ねたが否定された」

「それから?…でございます」

ステルがぎこちなく催促する。


「ここからはあまり楽しい話ではない。8歳になった時、突然都から使いが来て、朕だけ母から引き離されたのだ」

「ひどい!」

自らも母の白虎と離れて暮らしているステルが叫ぶ。

「ありがとう。都につくと、街中に黒い布が張り巡らされ、それがなくなってしばらくすると、また黒い布が。という事が数回あった」

つまり王子たちが次々と流行り病でなくなり、街が喪に服していたわけだ。


「俺はある空き家になった屋敷を充てがわれ、なんでこうなったかわからず、母が恋しくて毎日泣いていた」

そうだろう。小学2年だもんな。

「なかないで」

ステルが泣きそうにいう。

オコも相当感情移入しているのが分かる。


「そうこうしているうちにあの男が屋敷に来た。朕は知っている人に会えて嬉しくて飛びついたが、思い切り跳ね除けられた」

「ひどいね。タイコーボーじいさん。こうかんど、だださがりだわ」

「ホントだよな。あの男は『王子様にはしっかり勉強されて、お国のために尽くしていただきます』とだけ言って、母の事も教えてくれなかった」


「つまり王子が流行病で次々身罷れるので、田舎育ちの元気な後継(スペア)を、老帝は引き寄せられたのですね?」

俺が言うと

「そんなところです。そして朕の所には、家庭教師が続々と送り込まれた」

「帝王学ってやつですね」


「そうそう。まあ朕も勉強は嫌いでなかったので、頑張って母のいない寂しさを紛らわせていたのだが、この国の歴史を学べば学ぶほど、皇帝が後を継ぐ時には、後ろ盾になる外祖父たちのドロドロした陰謀が渦巻いている事に気づいた」

やはり聡明な方だ。10歳になる前に、そういう政治のカラクリを理解してしまうとは。


「その後は、想像がつきます」

「さすが人代殿だな。『母を田舎に隠し、俺たち母子を養い、そして期を見て先帝陛下の最後の落とし種である朕を都に引き取り、後ろ盾として権力を得よう。としたのは神祇官太公望ではないか?』と朕は気づいた」


「それがわかり易いですね。でも、なぜお母様も共に引き取らなかったのかしら?」

オコがもっともな事を聞く。

「後宮に朕の母まで招くと、目論見が全部バレるからでしょうな」

「目論見?」

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