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壊れた涙 2

この国では自営業、及び雇い主と従業員の関係は存在しない。

コンピューターが定めた法通りであれば、大きく分けて八つの【サービスグループ】という団体に所属し、給料をもらうこととなる。

エルは【科学進歩開発サービスグループ】に所属している。

主な仕事は武器やBOTの開発、制作。

コンクリートに囲まれて鉄と油、薬品臭い仕事場に着くとステファは快く歓迎し手を握り締めた。

彼女も同様のサービスグループに所属していて、機械にめっぽう強い女性だ。今は作業服とゴーグルで顔も見えないが綺麗な人である。

「エル、大体はワタシが作っておいたから、この場所に設置して来て」

ステファはよく分からない四角い機械をバンと叩くと街の地図を手渡した。地図には赤い×印が数箇所点在していた。

理由は分からないが、設置場所はどこも発電施設に近い。

「印のとこに設置すればいいんですか? この……なんですかこれ?」

エルはステファ同様に四角い機械を叩いた。

機械にはボタンはなく、音声聞き取りのマイクと何か物を出すであろう口がある、

自動販売機だろうか? いや、違う。

それなら最近新しいのを設置したばかりだ。自動歩行機能と押し売り機能が付いた随分迷惑な物だったが。エルは何の機械かを考えるも、分からずに首を傾げる。

「これねぇ、自由商会(フリー・エンタープライズ)のオッチャンが金は払うからって依頼していたのよ。組み立ててみた感じレーザーガンのエネルギーを溜める機能と武器販売機ね」

まぁなんでそんなものを唐突に設置しようと思ったのやら……金持ちの道楽か、なにか危ない準備か。おそらく後者だろう。エルはそう推測した。

「ふーん……随分と怪しいですね。あまり関わりたくないです」

エルが溜息混じりに本音を吐き捨てると、釣られるようにステファも溜息をついて、呆れた。

「あんた……ワタシが無害だからって気緩みすぎ。そんな発言をコンピューター信仰教会に聞かれたら殺されるわよ」

「ここにはそんな奴らいないので平気です」

「はぁ……。さっさと設置してきなさい。私は衛兵BOTの改装をしないと……」

「りょーかいです」

……長くなりそうだ。心の中でエルは溜息をつきながら、アームを動かしその怪しい機械を数台、トラックに詰め込んだ。

×印のところを全て行くというのは、この国【shelter‐β】を一巡するのとほぼ同義で、非常に面倒臭い。

街は自動走行の車が前後左右から行き来しており非常に混雑している。

……そんなわけでただの運搬設置にも時間が掛かり終わったときには、廃ビルで眺めていた夕日は完全に沈み切っていた。それどころか空はわずかに明るい。時計を見ると午前三時を過ぎていた。

「はぁ……。ティアに早く会いたい」

そんなことを呟きながら、エルは車で睡眠を取った。

起きたのは早朝だった。二時間程度しか寝ていない。偽りの太陽は橙となり、空を染めている。

すぐにティアのところへ向かわないと。エルは、仕事用のトラックでティアの家まで走った。

……ティアの家は白い金属で出来た箱のような見た目をしている。入り口は小さい。

エルはインターホンを押し、俺だ。と言った。

返事は無い。出掛けているのだろうか? そう考えた矢先、向こうから返事が帰ってきた。

「……ここの住人に用件があるのですか?」

返事はティアのものではない。別の誰かの声であった。

「……誰だ…………誰ですか?」

そう質問すると、きぃとゆっくり扉が開きティアでは無い誰かが姿を現した。男は青い制服を着ている。

【中央管理サービスグループ】……犯罪者摘発を仕事としている人間……ようは警察であった。

地位が高い人間でないとなれない職業だ。

「ワタシはアデル-Bだ。コンピューター信仰教会でもある」

コンピューター信仰教会……その名前を聞いただけで、背筋が凍り付くようだった

彼らはコンピューターの忠実な親友で、この国の憲法を、法律をそれこそ聖書のように崇めているような連中が大半のカルト団体だ。しかしコンピューターにとっては都合のよい組織なため、丁重な扱いを受けている。良い職業に就くことができたりするらしい。

エルは笑顔を取り繕い、自らを卑下して聞いた。

「恐れ多くもお尋ねします。ここにティアという少女が住んでいたはずなのですが、こちらにはいませんでしたか?」

震えが止まらなかった。どうにも恐ろしくて堪らなかった。まるで拳銃を突き付けられたような感覚がして、考えたくも無い最悪の展開が脳を()ぎる。不吉な塊が胸を抑えるようだった。

「ティア-Rのことですか?彼女ならさきほど――――」

刹那の間を置いて、アデルと名乗った男が応える。


「処分しました」

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