崩壊の鍵 4
閃光に紛れ階段まで駆け上がったところで、ブライアンはおそらく隣にいるであろう少女に声を掛けた。
「エレオノーラ。いるか?」
「……いる。隣。手を…………伸ばして」
ブライアンは手を伸ばした。するとその大きな手は見えない力に引っ張られる。
「敵の位置は分かるか?」
「ユリアーナは……発電制御室に」
「どのみち避けられない争いだったか。すぐに終わらせるぞ。今度こそアーロンのようにはさせない」
二階の廊下を駆けていくと、どこかから再び声が聞こえた。
「あらあら? そこのゴツイ男、さっきからぶつぶつと何を一人で呟いてるのかしら? 死んだお友達の亡霊とお話し中? キャハハ! おいら、君のこと死んでるのにトドメを刺しちゃった。オーバーキルしちゃってゴッメーン。みたいな? キャハハハハ!!」
ユリアーナは悪魔のように笑い口笛と拍手を送った。
彼女はエレオノーラの存在に気付いていない。
騒ぎ煽り立てようとする彼女に反して、ブライアンは冷静を保ち三階への階段を目指した。
「あらあら、そこ通行止めよ」
突如として階段を分断するように瓦礫が出現した。ブライアンは咄嗟に手を離し、エレオノーラがいるであろう場所を強く押し飛ばした。
続けて廊下にも瓦礫が現れ道を塞いでいく。
やがて瓦礫は行ける道全てを塞いだ。
「お仲間が分断されちゃったわねぇ。二階に残っちゃった男2人はそこで待機してなさい。あの女が一人でやってくれることを祈るのね。お土産が彼女自身の生首になるかもしれないけどねぇ。キャハハ!!」
ユリアーナはもう一人いることに気付いていなかった。
「……いそいでこの瓦礫を退かさなかねぇと。エレオノーラが――――」
「僕も手伝おう。能力が使えなくても、この身体がある……」
ガラガラとコンクリート片を取り除き、脇に置いて行く。
焦る気持ちが行動を雑にしていくが、ルドルフがそれを止める。
「……慎重に、じゃないと崩れてハンバーグになっちゃうからさ」
「焼かれはしないだろ」
戯けたことを言うも、不安は取り払えない。
エレオノーラは無事だろうか。リディアとエルはまだ生きているだろうか――――考えると終わりがない。
「……そういえば、【ランプロス】の方は無事なのか?」
「無事ではないさ。第三発電施設でまた一人死んで、敵ミュータントも一人死んだ。敵は、敵にとっての仲間を逃がすために文字通り決死の攻撃を仕掛けてきたようだ」
「どういうことだ?」
「あいつらは、ミュータント能力を強化する薬を持っている。……けど服用すれば助からないようだ。その男はコンピューターの命令より仲間を取ったらしい」
「その薬は…………っ他の奴らも持ってるのか?」
「そう考えたほうがいい。それよりもブライアン。平気なのか? さっきから息が荒いよ。ブライアン?」
ルドルフは彼の身体を強く揺すった。息はあるが起きない。
身体に何か異常があったのか? こいつはどうでもいいが、こいつが死ぬとあのミュータントの少女が悲しむだろう。ルドルフは異常の原因を探しすぐに突き止めた。
さきほど斬られた場所が……右手が変色して、強い熱を帯びている。
ルドルフは天井に向かって、声を張り上げた。
「エレオノーラ! 聞こえるなら頼みたいことがある!! 返答はしなくてもいい! 君のその力で、ユリアーナを倒すんだ!! その後、彼女の身体から薬を探してくれ。それを瓦礫の隙間に投げ込むんだ。ブライアンの命が危ない! 君がミュータント能力を使えば、だれもその刃から逃れることはできない!!」
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