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第九十八話「Think!」

こんばんは、作者です。


さて、スパイの真似事をしているマック達。


無事任務を果たせるのか?

研究室は、机やよくわからない装置が並んでいた。

個人のデスクだとわかるのもあった。


壁には一面窓があり、そこからファクトリーに行けるようだ。


ファクトリーにはベルトコンベアのような機械が見えた。

別の壁際には実験室と思われる部屋が連なっていた。

分厚い鉄製のドアの向こうに、小動物の入った檻が見える。


研究室の奥手には部屋が確認出来た。

木で出来た豪華な扉がある。

お偉いさんの部屋だろう。

俺の部屋もそうだが、どこも同じだ、何故かその場にそぐわないしつらえにしたがる。

近づいてみると、ドアに【チーフ】と書いたプレートが貼られていた。

ここだな、間違い無い。


「ここが目的の人物の部屋だ。こっちだ」


俺はみんなを中にいざなった。

中に入ってドアを締め、魔法を解除した。

疲れて来たからだ。

みんなの姿が水が捌けるように浮き出て来た。


「おー、見える!」


トッドがよくわからない事に感心していた。


部屋は木で出来た調度品で揃えてあった。

何かのファイルが入ったキャビネットや、難しい題名の本が並ぶ棚が見える。

研究室とは風合いが違うな。

さて、何かないかな。


みんなで手分けをして、漁る事にした。


「トッド、アンジー!物を出したら、ちゃんと元通りに片付けとけよ!足がつくような事はするな」


一番危険な二人に注意しつつ、俺も机を漁った。


机の上の、ファイルやメモ書きをパラパラと見る。

特に変わった物は無い。

新薬の予定表や、工程の進行表、風邪薬の出荷日などが書かれていた。

メモ書きはお昼の予定などが書かれていた。

【キャントレイ、12時、】とか何とか、その後には俺達の昼飯とは桁が違う金額のコースが書き込まれている。

くそ、いい暮らししやがって。


机には他には薄くて黒い箱、読書灯、筆記用具入れ、読みかけの本などが無造作に置かれていた。

パラパラと本をめくる、処世術に関しての啓発本みたいだ。

何々?【第二章・腹芸を磨くべし。本音は隠して、人を動かす方法】か、、ふむふむ、こうやるのか。

もっと早くにこの本と出会いたかったよ。

左遷されずにすんだかもな、、、。

あ、いかん、興味はあるが、読みふけっている場合じゃないぞ。

とりあえず戻すか。

後は写真立てがあった。

本人だろうか?奥さんと、年頃の娘と三人で撮られた写真だった。

幸せな家庭に見える。

こんな家族がいるのに、どうして悪事に手を染めるかねえ?

幸せな家庭か、俺には縁の無いものかな、、、。

何故かアンジーを見てしまった。

頭に妙な妄想が浮かんだ。

可愛い赤ちゃんが寝ているベビーカーを押した優しい笑顔のアンジー、もう戦士では無い、カジュアルなワンピース姿だ。

隣には俺、夕食の買い物袋を手に持っている。

袋からはフランスパンがのぞいていた。

家族三人が、我が家へと向かうバレンシアの午後。

今日はシチューだ、、、なんてな。


アンジーがこちらを見た。

目が合う。

う、うわ。

彼女の目がやや大きくなり、どうした?と問いかけていた。

俺はかぶりを被った。

アンジーは、ふーん、といった表情で頷き、仕事に戻ろうとした、、が。


「またイチャイチャしやがって、ラブアイコンタクトとかは仕事以外でやってくれよなー!」


トッドに見られていたようだ。


アンジーは耳を真っ赤にしながら、聞こえないフリをしていた。


俺もシカトした。


作業に戻る、机の上はめぼしい物は無かった。


アーク達は手分けして本棚を調べているようだ。


引き出しを見るか。

一番上に大きな引き出し。

そして、右側にサイドの引き出しが並んでいた。


上を開けた。

筆記用具のスペアやノート、爪きりなどが入っていた。

順に開けて、、サイドの一番上の引き出しだけが、鍵が掛かっている。

それ以外を開けてみた。

官能小説とウイスキーの小瓶以外はめぼしい物は無かった。

官能小説、男なら誰しもベッドの下に隠した事がある。

まあ、これは読まないでおこう。

酒か、、、。

仕事中に酒をあおりたくなるほど嫌な事でもあったんだろうか?


残るは一番上の引き出しだな。

俺はいつも携帯している、軍用のポーチから、秘密兵器を取り出した。

といっても大したもんじゃない。

空き巣セットだ(苦笑)

軍に入ると、汚い仕事もしなきゃいけねーのさ。


ピンをねじ曲げたような物で鍵穴をゴソゴソと弄った。

やがで、カチリと音がして、何かの外れる感覚があった。

ではご開帳だな。

引き出しを開けた。


おやおや。


銃が入っていた。

研究室にはそぐわない、えらい物騒な物が入っているな。

やはりただの研究室長じゃ無いようだな。

他には皮の財布と名刺入れのような物があった。

二つ折になっているものを開く。

カードが入っていた。

社員証が見える。


ん?財布に銃?

何かが引っかかった。


社員証の他にはよくわからない黒いカードがあった。

これはいったい?


他には収穫無しだ。

マズいな。


「アンジー、何かあったか?」


アーク達も首を振っていた。


困ったな。

ここまで来て、手詰まりとはな。


「やはりな、拙くて見てられないな」


!?


ドアの向こうから声がした。


全員が身構えた。

アークやアンジーが剣を抜いた。


ガチャリとドアが開いた。


「こらこら、刃物を向けるんじゃない!」


男?いや女?

綺麗な顔立ちの人物が笑みを浮かべながら入って来た。


「あ、、忘れてた」


男はドアを閉めつつ、今更にコンコンとノックをしている。

何だコイツ?


やがて、男は振り返り、両手を、どうだと言わんばかりに広げた。


「誰だ?」


俺は警戒心を募らせながら声をかけた。

見たところ武器は持っていないようだ。

神官のような服装だ。


「モトユキだ。敵じゃないぞ。まあ聞け。モズのバカが役目を果たさずに、銃で遊んでいるから、俺が代わりにお前たちを見守ってやっていたんだが、このままだと、重要な証拠を見逃しそうだからな、出てきてやったんだ」


モトユキ?

誰だ?

モズの知り合いか?

見守ってたって、どこから?


「それが本当だとして、そんな荒唐無稽な話を信じろと言うのか?」


「当然だ!」


「と、当然だ?当然の使い方がおかしく無いか?」


「細かい事は気にするな。アンジー。親父さんがよろしく言っていたぞ」


モトユキとか言う奴は、どこからか取り出した紙袋をアンジーに投げた。


「え!?」


「開けてみろ」


「あ、、、こ、これは私の大好物!あ、、これは?」


大好物?

紙袋からは茶色で艶々した表面を持つ、お菓子みたいな物が見える。

アンジーは同時に袋から手紙も取り出した。

手紙を開いて読んでいる。

お菓子は次々とアンジーの口へ運ばれていた。


「モグモグ、父からか、確かに父の筆跡と魔力だ。モグモグ、あー美味しい。モグモグ、何!?、、モグモグ、、そ、そうか、そんな事が、、モグモグ、、フムフム、なるほどな、モグモグ、、、」


アンジー、食べるか読むか、どちらかにしてくれないか?


トッドは呆然と固まっていた。

アーク、、彼は特に驚いていないようだが、どうしてだろう?

やがて手紙を読み終えたアンジーが顔を上げた。


「そうか。分かった。貴殿はモズの家族なのだな?そして、父を助けてくれたそうで、礼を言う。ありがとうございました。カヌレもありがとうございます」


アンジーは深々と頭を下げた。

家族?

あいつ、兄貴以外に家族がいるのか?

だとして、誰だ?

助けた?あのレグルスを?

カヌレって何だ?

そしてアンジーが敬語になったぞ?

話がまったく見えないぞ!


「まあ、そんな所だ」


「そうか。よろしくお願いします」


「ち、ちょっと待て!話が分からない、アンジー、こいつを信用するのか?」


「そうだ。父の手紙もカヌレも本物だ」


だからカヌレって何だよ!?


「マック、落ち着け。アークも俺を信用してくれたみたいだぞ?」


モトユキが口を開いた。

俺はアークに問いかけるような視線を向けた。

アークは剣を握っている。


「大丈夫だと思う」


「根拠は?」


「剣がそう教えてくれているから」


あ、ああ、剣と対話が出来るとか言っていたな。


「で、剣は何と?」


「味方だと。剣もこの人を知っているみたいだよ」


モトユキの目がキラリと光った。

彼が、聞こえないくらい小さな声でボソリと呟いた。


「後でお話がございます」


「え?」


全員が聞き返した。


「何でも無い。独り言だ」


モトユキは無表情に戻った。

アークの剣は何故かビクビクしているように見えた。アークは、やや驚きながら剣を見つめていた。


???


ま、まあいいか。

こいつが誰にせよ、アークとアンジーが信用してしまったからな、危ない橋かもしれんが、渡るしか無いな。


「ん?、、、ヒポ?どした?、、、うんうん、、、えー!?そ、そうなの?何で知ってんの?、、、えー!何で秘密なんだよー!、、、、あー、そか、、、う、うん、分かったよ、、、うん、、、え?、、えへ、お、おう!ありがとう!頑張るぜ!」


トッド?

見ると、トッドが宙を睨みつつブツブツ言っていた。

ヒポと念話をしているようだ。

やがて、トッドはモトユキのほうを向いた。


「ヒポがあなたを知ってるって言うんだ。詳しい事は教えてくれなかったけど、モトユキは先生の幼なじみなんですね!よろしくお願いします!」


トッドはハキハキと言い、頭を下げた。


何だ、俺抜きで納得しやがって。

モトユキが真っ直ぐ目線を向けて来た。


「気に入らないか?」


「そういう訳じゃないが」


「マック、お前とは気が合うと思うんだがな」


「何でそう思う?」


「お前、列車の中で弁当の攻略に失敗しただろう?」


な!?

何でそれを知ってる?

確かに、あの弁当の完食の仕方は何か納得のいかないものが残った。


「失敗だったとは思ってないぞ」


「まあな。しかし、玉子焼きが攻略の要だと知っていながら、後手に回りすぎたのさ。玉子焼きはな、ポテトサラダの前に食べておけば良かったのさ!ポテトサラダを先に食べたのがお前の失策だ!魚と玉子焼き、豆の甘煮だけでご飯を攻略するなど、素人の諸行だ!」


モトユキは俺に人差し指を向けて、ビシッと言い切った。


俺は膝から崩れ落ちた。

そうか、、、そうだったのか、、釈然としない後味の悪さはそれが原因か。

なるほど、玉子焼きは、いわば中盤のメインディッシュにしなくてはいけなかったのか。

負けた、、、。

こいつ、天才か?

まさに神の采配。

モトユキの後ろに後光が差して見えた。


「あはははは」


いきなりアンジーが笑い出した。


モトユキが驚いた顔になった。

俺を含めた仲間達もびっくりしている。


「ど、どうした?」


「い、いや、すまん。話の内容はまったく分からないし、物凄くどうでもいい話だというのは分かるが、、お前たちのやり取りを見ていると、まるでモズがいるようでな」


「な!あんなヤツと一緒にするな!それにモズや、師匠のレイナがいないからと言って、アンジー!メイクの手を抜くんじゃない!」


モトユキが顔を真っ赤にして怒っていた。

確かに今日のアンジーはスッピンだった。


「な!?ど、どうしてそれを?」


今度はアンジーが膝から崩れ落ちた。

今になって、スッピンが恥ずかしくなったのか、顔を手で覆っていた。

モトユキは勝ち誇った笑みを浮かべながらそびえ立っていた。

モズの家族か。

確かにどこかモズと似た雰囲気を漂わせている男だな。

行動がこちらの想像を遥かに超えて行くところもモズみたいだな。


「ははは。確かにあんたとは気が合いそうだ」


「ふん。当然だ!」


相変わらず、当然の使い方はおかしいが、とりあえず信用して良さそうだ。


「ところで、俺達が見逃しそうな証拠って?」


アークが口を開いた。


「お?、、あ、そうだ。そうだった。その為に俺が出張って来たんだったな。アーク、お前はやはりリーダーの素質があるな。今日三回目の軌道修正か?」


モトユキが我に返って、アークに返事をした。

アークは褒められて嬉しそうにしていた。


モトユキはツカツカと机の所まで歩いて来た。


「これだ!」


モトユキは机の上の黒い箱を指差した。

鏡面のように黒光りする表面を持った物体だ。

大きさはノートくらいだ。


「これか?気にはなっていたが、何に使う物かさっぱり分からなくてな」


そう、さっきから机に置いてあった。

何かを入れるにしては薄すぎる。

また、開くところも無い。

下敷きの一種かと思っていたんだが。


「マック。お前の弱点はそこだ、勇者チームの弱点でもある」


「え?」


「アークにはリーダーシップ。トッドには機動力。アンジーには戦闘力。レイナには治癒力、まあ最近はメキメキ戦闘力も上げているがな。そして、マック、、お前には年長者としての豊富な経験と情報力が期待されている。お前はそれなりに優秀にこなしているが、バレンシア以外、つまりこの世界の大部分においての情報力に欠けているのさ」


確かに、モトユキの言うとおりだ。

俺はグールの一件やカジノや、今夜の行動など、経験がモノを言う時は活躍出来るが、俺の知らない世界固有の物に対しては、あまりにも無知過ぎる。

クルーガー、育ての親と言っても過言では無い男の顔が浮かんだ。

今夜は二回目か?

ジジイ、あんたが俺に積ませたい経験はこれか?


「確かにあんたの言うとおりだ。面目無い」


「お前もまた成長中と言うことだ。精進しろ」


「あ、ああ。ありがとう」


モトユキはそう言いつつ、黒い箱の表面、一番下にある赤い突起物を指でグリッといじった。

箱の上面が光った。

文字や図形が映し出された。


「な!?何だこれは?」


「これはロストテクノロジーを応用して作られた物だ。今まで見たこと無いのも不思議はない。高価な品物でな、まだあまり普及していないのさ。一種の情報記憶装置だ。図書館丸ごと分くらいは訳なく記憶出来る。シンクと呼ばれている装置だ」


「こ、こんなノートみたいな大きさなのにか?」


「そうだ。さて、さっきの財布を出せ」


俺は言われるままに、財布を渡した。

モトユキは黒いカードを取り出して、箱の側面に差し込んだ。

彼は箱の上面に指を当て、なぞったり、トンと叩いたり、両手の指を使ってトトトトトと連続で叩いたりしていた。

何をしているのか?

画面は目まぐるしく動いていた。


「出たぞ!」


モトユキが箱を立てた。


みんなが集まって来る。

これは?

何かの計算式みたいな物と、図形、そして魔法陣を描く時の術式が表示されていた。


「これは?」


「ハリウッドジャムの配合表と最終工程に施される魔法の術式だ」


「な!?」


「それだけでは無いぞ!作業の日程や、出荷日、出荷先まで全て記載されている」


モトユキはシンクの表面を指でなぞった。

画面が、まるでノートをめくるように変わった。


出てきたのはカレンダーみたいな画面だ。

特定の日付の欄が色が変わっていた。

また、その前日の欄には入荷日と記載されている。

港湾での事件があった翌日にも入荷日と記載されていた。

モトユキが事件の日の欄を指で押した。

画面が変わった。

人や港湾、ベネーリアから来た船籍の名前。

到着時刻やコンテナの番号まで記載された画面が出た。

人の名前は見覚えがあった。

犯人達の名前だ。

完璧な証拠だ!


「す、凄いな。しかし、こんな情報が入った物を机の上に無造作に置いておいていいのか?」


アンジーが言う。

確かに、俺がいた軍では、機密情報は巨大な金庫に厳重に保管されている。


「まあな。だが、これは当人しか見る事が出来ないような仕掛けが施されているのさ。本来は当人以外絶対に見れないのさ」


「そうなのか?モトユキ、あんたはいとも簡単にやってのけたじゃないか?」


「ふん。こんな時代遅れのセキュリティーソフト、ぶち破るのは訳ないさ。そもそも、もう少しマシなファイヤウォールを張るべきだ!」


言っている事はさっぱり分からなかったが、モトユキにとっては造作も無い事なんだろう。


「凄いな!」


「ふん!当然だ!」


今回の当然は、間違っていないような気がした。

読んで頂きまして、ありがとうございました。


とんでもない助っ人がしゃしゃり出て来ました。


まあ、あのままだと収穫無しになってしまいますんで、作者が差し向けた助っ人なんですが、やはりモトユキは派手に脱線して、アークに軌道修正されてしまいました。

アーク、ありがとう。


ちなみに、あの装置の名前は、昔あった、とあるPCへのオマージュです。

作者の愛機でした。

題名にも、マックへの激励と、そのPCへのオマージュが込められています。


そろそろ今日の後書きを終わっていいですか?

ダメですか?

アークの剣ですよね?

今はご想像にお任せします。

まあ、バレバレですかね(笑)

ではー。

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